タキオン・ソード

~Tachyon Sword~
駿河防人
駿河防人

霊力炉2

公開日時: 2021年4月19日(月) 17:50
文字数:4,825

今回のお話は、性的な描写があります。苦手な方はお気をつけ下さい。


 15歳未満のよい子のみんなは、こんなエッチな小説を読んじゃダメだぞ☆

霊力炉の中は、少しひんやりとした空気で、薄明かりの中静謐な感じを醸し出している。機関室の中は、低く唸る理力機関の音が聞こえていたが、霊力炉内部は外の空間とは切り離されたかのように、無音の状態だった。


 霊力炉の炉心となっているのは機関内の小さな空間だ。広さ的には二人が入ると、軽く肩が触れあう程度に狭い。そんなところに押し込まれるのは、なんとなく女性的に危機感を感じてしまう。


『なかなか狭い部屋ですね』


「居住性とか全く考えてないもの、当然でしょ」


『機密や防音も完璧そうですね』


 室内に入りハッチを閉めるステフに、意味深な念話を送るソルブライト。確かに、この炉心はエネルギーを効率よくとり込むため、外部とは遮断されている。内部には通信もなければ、無論、中の音は外にも漏れない。


 唯一、空気が外部より供給されているが、これも、専用の独立した空調設備である。


「通信も使えないから、少佐と艦長には、霊力炉がいい感じに動いて十分なエネルギーを得られたら、即座に全力で撤退するように言ってあるんだろ。だから、すぐに始めようか」


 ダーンはそう言って、ステフの背後に


「ダーン?」


 なんとなく普段と違う雰囲気を感じ、ステフが怪訝に背後を振り返ると、ダーンは軽く肩をすくめてみせる。


「じゃあ、リンケージだな」


「……いいけど、もうリンケージの時にダーンが愉しめる要素はないけどぉ?」


 ジトッとした視線を送るステフ。ソルブライトと最初に契約した頃は、リンケージの際に一瞬全裸にさせられるため、ダーンにそれを見られたりもしたが、水の精霊王サラスとの契約により、リンケージ時の防護幕が追加されて、変身の姿が外から見えなくなっていた。


「別に、見て愉しみたいわけじゃないさ」


「どういう意味?」


「こういう意味」


 おもむろに、ダーンがステフを背後から抱き寄せる。


「キャッ! ちょっ……ちょっと!」


 いきなりのことだったので、焦るステフに、ソルブライトの念話が流れ込む。


『はい、ここは完全な密室です。ダーンは精一杯お楽しみ頂けると思いますよ』


「コラぁ! どういうことよッ」


 背後からたくましい腕で抱きしめられ、抵抗できないままに、ステフは額に青筋を立てる。


「……精霊王との契約がまだ二柱じゃ、この霊力炉は満足に稼働させられないからな。より確実なエネルギー源のために、ステフには協力してもらわないと」


 ダーンはステフの耳元に唇を這わせるようにして囁く。その声の微かな振動と吐息に、少女の敏感なところが本人の意思を無視して反応する。


「んあっ……ちょっ……耳ダメ……って、いい加減にして!

 発令所でみんな頑張っているんだから、こんなトコでふざけてる場合? もうッ! ソルブライト! リンケージするわよ……」


『あ、そうでした。リンケージですね……ダーン?』


「おっと、忘れてた。リンケージしないと意味ないんだったな」


 ダーンはもはや甘噛みすらしていたステフの耳たぶから口を離し、それでも抱きしめたステフは離さないでいた。


「こ、こういうことは、戦闘終わって安全な時に……」


『何をまんざらでも無いような台詞を言っているのでしょうか、ステフ』


「う、うるさいッ。ダーン離してってば。てか、急いでリンケージしないと……」


『もうしてますよ、リンケージ』


「へ?」


 ソルブライトの言葉にきょとんとして、ステフは自分の衣服を見下ろす。服装は、旅装のままで特に変わっていないし、とてもリンケージしたとは思えないのだが……。


 そんな少し気を許した隙に、再びダーンが顔を背後から彼女の白い首筋へと近づけて――


「ひぅんッ!」


 不意の甘い刺激に、素っ頓狂で随分と官能的な声を上げてしまったステフ、彼女の視界にダーンの腕が映りこむ。その腕には、先日見たばかりの手甲が備わっていた。それは、先程までは、ダーンの腕になかったものだ。


