貴方に溺れて死にたい 番外編

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番外編2 元鞘 R18

公開日時: 2020年9月2日(水) 19:06
文字数:3,101

番外編2 元鞘 R18



夕飯後、エレベーターで秋斗と洵が降りたのを見送って、灰と雅はすぐ上の階の自室に向かう。


灰は今にも泣きそうな親友の肩を抱いて部屋の鍵を開け、2人して部屋に入る。

雅は入口から中に入らない。

下を向いたまま、動かない。


「雅」


「……っ……くっ……ぅっ……」


「あーあーあー、慣れねぇことするからだろうが」


限界が来て泣き出す親友を抱き寄せてからとりあえず靴を脱がせ、部屋に上がらせる。

ヨタヨタとして、自力で歩けない親友を介抱して、ベッドに座らせ、自分も隣に座り、また抱き寄せる。

いつものおどけたオネエ言葉は出てこない。

こちらが灰の素だった。

オネエ言葉を使うようになったのは3年前。大切な女が出来て心に余裕が出来てからだった。

周りを和ませようと始めた。

雅は灰に縋ってしばらく泣いていた。

灰は何も言わずただ彼を抱き締めていた。


「……灰、おれは……どうしたら、いい……?」


しばらくして漸く雅は嗚咽しながら言葉を発する。


「どうって俺は何も言えねぇよ。それはお前らの決めることだろ」


「……っ……ぅっ……」


「あー、もう!!あの人になんか言われたのか?」


強い嫌悪感が出てくるあの人の言葉を思い出す。

吐き気がする。

俺はそんなんじゃないのに。


「……ビッチって……男なら誰でもいいんだろう、って……もう、秋斗に……ちかづ……っ……」


「あー?お前らが好きあってんのは今更だろうが。何考えてんだよあのババアは」


はぁぁぁ。

灰は深くため息を吐き、雅を抱いている逆の方、空いている方の手で髪をガシガシと乱暴に掻く。

苛立ちが隠せない。


本当にあの人は突拍子もなくキレる。

それが厄介だった。


「大体な、お前らが同棲するとか言い出したからだろ、あの人がキレたのは」


「……ぅうっ……」


「あー、わかったわかった泣くな泣くな」


もうどうしたらいいか分からない。

雅は秋斗と暮らしたい。

春樹は洵と、暮らしたいんだと思う。

春樹は、洵が救ってくれる。洵だけが春樹を救える。だから自分達は。


でも、それも許されないなら。


「……アイツの隣にいれないなら、いっそ……」


死んだ方が、マシ。

どうしてあの人はここまでこいつらを苦しめるのか。秋斗と春樹を想っているならどうして幸せを願ってやれないのか。

灰は頭を抱えた。


「……雅さー、マジ死ぬのはよしてくれよ。お前が死んだら秋斗は後追いするぞ?そしたら春樹は?洵は?泪は?俺は??残されたもんの気持ち考えろ。馬鹿な真似はよせ」


「……っごめ……」


もう、涙が止まらない。

そんな時。


ーピンポンピンポンピンポンピンポン!!


