人形たちのサナトリウム

- オーナレス・ドールズ -
片倉青一
片倉青一

10−2「研修期の終わり」

公開日時: 2022年7月16日(土) 18:00
文字数:7,518

 看護人形メラニーは最近、自分の外見が気にならなくなった。背丈も、体型も、無愛想なことも、まるで気にならなくなった。

 別段、つい先日開催された新年祭にて心持ちを新たにした、というわけではない。

 メラニーに後輩ができたのだ。

 後輩は男性型の看護人形で、個体識別名称をルネという。技師レーシュンの手に成る。身長はハーロウほどに高く、筋骨隆々としている。そして介入共感機関を有している。

 ルネは目覚めて早々に閉鎖病棟を担う看護D班へ配属され、メラニーが教育を受け持つことになった。

 看護D班の班長を務めるレフは、最近看護人形に転向したラヴァの指導にあたっている。看護D班は五体の大所帯になったが、半人前が二体、教育係が二体なので、業務の効率は以前と大して変わらない。


 現在の時刻は午前十一時三十分。

 メラニーとルネは、入所している患者へ服用してもらう薬剤のチェックを行っていた。橙色の錠剤が一錠、乳白色の錠剤が二錠ある皿を見つけ、メラニーが指差した。


「ここ。カルステンさんと同じになってる。アルテさんのエミッタ剤は一錠。コレクタ剤が二錠。逆」

「うおおおおおん! また間違えましたぁ!」


 ルネは大袈裟に頭を抱えてのけぞった。狭いナースステーションに積み上げられた書類に後頭部が直撃し、ばたばたと紙束が床に落ちた。


「ああっ! 書類が!」

「声、大きい。落ち着く。配薬チェックしとく。書類、片付けて」

「はいぃ……すみません……」


 メラニーは全ての配薬をチェックし、今度こそ誤りがないことを確かめた。農園人形ハーベスターのアルテはエミッタ剤が一錠、コレクタ剤が二錠。南極鎮守コウテイペンギンのカルステンはエミッタ剤が二錠。コレクタ剤が一錠。