「悪いな、ステフ。今回リンケージしたのは俺の方なんだ」


 神器ソルブライトと契約しているのは、ステフだけではない。彼女が契約した時、その立会人として応じたダーンも、ソルブライトと契約が成立していた。


 彼がリンケージした場合、衣服等の改変はないが、その両腕に桜をモチーフに彫刻された金属製の手甲が装着されるのだ。


「なっ……さ、最初からそのつもりで、あたしをハメたわね……っん……まっ、まって……んやっ……」


 左側のうなじを重点的に、唇を這わすダーン。その触れ方は柔らかだが、伝わる熱は熱く、そして遠慮がない。抱きしめてくる腕は、身動きを封じて、彼の分厚い胸に華奢な背中を押しつけられていた。



――あ……熱いッ!


 

 背中から伝わってくる、ダーンの鼓動の熱さを感じて、ステフの鼓動も跳ね上がっていく。


『今回は、ダーンの神魂を活性化する方が確実と思いましてね。まだステフは二柱の精霊王としか契約できてませんし、その力もほとんど引き出せていません。それでは、この霊力炉は上手く稼働しないでしょう。ですが……』


 ダーンの神魂とは、二週間前、アークの首都にてダーンが国王リドルと対戦した際に発現したものだ。極めて強力な神魂で、無限の闘気を発生させる上、その闘気を爆轟状態にまで高め、その力にてあらゆる超常を凌駕する。


 そんな最強の力を一度は手にしたダーンだったが、ステフが魔神の女に拉致され、その魂に深い傷を負ったことから、これを救うために、自らの魂を分け与える《輸魂》を行い、結果その力の大半を失ってしまったのである。


 と、いうのが表向きの説明で、事実は少しだけ異なる。


 実際は、ある限定的な状況下においてのみ、ダーンは再び神魂を活性化させることができるのだ。


 それこそが、リンケージ状態から引き起こされる、《三位一体状態トリニティー・モード》である。


 これは、ソルブライトを介して、ダーンとステフの魂を一時的に繋げてしまい、ステフに分け与えたはずの神魂を一つにする秘術だ。


 ただし、この秘術を起こすには条件がある。


 それは、ダーンの神魂に繋がるために、ステフの魂がダーンの存在をなんの抵抗もなく受け入れることができる状態になることである。


 つまり、身も心も委ねた状態だが、ソルブライトの話では、性的な興奮状態であると、より確実なのだという。


 そして、ステフを受け入れ万全の状態にして、さらに深い接吻をすれば、二人は魂の融合状態を引き起こせるのだ。


『そういうことで、ステフ……乗員127名のために、エロい……いや、尊い犠牲になってください』


「こ、この裏切り者ぉ……っはぁ……」


 ダーンの舌先が執拗にステフのうなじを擽っていく。ゾクゾクとこみ上げる甘い刺激に、ステフはたまらず嬌声が漏れた。


『本当に手慣れてきましたね、ダーンは……』


「……そうなれと指示してきたのは、君だったはずなんだが?」


 ダーンの返しに、ソルブライトは無言を決め込む。ソルブライトがダーンに対して、ステフとのスキンシップを増やして、が巧くなれと指示したことは事実だ。


 これまで、強力な魔神と戦闘し、一度はステフを囚われの身にされてしまい、彼女を喪う瀬戸際まで追い込まれた苦い経験。さらに、魔神リンザー・グレモリーが施した最期の罠の存在が、ダーンを焦らせていた。


 リンザーは、ステフから奪った知識と自らの魔導研究を融合させた《超弦加速装置タキオニック・アクセラレーター》の秘密を石版に記し、それを分割して、ダーン達と異界のあちこちにばら撒いている。これにより、ステフには《超弦加速タキオニック・アクセル》の理論が完成してある、ということが異界中に知れ渡ってしまった。また、石版の欠片をめぐる異界の争いにも、ステフやアーク王国、強いては人類全体が巻き込まれたことになる。


