「シビアな話?」
『リストちゃんのこと、何か分かった?』
「別に、これと言って何も。聞き出そうとも思ってないし」
『あのね…』
カオルが、落胆したようにため息をつく。
「あっ、歳は分かったよ。五歳年下だって言ってたから、十五歳」
『話の感じからして年下だとは思ってたけど、中学生か。歳は、リストちゃんの方から教えてくれたの?』
「教えてくれたっていうか、知られてしまったっていうか、リストが口を滑らせて、五歳年下だって言っちゃったのよ。それで、私か歳を教えちゃっていいの? て聞いたら、歳ぐらいならって」
『微妙ね』
「でしょ」
『こうして、円佳を通して情報を得るだけじゃ、もどかしいな。今度、リストちゃんに会いに行っちゃ駄目?』
「それは、駄目だよ。リストが怖がる」
『朱理の時だって、円佳が怖がるから駄目って朱理から人を遠ざけて、何も進展しなかったじゃない。朱理の時みたいに、私が強引に会いに行ったら、事態は良い方向に進んでいくかもよ』
「いくかもって」
『いくはず』
かもの部分を、はずと力強く言い換える。
「いや、そういう意味じゃなくて、リストを朱理と同じように考えるのは危険だよ。
朱理と私達は同い年だったし、同じ学校の生徒だっていう接点があったじゃない。でも、リストは年下だし、何も情報がない。リストが怖がって歩道橋に来なくなったら、連絡手段がなくなっちゃう」
『確かに、そうよね。朱理の場合は学校に来なくなっても、学校に事情を説明すれば住所か電話番号ぐらい教えてもらえたもんね』
「リストの場合は、それが出来ないから怖いの。たとえ、リストが歩道橋を通過しても、リストの方から声をかけてくれないと、私はリストの存在に気がつかない。リストが近くにいても、声をかけられないんだから」
『直接会って話をしているのに、私達はリストちゃんの顔を知らない。不思議な関係だね』
「私の目が見えないから、心を許して私とだけ話してくれてる。それは、私が私生活やプライベートに踏み込まない安全な相手だから。この関係を壊すのは危険だよ」
『初めの内は、円佳の言うように安全だから話をしてくれたんだと思うけど、今は違うよ。目が見えない相手だからじゃなくて、目が見えない円佳という人間の人柄に、リストちゃんは心を開いてる』
「そうかな?」
『きっと、円佳じゃない目の見えない人が話しかけても、そこまで心を開けないんじゃないかな。目が見える私なんて、恐怖の対象でしかないでしょうね』
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