【ABAWORLD MEGALOPOLIS 特設スタジアム 選手控室】
幾つものロッカーの立ち並ぶ狭い部屋。
その部屋の中央のベンチに二人のアバが腰掛けていた。
『ミカ』と『B.L.U.E』の二人は並んで目の前に表示されたウィンドウを注視している。
そのウィンドウには何やら映像が流れており、そこに満面の笑みで腕を組んで喋っている巨漢の獣人『獅子王』の姿があった。
『ABAWORLDは今年で十周年! 我々バトルアバたちを常日頃から応援してくれて大感謝だ!』
台詞を言い終えた獅子王からカメラが動き、次にトンガリ帽子を被った魔女っ子『ガザニア』が映る。
彼女は帽子を右手で軽く動かして鋭く強い眼差しをカメラへ向けた。
『――オーディエンスの方々には熱狂と歓喜を……そして相対すべき好敵手たちには鉄槌を約束しましょう』
ガザニアが台詞を言い終わるとカメラが再び動き、隣……軍服を着た少女『ミカ』が今度は映る。
ミカはカメラを向けられた事に気が付き、慌ててぎこちない敬礼姿勢を取った。
『わ、私たちは誠心誠意がんばっていきましゅっ! ので! これからもア、アババトルをよ、よろしくお願いしましゅっ!!』
緊張し過ぎて台詞を噛みまくるミカに周囲のバトルアバたちから笑い声が漏れる。
そのままバトルアバたちの姿がフェードアウトし、画面が切り替わる。
最後にデルフォニウムのロゴと音声が表示され映像は途切れた。
「ぎゃははははっ! お前さぁ! 幾ら何でも緊張し過ぎだろっ! 完全にオチ担当じゃねーか!」
「……悪かったですね。オチ要員で……」
腹を抱えて爆笑しているブルーにミカはジトっとした目つきを向けていた。
二人が一緒になって鑑賞していたのはこの間作成された本選用の宣伝映像だった。
バトルアバたちが各自用意された台詞を喋っていくというシンプルな物だったが……。
こんな宣伝映像なぞ撮った経験の無いミカは完全に上がってしまいこの惨状だった。
「大体なんで私だけ台詞長いんですか……。同じ新人枠のウルフさんは一言だったのにぃ……」
恨みがましくミカは中空を睨みつける。
因みにウルフ・ギャングの台詞は一言「……ガルル」だけだった。
「オレが撮影側でもお前に色々やらせるわ。だっておもしれーもん」
――ピピッ。
二人で会話しているとミカの身体から通知音が鳴る。
自身の右腕を撫でてミカはウィンドウを出し、その画面を眺める。
「……ゆーり~さんからメールだ」
【ミカくん 頑張って下さいモフ 試合終わったら慰めソロライブしてあげますモフ♥】
文面には可愛らしいハートマークと共にそんな事が書いてある。
ブルーも横からウィンドウを覗き込んできた。
「さっきから応援メールばっかり来てんなー。人気者だことお前さんも」
「応援は嬉しいんですけど、みんな負ける前提でメール送ってくるのはどうにかならないんですかね……」
流石に本選出場とあってこのABAWORLDで今まで出会った人たちから次々に激励メールが届いている。
一番最初に出会った556、トラさんたち、樫木とリリィ、Mr.36など……。
だがどの文面も【本選出場だけで名誉だよ! 気にすることないって!】
【終わったら片岡ハムで残念会】【負けてもあたしたちの友情は不滅】
【一緒にバーで飲んで忘れましょう】とどう読んでもこちらの敗北前提で書かれている。
「あはははっ! 相手が相手だからな! 仕方ねえって!」
ブルーがからかっているのか慰めているのか良く分からない口調でミカの肩をバンと叩く。
「た、叩かないで下さいよ。大事な試合前に脱臼したらどうするんですか」
「おバカ。仮想現実で肩抜ける訳ねーだろ――しっかしまさかオレがこの選手控室に入る日が来るとはなぁ。
世の中分かんねえもんだな」
その衝撃に狼狽えつつミカが苦い顔をしていると、彼は急に神妙な態度になった。
ブルーは室内を右から左へシミジミと眺めて言葉を続ける。
「ちょっと前まではただのアババトルオタクだったけど、今じゃ本選出場者様のオペって事で
オレも名がそこそこ通るようになっちまったよ。
爺さんたちにも迷惑掛かるしあんまり今までみたいに適当に過ごす訳にも行かないし。
全く……オチオチ、フォーラムでレスバトルも出来やしねぇ」
どこか不満げにそう言うブルーにミカは思わず、笑ってしまった。
「良い事じゃないですか。私はブルーさんが真人間になってくれて嬉しいですよ。
多分あのままだったら何時の日か後ろからバッサリ行かれてましたし」
ミカの冗談めかした言い方にブルーは大げさに肩を竦めた。
「オレは仮想現実くらい自分に正直に生きたいの。社会での疲れをそうして癒していたというのに……」
――ピピッ。
彼が少々げんなりとしているとミカの身体から再び通知音が鳴り響く。
二人は一度顔を見合わせた。
「また応援メールかぁ? どこのどいつだ?」
「えっと……。あっ……」
そのメールはあの……ガザニアからだった。
