「号外号外!あのシャーロック・ホームズがお亡くなりになった!」
「えー!?そんなぁ……!」
彼の訃報が街を賑わす。
最後の最後まで人を惹きつけてやまない奴だ……
そんなことを思った数日後。
「メアリ……今まで、沢山迷惑掛けてごめん……」
「いいえ、そんなことないわ」
急に持病の容態が悪化した。彼がこっちに来いとでも言っているように。
涙を光らせる我が妻に少し……いや、かなりの申し訳なさを抱く。
「あの男との……人生が、長すぎた、かな」
「そんなこと言わないで下さい。だって、私は……」
そんな貴方に、惹かれたのですから
最愛の妻に看取られ、私は亡くなった。
そして、月日は流れた。
「順〜お前、本当にいいのか?」
「まぁ、家賃が安いというのなら」
僕は日本の男子高校生・若宮順として生きている。どういうわけか、前世(あの男に散々振り回されたあの日々のことだ)の記憶が鮮明に残っている。
「いやー、でもさ……あの本郷紫音だぜ?ただの美少女だったら、誰でも大歓迎だろうけれど……あれは美少女の皮を被った『キチガイ女』だ」
「構わないって言ってるだろ」
前世ではもっとイカれた奴と同居してたし、なんて流石に言えない。
流石に急に不機嫌になって、機嫌を取ろうとすると「邪魔だ」と言われ、挙句、困るとクスリに頼るような人物は他にはいないだろう。
「それならいいけど……ほら、着いたぞ」
促されてドアを開く。
「……本郷?本郷〜?」
彼が呼ぶと中から気だるけな声がする。
「何……?こんな朝早くに……依頼ですか?」
目を擦りながら来る少女。片手には水煙草。
なんだろう……凄く既視感を覚える。
「もう昼だぞ……って、こら!またこんなもの……!」
彼が水煙草を取り上げようとすると彼女は軽い足取りでそれを避けた。
「いいじゃないですか。別に誰の迷惑にもなっていないし。それよりも見て下さい!この反応!!」
雑に広がった本の山を器用に避け、怪しげな実験をしている机に彼を強引に引っ張っていく。そっくりだ。嫌なくらいそっくりだ。
彼は雑に彼女の手を振り解いて言った。
「あーもう……紹介するぞ。こいつが本郷紫音。んで、こっちが……」
本郷さん(?)がこちらを振り返る。そしえ、その大きな瞳を更に見開いた。
「……ソン…………?」
そして、か細く何かを呟いた。何かは流石に聞き取れなかったけれど。
「若宮順。転校生だ」
異例の男女での共同部屋だが〜と話す彼を他所に彼女はこちらに近づく。そして、背伸びをして耳打ちした。
「やぁ、久しぶりだね
______ワトソンくん」
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