 書類を改めて積み上げたルネは大きな体をこれでもかと縮めて、しゅんとうなだれた。


「ごめんなさい、先輩。またご迷惑をおかけして……」

「ん。大丈夫。一つ一つ、覚えていけばいい。メラニーもそうだった」


 嘘をついた。メラニーは目覚めてこのかた、この手のミスを犯したことはない。


「でも……」

「誰でもミスする。一番迷惑なのは、患者さんに危害が及ぶこと。だからダブルチェックしてる。大丈夫」

「うおお……ありがとうございます……」


 などとやりとりしていたところ、通りがかったラヴァが声を掛けてきた。真新しい看護人形の制服を着て、何やら大荷物を抱えていた。


「お、またやってるね」


 ルネがしゃきっと背を伸ばした。


「ラヴァさん! お務めご苦労様です!」


 その拍子に、また腕をぶつけた。せっかく積み上げていた書類がばさばさと床に落ちた。


「ああっ! また書類が!」

「いい。ゆっくりで」

「メラニーちゃんは優しいねえ」

「うるさいです。仕事に戻ってください」


 ラヴァは肩をすくめつつ笑みを漏らした。


「はいはい。言われなくてもそうするさ」


 メラニーはルネを甘やかしている。自覚している。だが、ルネはとかく真面目で素直で、やや自罰的だ。甘やかしたところで慢心も増長もしない。

 何より、メラニーはルネのことが可愛くて仕方がなかった。

 目覚めてから日が浅いルネは、まだ身体操作の精度が悪い。細かなミスも多い。大柄なことも相まって、しょっちゅう体をどこかしらにぶつける。機械器具の操作も下手くそだ。

 だからだろうか、放っておけない。目をかけたくなる。自分がいれば、ルネのミスはカバーできる。

 いつだったか、出来の悪い子ほど可愛いものよ、とメラニーの創造主つくりぬしであるセイカが言っていた。


「書類片付けたら、配膳と配薬。メラニーはワークショップの準備、するから」

「はい!」

「っとと、俺もこれを運ばないといけないな。レフさんに叱られる」


 まだいたのか、と嘆息したメラニーの眼前から、ラヴァがそそくさと立ち去っていった。大荷物を抱えているのに、足取りは軽い。さすがは元・代理兵士だ。

 メラニーは内側がガラス張りになっている回廊を通り、アイリスのもとへと向かう。

 日常を取り戻した止まり木の療養所は、穏やかだ。看護人形の働きぶりを除けば、だが。患者に穏やかな日々を送ってもらうため、看護人形は日夜奔走している。

 昼食を過ぎればワークショップや個別面談が実施される。閉鎖病棟においては、それぞれの患者が望むように過ごしてもらう。

 南極鎮守のカルステンと農園人形のアルテは比較的おとなしい。ルネに任せることにする。メラニーは今日も元気な郵便人形ヘルメス、アイリスの相手を務める。


「さあ道徒メラニー、本日も『行』に励むとしましょう」


 今日の吉方位とやらは南東だとアイリスは言う。二体連れ立って閉鎖病棟を出た。南東の松林を抜けて防波堤まで出向いた。

 アイリスは松の木から伸びる影の方向を見て、満足げに頷き、いつものようにへんてこなポーズを取った。


「では、右足から地に陽を、左足から天に陰を」


 右足一本で立ち、左足を高く上げる。上げた左足は腕で抱えて固定する。メラニーもアイリスに倣う。防波堤に、二体のカカシが並ぶ。


「放出ですね」

「その通り。アストラル体を純化される感覚を、強く感じて」


 もちろんアストラル体とやらをメラニーが感じられるわけがない。アイリスに同調して、アストラル体とやらを感じているフリをする。

 とはいえ、体を動かすこと自体は良いことだ。人形は模倣脳だけでなく、身体操作も利用して問題の『解』を導出する。


「次に四の型。はい、右足を着いて。右手首は俯角四十二度に。左手は天頂へ」


 空気を押す。あるいは海風に指をたなびかせる。ゆったりとした体操を通じて、メラニーは身体操作を念入りに最適化する。

 閉鎖病棟にこもりきりだと、身体操作の最適化がおろそかになる。身体がアンバランスに造られているメラニーにとっては、アイリスと共に行う『行』はいい機会だ。手の指先、足の指先に至るまで感覚を研ぎ澄ませ、一つずつ丁寧に動かしていく。

 一通り、『行』を終えて、松林の影で休憩となった。この炎天下でもアイリスは汗一つかかなかったが、メラニーはそれなりに汗ばんでしまった。閉鎖病棟に戻ったら着替えなければ。人形の汗はほぼ真水だが、濡れたままでは気分が悪い。

 メラニーが看護服の胸元を開いて海風を入れていたところ、アイリスがぽつりと呼びかけた。


「――メラニーさん」


 呼び方が常とは違うことにメラニーはすぐ気づき、しかし平静を装ってぶっきらぼうに答えた。


「何です、アイリスさん」

「昨日の面談にて、開放病棟へ移ってもいいと、レーシュン先生に言われました」


 病識を持ち、ある程度の社会性を再獲得したなら、開放病棟にて他者との交流を持ちつつ、いっそうの治療に励むこともできる。無論、当事者である患者が望むのであれば、の話だが。


「メラニーさんは、どうしたらいいと思いますか?」

「やりたいようにすればいいです」


 言ってから、言葉が足りないなとメラニーは思い直した。


「メラニーはいつでも駆けつけます。メラニーはあなたの主担当ですし、あなたの弟子です。その……まだ、弟子の方は未熟ですけど」

「大丈夫です。私は非科学的スピリチュアルな妄言を言っていて、あなたは私に付き合ってくれている。確かな自覚があります。衝動は残っていますが、むやみに布教したり、唐突に『行』を始めたりはしないでしょう」