インターホンを連打する迷惑な輩が現れる。


「あ"あ"??!うるせぇぞ、てめぇ何の用だ!!」


灰が不機嫌MAXで扉を乱暴に開ける。

灰が怒鳴りつけた迷惑な連打野郎は、


「お、おお、お前久しぶりだなそれ……」


洵と一悶着あり、荷物を一式纏めてきた秋斗その人だった。


「あら、アキちゃんじゃない!」


「いや、むしろそれはそれでホラーだわ」


ドスの効いた怒鳴り声からおどけたオネエ声の変わり身はそれはそれでホラーの域だ。

「アキちゃんじゃない」その言葉を聞いて、雅は必死に涙を隠そうとする。

でも、止まらなくて。


「……まあ、入れよ」


「……ああ」


パタリ……。

扉は閉まる。

秋斗を迎え入れた部屋は、雅のすすり泣く声が響く。


「……雅」


「……」


「……馬鹿で、ごめんな。でも、オレ、」


お前が好きなんだ。

抱きしめたその体温に、その言葉に、雅は目を見開き、また涙を流す。

さっきまでとは毛色の違う涙は、嬉し涙。

ああ、大好きな秋斗の匂いだ。


灰はしばらく2人を見守っていたが、大丈夫そうだったので荷物を纏めて洵の待つ部屋に向かう。

灰の仕事はまだ残っていた。


「……みやび」


「ぅん……」


「好きだ」


「ぅん……」


「離さない」


「おれも……」


もう、何があっても離さない。離れない。

例え誰に罵倒されても、2人なら乗り越えられるから。

2人はお互いしか、愛せないから。

2人は泣きながらしばらく抱き合っていた。


「……雅」


「……なに?」


「……シよ?」


「……バカ」


「……バカでいい」


「ぅわっ?!」


雅は秋斗に押し倒される。

ああ、いつぶりだろうか。こんな風に愛しい恋人の切羽詰まった表情を見上げるのは。

この表情がたまらなく好きだった。

秋斗が雅だけに見せる顔。


欲情した、男の、顔。


「……雅」


「……ん」


「……みやび」


「……あき、んっ……」


耳元でその低音で囁かれれば肌が粟立ち、身体が跳ねる。

秋斗が名前を呼ぶ。雅が名前を呼ぶ前に秋斗は彼の唇にかぶりつく。

変わらない。荒々しいようで優しくて、激しい秋斗とのキスが雅は好きだった。


「……んっ、んんっ、ふぁっ……」


「……んっ、ふ、」


舌が絡まり合い唾液を交換する。

水音が静まり返った室内に響く。

するりと秋斗の手が雅のシャツの中に入っていく。

秋斗に開発された突起がぷくりと勃ち上がって己を主張する。

くに……。


「んやぁっ」


「……相変わらず敏感だな」


身体を快楽にくねらせる可愛い恋人にくっくっと秋斗は喉を鳴らす。

チュッチュッ、首筋に唇を落とし、赤い、真っ赤な所有印を灯す。

雅がモジモジと脚をすり合わせているのに気づく。


「……苦しい?」


「……ん……」


切ない表情の恋人にもう我慢が限界になるが、何とか理性を振り絞り、愛撫を続行する。

どれだけ2人でシていないだろう。

お互いの自身を擦り合わせる。

それだけで幸せで、気持ちよくて、イッてしまいそうになる。


イキそうになるのを我慢して、己達から手を離す。


「……あき?」


「……こっち、な」


「んぅっ!!ああっ」


秋斗のギターを愛でる職人のような指がナカに侵入する。

ぐちゅぐちゅぐちゅ……

1本2本と徐々に増やされていく指がナカを暴れ回り、雅は快楽に溺れていく。


「……は、みやび、」


「あき、あき……あっ、やく、は、やくナカに……あきの……ちょうだ、い……」


ゴムなんて当然持って来ていない。

後で雅に怒られよう。

もう理性もぶっ飛んだ。

秋斗は雅のナカにそのままの己をぶち込む。


「あっあああっ!!」


「……くっ」


その圧迫感に雅は軽く絶頂を迎える。

久しぶりなその締め付け。

どのオナホよりもいい、いや、そんなの比べ物にならないほどの快楽に秋斗は眉を顰め、歯を食いしばって、快楽に与える。


ぱちゅんぱちゅんぱちゅんっ!


「あっ、あっ、ああっ……あき、あきっ」


「は、みやび、みやび、みやびっ」


いい所を秋斗のそれがグリグリと刺激する。

雅は秋斗の名前を、秋斗は雅の名前を呼び続ける。

お互いが近くにいることを確かめたいのだ。


「あっ、あ、ひっあっ、も、も、だめ、無理、クる、キちゃう……ダメ!あきっ!!あっ、あああああっ!!!」


「……くっ……」


雅が弾け、秋斗を締め付け、秋斗は雅のナカに果てる。

秋斗は脱力して、雅の上に倒れ込む。


「……ナカに、出すなよ、ばか」


「……仕方ねーだろゴム持ってなかったんだからよ」


後で処理してやるから。

そう呟いて秋斗はまた雅に口付けを贈る。

秋斗はまだ繋がっていたかった。

皮膚があるから溶け合えない。だからせめて繋がっていたかった。

それは雅も一緒で。

雅はぎゅっと秋斗にしがみつく。


「……雅」


「……もうダメかと思った」


「……ごめんな」


秋斗は雅の顔中にキスを降らす。

雅はくすぐったくて思わず締め付けてしまった。


「……てめ、締め付けんな」


「だって……」


「……もっかいする?」


「……する」


2人はお互いを確かめ合うように何度も何度も愛し合った。

もう大丈夫。もう、前のように笑い合える。

いや、前以上に、お互いが、愛おしい。


次の日、ヤり過ぎで立てなくなった雅を介抱するために秋斗は大阪観光には行かず、2人でずっと抱き合って眠っていた。



ー番外編ENDー

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