文面には短く一言だけ書いてある。
【準決勝で待ちます】
横からチラ見してきたブルーがその簡潔すぎる文面に呆れていた。
「あの魔女っ子、まだ自分の試合も終わって無いっつーのに勝ったつもりかい。ホント自信家だな、ありゃ」
「……でもその自信に見合った実力がある人ですから」
「そりゃそうだけどよー。勝負は時の運もあるぜ――お?」
【試合開始十分前です 選手及びオペレーターはフィールドへ入場してください】
アナウンスが控室へ流れる。
ブルーがそのアナウンスを聞いて不敵な笑みをミカへ向けた。
ミカも黙って頷いた。
お互いに言葉は既に要らず、黙ってベンチから二人とも腰を上げる。
控室の出口付近に青いリングが現れた。
フィールドへ向かうための移動用のリンク。
二人はそこへ足を踏み入れた――。
【ABAWORLD MEGALOPOLIS 特設スタジアム 観覧席】
特設スタジアムには既に大勢のアバたちが詰め掛けており、目に見える範囲だけではなく何個ものサーバーに渡って
観戦者たちが試合開始を今か今かと待ち兼ねていた。
階段状に座席が設置された観客席の他にボックス席や個室、
更には相撲などで良く見るマス席まで設置されておりそこにもアバたちが座り込んでいる。
本選のバトルフィールドは投票で決まることもあり、皆ウィンドウを出してどのマップに投票するかを話し合っていた。
ここにいるアバたちはこれから始まる本選第一試合【バトルアバ『チルチル・桜』VS バトルアバ『ミカ』】を見ようと
激しい抽選争いやチケット購入紛争を勝ち抜いてきた者たちだった。
本選前にあれだけチルチルが派手なパフォーマンスをぶち上げただけあって、このバトルはかなり注目度が高い。
その影響でリアルマネーの必要な観戦チケットも、ゲーム内マネーが必要なチケットも、そのどちらも高騰し、
ABAWORLD内で血を血で洗う紛争が起きていたがそれはまた別の話……。
そんな中、観客席の遥か上。関係者専用の観戦部屋とも言うべき場所があった。
本選参加バトルアバのスポンサーのために用意された特別御観覧室【鶴の間】。
前面に巨大なガラスが設置されたその部屋からは下方にあるバトルフィールドと観客席が一望出来る。
室内には座り心地の良さそうな椅子が幾つも設置され、更に椅子にはフィールドで戦うバトルアバの情報が
直ぐに分析出来るように幾つもの情報ウィンドウが備え付けられていた。
そしてその椅子にゆったりと腰を沈み込ませご満悦なご様子で下界を見下ろしている機械少女の姿があった。
「あぁ……こうやって下々の者たちを見下ろすのって堪らないわぁ……。素晴らしい……。
見なさい! 店長! あの肩を寄せ合って息も詰まりそうなアバたちの姿を!
この特別に用意された部屋で両の脚をしっかりと伸ばし、ゆったりと観戦出来るあたしたちとの差を!
これが上級と下級の差ってヤツよ! アッハハハハハッ!」
『m.moon』は狭苦しい観客席をその大きな青い二つの目で見つめながら恍惚とした口調で高笑いをした。
「いや……確かに至れり尽くせりな部屋やけど、そこまで言わんでも……」
隣で高笑いを続けているムーンを星に手足の生えたアバ『ラッキー★ボーイ』がかなり引き気味に見ていた。
「まぁミズキちゃんが喜ぶのも分かるわなー。ここまでVIP待遇やとワシも思わんかったからなぁ。
あー……この椅子の感触、仮想現実だって言うのにええわぁ……。現実で買ったら高いんやろな」
虎のぬいぐるみのようなアバ『トラさん』が背筋を伸ばして気持ち良さげに猫髭をピクピクさせる。
ラッキー★ボーイも同意するように頷いた。
「あぁ~……あの時、虎を無理矢理スポンサーに推しといて良かったわぁ……。こっちも誘ってくれて感謝しとるで」
「まぁお前も機材とかで協力してくれたからな……ワシ一人でここにおるのも寂しいし――
ここまで居心地ええと観戦中に寝てまいそうや」
「ダメだよ! お爺ちゃん! ミカ姉ちゃんの大事なバトルなんだから! しっかり見てないと!」
トラさんの横で椅子にお行儀よく座っている白い子虎のアバ『マキ』。
彼女は瞼が重くなり始めてウトウトし出しているトラさんへ注意をしてくる。
「わかっとるわ、マキちゃん。ちゃんと試合は見るから安心せい。ただ試合内容は安心出来んかもしれんが……」
そう言ってトラさんは正面……遥か向こう側のもう一つのスポンサー用観覧席【亀の間】へ視線を向ける。
そこにはこちらと同じようにスポンサーと思わしきアバたちが詰め掛けていた。
「まさかミカちゃんの相手のスポンサーが……【香坂製菓】とは……。一部上場企業やないけ……。
ウチみたいな木っ端中小食品工場が戦って大丈夫なんかいな……。後から色々言われたりせんやろか……」
不安そうな表情をしてその大きな目を震わせるトラさん。
「なーに今更ビビってんのよ、社長。寧ろチャンスじゃない。大企業を町工場がぶっ飛ばしたなんて言ったら話題性抜群よぉ?