 アイリスは、エルバイト郵便社のエンブレムが縫い付けられた制帽をトントンと示指で叩いた。アルファベットのEとMを、封筒の形状シンボル加工デザインしたエンブレム。想いを届ける者の証。


「私自身の推測でしかありませんが。私は既に、本来の業務に戻れるでしょう。むしろ、以前の私より、今の私はお客様の心に寄り添うことができる」

「衝動、発散できますか」

「はい。業務時間外に『行』をこなせば済みます。その程度には、私は私をコントロールできています」


 レーシュンは、アイリスの病状が寛解に至ったと判断したのだろう。メラニーも、アイリスが衝動のコントロールに成功していると判断する。

 であれば、メラニーが言うべきことは決まっている。


「開放病棟、行ってみたらいいです。だめだったら、また戻ってくればいいです」


 アイリスは微笑み、緑色の長い髪を指先でくるくるともてあそんだ。


「ありがとうございます、メラニーさん。私、頑張ってみます」


 郵便人形アイリスの退所は、そう遠くないだろう。

 寂しく感じないと言えば、嘘になる。アイリスは、ヒトの『想い』がいかに尊いかをメラニーに教えてくれた。人形が抱く『想い』もまた同等に尊いのだと、教えてくれた。

 それでも。止まり木の療養所において、患者が無事に退所するのは何より喜ばしいことだ。メラニーの誓いは、メラニーの個人的な感情に勝る。


 我は。常に人形へ与する者。に毒あれど害あれど、これことごとうべなう者。観察、理解、共感の命題へ殉ずる者。其の厚生に全霊を捧ぐ者。

 此方こなたつ、じつために。


 その、他日が近いのだ。使命を抱く看護人形として、これ以上の喜びは無い。

 大きな嬉しさと、ちょっぴりの寂しさを込めて、メラニーは素直な心の裡を言葉にして伝えた。


「本当に、良かったです」

「はい。本当にありがとうございます、メラニーさん」


 アイリスは嬉しそうに頷き、それからハッと表情を変えた。


「あっ。でもでも、あの手紙は私が退所してから読んでくださいね」

「はい。約束ですから」


 アイリスがメラニーへ渡した手紙のことだ。常に携帯しているわけにもいかないので、今はロッカーの奥に大事にしまってある。


「絶対ですよ?」

「もちろんです」

「絶対に、絶対にですよ?」

「……しつこいです、導師アイリス」


 こうして軽口を叩き合える患者は、そう多くはない。アイリスの病状が改善したということであり、アイリスとの信頼関係を築けたということでもある。

 アイリスは今や、メラニーの友人だ。

 だからメラニーは、軽口と本音を交えてアイリスへ言った。


「とっとと退所してください。お手紙読むの、楽しみですから」




 ワークショップを終え、ショートブリーフィングとアフターケアをこなし、夕食と配薬を済ませたら、夜勤の看護人形へ情報を引き継ぐブリーフィングが始まる。夜勤の間、後輩たちは一等人形造形技師からみっちりと講義を受ける。

 メラニーは閉鎖病棟から開放病棟のナースステーションへ移動し、本日の業務内容と、ルネに対する指導内容について看護長のジュリアに報告する。

 もちろん、その場にはハーロウも同席している。


「――こんなとこです。ミスはあります。けど、メラニーがしっかりカバーしてます。やる気、あります。改善もしてます。以上です」


 今日のルネの様子についてメラニーが報告したところ、ジュリアより先にハーロウが口を開いた。


「それじゃ駄目です。メラニーはルネに甘すぎます。そんなんじゃ、いつまでたってもルネが一人前になれません」

「メラニーにはメラニーの考えがある。ハーロウはピアジェに厳しすぎ。誉めるところは誉めるべき」

「できて当然のことを誉めてどうするんですか」


 ハーロウが受け持つ新米看護人形は男性型で、個体識別名称をピアジェという。技師リットーの手に成る。背が低く、肉付きも薄い。表情はいつも無愛想だ。端的に言えば、メラニーを細っこくして、髪を短くしたような姿をしている。ルネと同様に介入共感機関を有している。

