ネコカイン・ジャンキー! ~サラリーマン亘平編~

火星でにゃんこハザード! 魔薬に猫腹に恋に冒険!
スナメリ@鉄腕ゲッツ
スナメリ@鉄腕ゲッツ

第八十三話 センターを出し抜け!-1

公開日時: 2020年11月28日(土) 11:23
更新日時: 2020年11月30日(月) 12:01
文字数:1,038

【簡単キャラかいせつ】 《僕(亘平)》 猫を拾ってしまった平凡な火星世代サラリーマン/ 《ジーナ》 亘平の拾ったねこ/ 《鳴子(なるこ)さん》 開拓団の占い師/ 《遥(はるか)さん》 鳴子の双子の姉。開拓団のエンジニア/ 《仁(じん)さん》 遥さんの息子でモグリの医者/ 《怜(とき)》 砂漠で出会った謎の美人/ 《珠々(すず)》 資料室で出会った可愛い女性/ 《オテロウ》秘密計画で会社に来ている《センター』の猫

 最初の一週間、僕はなにも考えつかず、ただネコカインに逃げて君に手紙を書いていた。2020年にネコブームが起きると書いたね。……じっさい、ネコブームは起きたかい? それとも、僕の手紙によって未来線がズレてしまったかな……。

 僕がこの手紙を書き送るために粒子転送装置を使ってることは前も話したけれど、これは大きさはそれこそ片手に入るぐらいの箱なんだけど、とにかく電力を食う(原始的なレーザー加速器だからしかたないね)。

 一週間、僕はなるべく目立たない動きをしながら、自分に必要なものを考え抜いた。

 ひとつは、この加速器に必要な電源だ。そして、怜にもらったデータを引き出せる独立したコンピューター。そして、そのためにもこの『センター』からのビジネスリングを外せる場所が必要だった。

 僕はそれで、思い出したんだ。唯一、正当な理由でリングを外すことができるあの過酷な現場をね……。


 オテロウに呼び出された一週間目、僕は演技でも何でもない必死の形相でこう言った。『センター』が僕を試しているのはわかっている、もう一度チャンスが欲しい、とね。

 僕は池田さんからもういちど必要な情報を得るつもりだと熱心に言った。そして、必要な種類の金属が確保できれば、計画は二倍に加速できるとね。(じっさい、そもそもわざとスローペースで運んでいたから、その話には現実味があったはずだ)


 僕はオテロウを説得したその足で、池田さんのいるあの採掘場へ向かった。池田さんはでも、首を縦に振らなかった。僕が腹を割って話していない以上、それまでだ、というんだ。


「池田さん、僕をとにかくもう一度だけあの現場に降ろしてください」


 僕は食い下がった。上川さんたちが休憩に上ってくるまでそこを動かなかったので、上川さんたちが間に入る羽目になった。


「そうは言われたって、命にかかわるぞ」


 上川さんも池田さんの味方をしたけれど、僕はこう言った。


「それでもかまいません、あと一度だけ、あの現場に降ろしてください」


 池田さんは


「往生際が悪いってのはまさにこういうことを言うんだよ」


といいながら、最後にしぶしぶ承知をしてくれた。

 そして僕は無事にセンターのリングを外すことができた。そしてこの状況を上川さんたちに説明するのに許された時間は、地上から採掘レベルに降りるまでのエレベーターの中だけだった。僕は上川さんたちに言った。


「上川さん、僕は『センター』に監視されています。実はグンシンの中央から来たんです」


 上川さんたちは一気にしゃべり始めた僕を怪訝そうに見た。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート