その劣等生、実は最強賢者

未来人A
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第3話 魔法練習①

公開日時: 2020年10月26日(月) 13:01
文字数:2,005

 男子寮の庭に出た。


 まだ外は少し薄暗く、まだ太陽が完全に昇り切っていない。


 周囲を確認するが、誰もいない。人気もない。

 こんな時間から活動する者はいないだろう。



 さて、この体で魔法を使えるようになるための練習を行う。



 魔法は、一つを習得したら次を習得できるという流れになる。



 最初に習得しなければならない魔法。



 それは、"マナの視認"、である。



 魔法を使うため必須の力にとなるマナ。

 これは生物なら誰も保持している、生命エネルギーのような物である。


 マナは、常時体から放出され、一定の量、全身を纏っている。


 体に纏われているマナは、通常は見ることは出来ないが、練習すれば見ることが出来るようになる。


 これがマナの視認である。


 これが出来なければ、絶対に魔法を使うことは出来ない。



 自分の両手を見つめながら、両目に意識を集中させる。



 前の体ではこの方法で、マナを見ることが出来たが、やはり体が変わった影響か、見ることが出来ない。



 三十秒くらいちょっとずつ感覚を変えて試していたら、


「見えた」


 半透明で灰色の、淡い光を放つ流動的な物質が、手に纏わりついているのが見えた。厚さは二センチメートルほど。これがマナである。


 俺のマナは灰色だが、人によって色が違う。

 色が違うのには、意味があるのだがここでの説明は省く。


 一度、マナの視認をしたら、目に意識を集させなくても見続けることが可能だ。


 元に戻したければ、逆に見ないように意識をすればいいが、マナを見なくすることにあまり意味はないので、俺は常にマナが見ることのできる状態を維持することにしている。


 それから、手以外にも、腹、足と見たが、ちゃんとマナが纏われていた。



 マナの視認は簡単に習得した。



 次に習得するのは、"マナの解放"である。



 マナの解放を行うため、全身に軽く力をこめ、体の奥底の方に意識を集中させる。


 何も起きない。

 前の体ではこれで、マナの解放が出来た。


 それから何度かやり方を試し、一分経過。


 体に纏っていたマナが、一気に厚みを増した。


 二センチ程度だったのが、一メートルほどの厚さに変わる。



 マナの解放に成功した。



 通常状態から体に纏うマナの量を増やすことを、マナの解放と言う。


 この状態だと、攻撃力防御力速度などの身体的な能力が一気に上昇する。


 試しに軽くその場でジャンプしてみる。


 すると、体は高々と上がり、約五メートルくらいまで上がったところで落ちた。


 通常の人間ではあり得ないジャンプ力だ。


 マナを解放した状態だと、これだけの身体能力になるのである。


 素手で岩を砕けるようになり、剣で斬られても素手で受け止めることが出来るようになり、さらに、馬よりも早く走ることが出来るようになる。


 通常の人間を大きく上回る身体能力を手に出来るが、注意も必要である。


 マナは通常の状態では、放出量より回復量の方が多いため、減ることはないが、マナの解放をしている状態では、放出量の方が上回ってしまう。


 使いすぎるとマナ切れを起こしてしまうので、定期的に解放をやめてマナの回復をしなければならない。


 一度マナが切れてしまうと、数時間行動不可能な状態に陥ってしまう。



 ここまでは割と簡単に習得可能である。

 まだ魔法を使っているという感じではない。

 身体能力上昇法を使えるようになっただけである。



 次に習得するのは、"マナの操作"である。



 マナの操作は文字通り、解放したマナを自由自在に操作することだ。


 操作は、魔法を使う上でかなり重要だ。


 魔法を使った戦闘が強い者は、必ずと言っていいほどこのマナの操作がうまい。


 習得難易度はそんなに高くなく、朝の間に使えるようになれると思う。


 まずいつもの感覚でマナを動かそうとする。


 マナを体の一部だと感じ……。

 そして動かす……。


 動かない。


 前世ではこれで自由自在に動かせていた。



 ちょっとずつ感覚を変えて、マナを操作しようとしてみる。



 十分ほど悪戦苦闘し、ついに動くようになった。



 最初はちょっと動く程度だったが、もっとスムーズに動かせるように練習を重ね、さらに十分程度経過したころには、手足のごとく動かせるようになった。



 うねうねとマナを動かして、紐の形にしたり、棒の形にしたり、手の形にしたりしてみる。



 動きは非常にスムーズで、前世ほど完璧に操作できないが、ハイレベルでの操作が可能になった。


 俺はマナを操作し、右拳に全身のマナを集中させる。


 今の右手で何かを殴った場合、凄まじい攻撃力になる。例えば大きな鉄の塊でも、砕くことが可能だ。


 その代わり、ほかの部位に纏われているマナの量が、解放前の状態に戻っているので、防御が手薄になる。非常に危険だ。


 凄まじい攻撃力を得られる代わりに、リスクを背負わなければならない。


 攻撃されそうな位置にマナを集めると、凄まじい防御力になるので、スムーズなマナの操作は、攻撃防御ともに欠かせないものである。



 さて予想より早く、ここまで終わった。



 これなら次の"マナの接触"も今日中に終わらせられるかもしれないな。



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