 意外なことに、ハーロウは後輩のピアジェにとても厳しく接している。ピアジェはよく働き、ミスも少なく有能なのだが、患者へ接する態度についてハーロウとよく衝突している。有能な働き者であるがゆえに、己の過ちをなかなか認めない。


「いつも言ってますけど、ピアジェは患者さんに対して冷たすぎるんです。そりゃあ、ある程度の距離を置くべきなのは理解しますよ。過度に共感すると依存を生みますから。だけど、患者さんに寄り添うことが大前提です」

「ピアジェなりの線引き。ハーロウの線引きを押し付けるのはよくない」

「線を遠くに引きすぎていると言っているんです」


 後輩の指導方針を巡って対立するハーロウとメラニーに、ジュリアがうんざりした面持ちでぼやいた。


「……あんたら、夫婦か」


 二体とも、すぐさまジュリアへ視線を転じて異口同音に反論する。

「「違います!」」

「はいはい……仲がよろしくて大変結構。ハーロウ、あんたは口うるさく言うのをもう少し抑えな。ピアジェだってあんたの言いたいことは分かってる」

「……はい」

「メラニー、あんたはもう少し厳しく接していい。叱るところはちゃんと叱りな。ルネは反省できる子だけど、言われなきゃ気づかないこともある」

「はい」


 毎回、メラニーとハーロウがジュリアに諭されるところまでが夕刻のブリーフィングにおける恒例行事だ。


「ったく。あんたたち、どっちも過保護すぎなのよ。突き放すってことも覚えろっての。どうせ大きな失敗をしでかして初めて気づくんだから」


 と言ってから、ジュリアは顔をしかめた。


「……どうしてあたしがしゅうとめみたいなことを言わにゃならんのだ」


 片手で額を抑え、看護長は天井を仰いだ。どうしてって、あなたが一番偉いからです。とは、さすがのメラニーでも言わない。中間管理職は大変なのだ。

 ジュリアがアンナに代わって看護長を務めるようになって数ヶ月。彼女は長としての立ち居振る舞いが板についてきた。かつてのアンナとはスタイルこそ違うが、立派に看護人形たちをまとめている。

 ブリーフィングが落ち着いたところで、ハーロウが別の看護人形たちに矛先を向けた。


「ところで、看護A班の皆様」


 現在の看護A班は、青十字から拠出された三体の看護人形からなる。かつて看護A班が崩壊したのち、後任に就いた人形たちだ。

 身長は全く同じ。顔かたちも全く同じ。体型だけ違う。女性型が二体。男性型が一体。特徴らしい特徴がない、いかにも量産型といった風体をしている。


「ご報告の内容が、いつも同じのようですが」

「我々は事実を全て報告している」

「いいえ。患者さんは毎日、何かしら変化しています。例えば――」


 看護A班が提出した日報をハーロウがばらばらとめくる。


「ここ。今日のノインさんは、午前は八番アハトさん、午後は三番ドライさんですね」


 ノイン。八つの独立した人格が午前と午後でランダムに入れ替わる、正真正銘の多重人格者だ。分類は不明。八つの人格がそれぞれ別々の分類を自称している。


「このパターンだと、三番ドライさんが八番アハトさんに悪態をつくはずです……悪態をついていた、とは書いていますね。悪態の程度はどうでしたか? これまでの悪態については全て記録して引き継ぎましたよね?」


 三体は一様に顔を見合わせ、一秒ほど黙考してから再びハーロウへ視線を転じた。


「程度については、常に比べれば穏やかだったと判断する」

「それです。そういうことを日報に書いて、口頭でも共有してください。必要ならわたしも手伝いますし、情報の共有もします。わたしの手が空いていなかったらメラニーを呼んでください。いいですよね、メラニー?」

