猫、時々姫君

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第29話 トラブル勃発

公開日時: 2021年3月2日(火) 22:46
文字数:824

このところの特訓に次ぐ特訓でさすがにぐったりしたシェリルが自室の窓際で猫の姿でひなたぼっこをしていると、なんだかドアの外が騒がしいと思った次の瞬間、エリーシアが突進してきた。

「エリー、どうしたの?」

「話は後! 行くわよ!」

「うきゃあぁぁっ!!」

 いきなり駆け寄ったと思ったら、問答無用でエリーシアが自分の体を抱え上げて走り出し、シェリルはたまらず悲鳴を上げた。


「エリーシアさん、何事ですか?」

「大至急、王妃様の所に行くわ! リリスはここで待機していて!」

「は、はい!」

 慌てて尋ねたリリスにエリーシアが怒鳴り返し、足を止めずに後宮の廊下を駆け抜ける。


「エリー、一体何事?」

「ラミレス公爵が、陛下に謁見を願い出てきたのよ。シェリルの偽者を連れて」

「え?」

 忌々し気に告げられた名前に聞き覚えはなく、更に(私の偽者ってどういう事?)と、シェリルは益々訳が分からなくなった。しかしエリーシアはそのまま、ミレーヌの私室の一つに飛び込んだ。


「お待たせしました! シェリルを連れてきました!」

 ゼイゼイと息を乱しながら報告した彼女を見て、ミレーヌが困ったように微笑む。

「ご苦労様です、エリーシア。すぐに準備ができますか?」

「大丈夫です」

「それではシェリルはこちらに」

「……はい」

 ミレーヌが座っているソファーの傍らに落ち着いてからシェリルが見回すと、カレンを筆頭として、もう顔なじみになっている侍女達が揃って険しい表情をしているのが目に入った。それを不思議に思っていると、ミレーヌから声をかけられる。


「エリーシアから話を聞きましたか?」

「私の偽者が現れたとか……」

「ええ。正確には『行方不明になられていた第一王子ラウール殿下』の偽者です。先ほどの謁見室内の様子を記録した物をこちらの壁に投影して貰うので、まずはご覧なさい。それではエリーシア、始めてください」

「はい、それでは皆様。こちらをご覧ください」

 その直後にエリーシアが呪文を詠唱し、白い壁面に鮮明な画像が浮かび上がった。


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