その劣等生、実は最強賢者

未来人A
未来人A

第6話 クラス分け

公開日時: 2020年10月26日(月) 19:54
文字数:2,151

 学舎に到着する。

 年季を感じさせる建物だ。

 恐らく建築当初は真っ白で綺麗だったであろう大理石が、今では汚くなっている。


 扉を開けて中に入る。


 女子生徒が大勢いた。

 男子寮より女子寮の方が、中等部学舎に近いようなので、そのため俺たちより学舎に到着していたのだろう。


 女子生徒たちの顔を見ても、記憶が戻るということはなかった。

 俺に話しかけてくる生徒もいない。知り合いはいないようだ。


 女子生徒を観察していると、気になる子を発見。


 右手に俺と同じく純粋印、この時代では欠陥印と呼ばれている刻印が刻まれている。


 短いピンク色の髪の少女で、背は小柄だ。周りの女子生徒と比較しても一番低いのではないだろうか。

 小動物のような顔の可愛らしい少女で、パッと見初等部の生徒にしか見えないが、ここにいるということは中等部の生徒なのだろう。


 あの刻印があるということは、彼女には魔法の才能がある。

 あくまで俺の時代の魔法のだが。


 逆にこの時代の魔法の才能はないだろうから、恐らくかなり苦労していることだろう。

 実際、物凄く不安げな表情を浮かべている。


 同じ刻印を刻んでいる者同士、何らかの親交があってもおかしくなさそうだが、向こうはこちらに無関心である。

 親しいというわけではなさそうだった。


 それから男の先生が一人現れて、初等部から中等部に上がった子たちを集める。


 生徒数はだいたい想像通り。

 百人ほどである。


 先ほどの純粋印の少女も集められていたので、どうやらこの子と今世の俺は同い年らしい。


 その先生は、「付いて来てください」と言い、俺たちを引率する。


 しばらく付いて行って、たどり着いた場所には、大きな板が壁に貼ってあり、その板には人の名前がずらりと書いてあった。


「これはクラス表です。確認したら自分が割り当てられたクラスに行ってください」


 クラス表か。

 それぞれの板の上部に、AとかBとか書いてあり、その下に人の名前が書いてあるから。

 Aと書かれた板に名前が書いてある場合は、Aクラス所属、Bと書かれた板に名前が書いてある場合は、Bクラス所属、という事なのだろう。


 自分のクラスがどこかは、だいたい予想は付いている。


 今日の朝、思い出した情報から推察すれば……。



 やはりDクラスの板に俺の名前があった。



 劣等生が集まっているクラスである。


 Dクラスに割り当てられた生徒たちは、一目見てわかる。


 Dと書かれた板の前をしばらく呆然と見つめ、数秒後がっくりとうなだれる、というリアクションを取った生徒は、確実にDクラスだ。


 そのリアクションを取った生徒の中には、先ほどの純粋印持ちの少女もいた。


 やはり純粋印持ちは、今の時代の魔法が使いにくくなるのだろうな。


「あいつら欠陥印じゃん」


「クスクス、やっぱりDクラスだよね」


 とほかのクラスに割り当てられたと思われる生徒たちが、俺と純粋印の少女を嘲笑っている。


 子供に笑われても当然俺は何ともないが、少女の方はショックを受けているのか俯いている。


 可哀想なので、嘲笑う子供たちを叱りつけてやろうかと思ったが、その場にいた先生が叱りつけた。


「他人を見下して嘲笑うような者は、今後絶対に上にはいけない」と、なかなかいいことを言っていたが、子供たちポカンとした表情を浮かべている。子供には少し難しい話だったのだろう。


 ただ先生に叱られたことで、嘲笑う声はいなくなった。


 板の横に貼ってある、構内の地図を見て、中等部一年Dクラスの教室に向かった。



「初めまして、今日から一年間Dクラスの担任となる、リース・フェーリアルです」


 教室に入り、自分の席に着いから、しばらくすると女性の先生が入ってきて、自己紹介をした。


 若い女の先生だ。二十歳くらいか。

 海の底のような青色の髪は、腰の辺りまで伸ばしている。スタイルも非常に良い。


 先生の自己紹介のあと、生徒たちの自己紹介が始まる。


 なんだか皆、自己紹介に覇気がない。

 Dクラスに割り当てられて、落ち込んでいるのだろう。


 俺は普通の調子で自己紹介を行なった。


 名乗った次の次、


「ミ、ミーミア・シャイツです」


 顔を真っ赤にしながら、ピンク色の髪少女が自己紹介をした。

 さっきの純粋印の少女だ。ミーミアというのか。



 最後の生徒が自己紹介を終える。


 全員の名前を聞いたが、生徒の記憶が戻るということはなかった。


 たぶんここで自己紹介した生徒たちは、全員大事な人物じゃなかったから、聞いても思い出すことができないのだろう。


 一応同じクラスになったのだし、ちゃんと全員の名前を記憶しておくか。


「えーと、それでは、一旦休憩して、昼から模擬戦闘訓練が行われます」


 いきなり模擬戦をするのか?

 

 ざわざわと教室が騒ぎ出す。


 今のは俺以外の生徒たちも疑問に思ったみたいだ。

 生徒の一人が挙手して、いきなりやるんですか? と質問した。


「この学園の教育理念は、実戦で力を発揮できる人材の育成です。中等部からはこうした実戦を多く取り入れて行きます。今日は、実戦で皆さんがきちんと初等部で学んだことを生かすことができるのか、最初に見ておくために模擬戦を行います」


 実戦で力の発揮を出来る人材を育成か。

 この学園は戦争をする人材でも育てているのか?

 軍人になる気はないんだがな。

 まあ、ここは素直に従っておこう。

 情報を調べる前に、退学になるのは困るからな。



 しばらく経ち、模擬戦を行う時間になった。



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