「ん。大丈夫」


 この点に関しては、メラニーも全面的に同意する。青十字から派遣された三体の看護人形は、OCEプロトコルを認識はしているが、理解と実践に至っていない。


「よく観察して、些細な変化を見逃さないでください。些細な変化こそが、患者さんを本当に理解するチャンスです」


 看護A班は、メラニーおよびハーロウの古巣だ。かつて両者が世話をしていた患者の多くが、いまだ止まり木の療養所に滞在している。

 そこにきて、現在ではあの青十字から拠出された看護人形が患者の世話を務めている。メラニーもハーロウも気が気でない。


「メラニーも、A班の方々に何かあればどうぞ」


 ハーロウは最近、嫌われ役を買って出ている。とはいえ、自分にばかり言わせるな、と言いたいのも理解できる。

 メラニーは三秒だけ考え、三体の無表情な看護人形へ告げた。


「愛が足りない」


 瞬間、ブリーフィングの場が冷え切った。こいつは何を言っているんだ。ハーロウも、同席している先輩の看護人形たちも、ちょっと引いていた。

 だが、事実だ。

 抽象的な表現だが、今の看護A班には真心が無い。当院の看護人形は個々の人形の幸福に資するべきである、という概念を、未だ理解しきれていない。

 とはいえ、メラニーはハーロウほど口うるさくは言わない。朱に交われば赤くなる。いずれ、今の看護A班に務める人形たちも当院の看護人形らしい看護人形になるだろう、とメラニーは考えている。

 口に出したなら、またハーロウが「メラニーは甘すぎます」と文句を言うのだろうが。

 ともあれ、メラニーは自分の外見のことなど気にしてはいられなくなった。何せ、頼りない看護人形が五体もいるのだ。彼ら、彼女らの指導にあたりながら、日々の業務もつつがなくこなさなければならない。

 これをして『成長』というのだと、今のメラニーは知らない。

 ぱんぱん、とジュリアが手のひらを打ち鳴らした。


「はーい。ブリーフィング終わり。休眠組はとっとと待機所に行った行った。巡回組はここで待機。あたしは先生方を巡ってくる。何かあったら看護網絡ナースネットに報告を。以上、可及的速やかにASAP


 了解、と全員が返事をして、めいめいが持ち場へと就き始めた。

 メラニーとハーロウは廊下を歩いて待機所へと向かう。後輩の指導にあたっている都合上、ここのところ常に日勤となっている。夜勤組からの要請があったとき、優先的に対応するのは日勤が続いている者だ。

 何気なしに、メラニーは隣を歩くハーロウをちらりと見上げた。

 視線に気づいたハーロウが首を傾げてメラニーを見た。相変わらず化粧っ気の欠片もなく、童顔で、背だけはやたら高い。

 だが、昔のような頼りなさは感じられない。なすべきことを心得た者に特有の、充実感、あるいは覇気、そういった雰囲気を内に宿している。


「どうしました?」

「別に。鏡、見てただけ」

「鏡なんてありませんけど……」


 察しが悪いことだけは相変わらずか。患者の機微には聡いくせに、同僚の機微にはとんと疎い。

 メラニーが苦笑すると、ハーロウは幽霊でも見たかのようにぎょっとした。


「何」

「いえ……」


 きっと、自分にも充実感とか覇気だとか、そういうものが宿っているように見えるのだろう。だって、メラニーとハーロウは等価の存在なのだから。

 ということは、同僚の機微に疎いのも、きっと同じなのだろう。

 ちょっとだけ、本当にちょっとだけだが、明日からはルネを叱ってみよう。きっと萎縮してしまうだろうから、フォローの言葉も考えておこう。

 そんなことを考えていたら、待機所に着いた。

 早めの休眠を取って、午前三時から始まる二回目の夜間巡回に備えなければ。


 メラニーの業務は、これまでもこれからも、今までどおり続く。なすべきことがあり、メラニーはそれを心得ている。

 うわべだけの外見を気にしている余裕など、今のメラニーには無いのだ。


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