この物語は、真理省内のオールド・アーカイブに残された『猫の鈴』に関する情報を精査した僕(伊集院アケミ)が、存命する関係者に取材を行って作成した、限りなくドキュメントに近いフィクションである。革命組織『猫の鈴(英表記・Bell The Ring)』によって成し遂げられた、国家転覆前夜の物語だ。
全ての始まりは、西暦二〇二〇年の三月に始まったコロナショックにあった。同年六月、社会情勢の混乱をきっかけとした、彼らの最初の蜂起は失敗する。組織の精神的指導者であり、後に時空管理局の最大の敵となる剣乃征大は逮捕され、内乱幇助罪及び相場操縦の罪で起訴された。関係者の尽力により執行猶予こそ付いたものの、彼は全ての財産を国に奪われたのである。
破防法適用団体とされた『猫の鈴』は解散し、いまだ逃亡を続けるメンバーたちは、組織の長老である赤瀬川の支援の下、野に潜んだ。剣乃の妻であり、組織の爆発物製造を担っていた[洋子|ひろこ]もその一人である。
同志たちが次々と逮捕・投獄されてゆく中、組織の精神的指導者であった彼は、官憲の厳しい監視下におかれながら、新潟県十日町市にある『水落旅館』において、執筆に励む日々を送る。その傍には、同志・土佐波の妻である悦子が控えていた……。
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