番外編6 お触り禁止令解除
「しばらく、ヤらないから」
「はぁ?!」
別れの危機から脱出して、甘い時を過ごしていた秋斗と雅。
朝から晩までそこに最愛がいて、いつでもセックスが出来る環境だったのに、雅は突如そんな『お触り禁止令』を出す。
「なんでだよ!」と反論すると「お前の性欲に付き合ってたら俺は死ぬ」と言われ、もう何も言えなかった。
「お前なんか一生洵にセクハラしてろ」
そう言い放つ雅はいつもの暗い表情をしている。独占欲とか苦悩とか自己嫌悪とかの色々混じったそれはよく雅が見せる表情だ。
ああ、こいつは本当に、可愛い。
秋斗は片割れの恋人に別れを告げ、可愛い恋人を追いかけ、荷物をさらおうとする。避けられる。抱き寄せる。拒絶される。
またこいつはなんか余計なこと考えてるな、とため息をつき、今日はめちゃくちゃにしてやろうと思った。
愛の巣のキッチン。
雅は買ってきた食材を直す。そして冷蔵庫に全てを入れ終わったのを見計らって、秋斗は彼を抱きしめた。
「……やだ、触るな」
「うるせぇ触らせろ」
「離せ浮気者……」
「……んなことすんならマジで浮気すんぞ」
売り言葉に買い言葉。
雅は目を見開いて、そして、顔を秋斗から背ける。震える肩。ああ、もうホントにこいつは。
「……すれば、いいじゃん……俺みたいな可愛くない男じゃなくて可愛い女の子とか、綺麗なお姉さんと付き合えばいいじゃん……」
「うるせえな!!」
「……っ」
秋斗は怒鳴る。
もう腹が立った。
あの時、大阪で「もう離さない」と誓ったのにまだこいつはそんなことを言うのか。
ふざけんな。
「オレはお前しかいらねぇって何度言えばわかんだよ、ああ??」
「……だって、」
「だってじゃねぇよ!大体なお前2週間もキスもさせねぇ触らせもしねぇって拷問なんだよ」
「だって、仕方ないだろ!お前に触れられたら俺がたまらなくなるんだよ!!ヤらないって言って俺が乗ったら意味無いじゃん!!」
あー、こいつは。
ホントに可愛い。
秋斗は笑ってしまった。
「……なんだよ」
「いーや?可愛いなって思っただけだよ」
「可愛くなんか……んっ」
むくれる雅の唇を激しく奪う。
何度も何度も口付ける。
久しぶりに触れたそれは柔らかく心地よい。
「……ん、秋斗……」
「……お前が女ならいいのにって思った時はあるよ。オレがナカに出せばこいつは孕むのにって」
「……俺も考えたことある。そしたら結婚出来るしあの人も許してくれるのにって」
こつん。額が触れ合う。
秋斗は優しく微笑む。
「でも、でもさ、オレは『お前』が好きなんだよ。男でもなんでもいい。お前が、好き」
「……秋斗……」
「それに、どーせお前引くに引けなくなったんだろ?」
「……うっ」
図星な雅に「何年お前と居ると思ってんだ」と笑い、また抱きしめる。
「……秋斗」
「まあ、オレも悪かった。これからはお前の都合も考えるから」
「……ん」
「……だからとりあえず今日はめちゃくちゃヤらせろ」
「……ん」
雅も、正直限界だった。
でも彼の性格上引くに引けなくなってしまって。
触れたがる秋斗を邪険にしてしまった。
そして、ちょっとしたことに嫉妬して不安になって自己嫌悪して。
でも、秋斗が好きで。
たまらなく、たまらなく好きで。
触れてると、欲しくなってしまった。
そして、2週間触れなかった分夢中で愛し合ってしまい、翌日雅は足腰が立たなくなったとさ。
ー番外編ENDー
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