 強力な魔神達がいつ攻め込んで来て、ステフを狙うかわからない――そんな状況に立ち向かうため、ダーンは強くあらねばならなかった。


 幸い、三位一体状態トリニティー・モードを発動すれば、ダーンは魔神達に対抗できるとわかった。しかしながら、その発動にまごついていては、致命的なことになりかねない。


 そこで、ソルブライトはダーンに対して、いつでも最短で三位一体を発動できるよう、日頃からステフに手を出して、お互いに慣れさせろと提言したのである。


 ただし、ステフの純潔が失われれば、ソルブライトとの契約が破綻するため、どんなに性的に昂ぶらせても、してはならないという、思春期の男子には酷な注文でもあったが――


 もちろん、そういった経緯は、ステフには知らされていなかった。


「そ、そもそも、こういうことするなら、事前にいってくれればぁっ……いや、そこ……んっ……だめぇ……」


 耳たぶの溝に沿って、窄めた舌先を這わせていくダーン、その弄び方は熱く入念で遠慮がない。


『いえ、事前に説明しておくと、ステフも構えちゃうじゃないですか。最悪、グダグダと言い訳して拒否するかもしれませんし、説得する時間も惜しかったので。それに――』


 ソルブライトの念話が続く中、ダーンがステフの背後から抱きしめている腕をまさぐり始めた。自然と、右手が彼女の胸元へ行き、左手は短いスカートの裾をずりあげて、太股を優しく撫でていく。


『こんな風に不意を突いた方が、効果ありますしね。ステフは、こういう強引なコトのほうが、感じやすいようですから』


 意地悪で楽しそうな感じの念話が、ステフの脳裏に届くが……もはや彼女にその言葉への反論をする余裕がなかった。


 密室で背後から遠慮なく責められる、ちょっとしたスリルと、それを解かすような甘美な抱擁に、つい身を委ねそうになっている。


 機関室の霊力炉に閉じ込められているという、無意識に不安を抱く状況下において、この二週間にことあるごとに触られたりキスしたりと、甘い経験をしてすっかり気を許してしまっているダーンからの抱擁と愛撫は、彼女にとって極めて甘美なもの。


 そんな特殊な状況のせいなのか、彼女は瞬く間に恍惚となってしまっていた。


「うそ……んっ……あたしっ……こんなっ……すぐ……ああっ……ダメダメ……」


 吐息が熱く震えて濡れはじめる。仄かに匂い立つ桜の芳香が、ダーンの鼻腔を扇情的に擽りはじめていた。たわわな乳房を包む彼の手に、ついつい力が入ってしまい、柔肉が指の合間に溢れてあふれる。


「ステフ……なんかすごいな」


 曖昧な感想を吐き出して、ダーンは芽生えた欲求の趣くままに手を動かしていった。手のひらに溢れる柔らかさの中に主張しはじめた僅かに硬い小さな感触を弄び、もう片方の手は指先をスカートの中、一番の熱源へと近づけていく。


「そこ……そんな……ぃやぁ……もうっ……あたしっ……」


 ステフは、もじもじと太股をすりあわせては、身をよじって抵抗するが、殆ど身体の自由がきいていないようだ。そこへ、先程まで左側の耳を口擊していたダーンが、不意討ちのように無防備な彼女の右耳を狙い、優しく甘噛みした。


 その瞬間、予期してなかった甘い刺激に少女は耐えきれず、ひときわ甲高い嬌声が、艶めかしく開かれた唇とそこに糸を引く唾液を震わせる。







 呆気なく上り詰めて、ステフは痴態を晒し全身を震わせてしまった。


『あのぅ……ここまでやる必要はなかったのでは?』


 ソルブライトの念話がダーンの脳裏に、秘話状態で囁いてきた。


 ダーンは、秘話状態で『念には念を入れてだよ』と念じて返し、腕の中で全身を微かに震わせているステフの身体をこちらに振り向かせる。頭の中には、ソルブライトの『単に男の欲望を優先させましたよね』といった抗議が聞こえていたが、ダーンは苦笑いしつつも無視した。


 ステフを覗き込むと、彼女の視線は昂ぶりのせいで熱っぽく虚ろだったが、ダーンが顔を近づけると、何かを察し、琥珀の瞳にちょっとした恐怖の光が差し込む。


「だ……だめぇ、今……したら、あたし……おかしくなっ……ぅんん――ッ!!」


 なんとか絞り出していた拒絶の言葉を、ダーンの熱い唇が覆って強引に黙らせる。蕩けた熱い口腔内を、少し荒々しく情熱的な舌先が蹂躙し、その強すぎる快楽に耐えきれない少女は、逞しい背中に腕を回して抱きしめるしかなかった。

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