更にガッポガッポ儲けられるわっ!」
目を輝かせながらムーンがそう言うがトラさんは未だ不安げな表情を浮かべたまま椅子に深く腰を沈み込ませた。
「ワシはガッポガッポ儲けなくても平穏に社員養っていければええんやけどなぁ……」
そんな時、フィールドを見渡していたマキが何かを見つけたように声を上げた。
「――あっ! ブルー兄ちゃんだ!」
「へ? どこや?」
「ほら! あそこ! ミカ姉ちゃんより先に出てきたみたい!」
「ど、どこや……? この広さは老眼には辛いで」
フィールドを指差すマキ。トラさんが目を皿のようにして下方を見渡していたが中々見つけられない。
そんな彼にムーンが声を掛ける。
「横のウィンドウを操作すれば拡大出来るわよ、社長――あたしが作ってやったオペ用のアクセをちゃんと付けてるじゃない。
あんなに嫌がってたくせに……あの天邪鬼め……」
ムーンが椅子に備え付けられたウィンドウを操作してフィールド内を拡大する。
オペレータールームで偉そうに踏ん反り返っているブルーの姿がそこに映った。
いつの間にか赤いキャップを頭に被っており、更に黒いサングラスをピシッと決めている。
まるで本物のサポートスタッフを思わせる様相であり、様になっていた。
ムーンの言葉に反応してラッキー★ボーイも手元のウィンドウを操作し、ブルーの姿を拡大して視認する。
何時もと変わらぬその姿に安堵とも呆れとも言える声を漏らした。
「ぶるーはホンマ何時も通りって感じやなぁ。あっちは心配無さそうや。なんであいつ素人の癖にあんな余裕あるんや……?」
「この土壇場でも普段通りな辺り、あの青髪人形、無駄に肝っ玉座ってるわね……呆れを通り越して感心するわぁ……。
あたしだったら吐くわよ、この大観衆に囲まれたら――あら? どうやら来たわね……ウチの"司令官"様が……」
――ワァァァァアアァ!!
遥か上にある筈の【鶴の間】まで届く大歓声がスタジアム内に響く。
どうやらバトルアバたちがフィールドへと現れたようだ。
「ええと……――あっ! ミカ姉ちゃんだ! あはっ! いたよ! いた!」
その姿を見つけマキの嬉しそうな声を上げ、フィールド内を指差す。
片岡ハムの面々も皆彼女の指差す方向へその視線を向けた――。
【ABAWORLD MEGALOPOLIS 特設スタジアム バトルフィールド】
耳を劈くような大歓声の中、ミカはフィールドへと進んでいた。
"まだ"無機質な青色のフィールド。
幾つものスポットライトが煌き、真昼のように明るい。
更にその周囲にはとても視界に収めきれないほどの数のアバたちが詰め掛けている。
数百……いや数千を超えるであろうアバたちによって生み出される大歓声。
この大歓声の中、バトルをすると試合進行にまで悪影響がありそうだったが、その心配は無い。
バトルが始まればこの歓声は完全にシャットアウトされ届かなくなる。
バトルアバたちが試合に集中するための配慮。
だが逆を言えば声援も届かない。
完全に独りになるという事だ。
≪――よぉ、司令官様≫
この数か月間ですっかり聞き慣れた声が通信越しに聞こえてくる。
ミカは本来する必要は無いが何となく右耳に手を当てて通信へ応じた。
「こっち見えてますか?」
≪あぁ。お前のスカートがパンツに引っ掛かってめくれてるのがしっかり、な≫
「……冗談言ってる場合ですか――……冗談ですよね?」
不安になり思わず首を回して自身の背後を確かめるようとする。
中々後ろは見えず、そのせいでクルクルと身体ごと回ってしまった。
≪自分の尻尾追い掛ける犬じゃねーんだからさぁ……≫
「クククッ……」
含みのある笑い声が聞こえてくる。
ミカは動きを止めて声のしてきた方を見た。
いつの間にかチルチル・桜がフィールドへ現れていた。
桜色の髪を軽く靡かせ、口元に右手を当てながら揶揄うようにミカへ話し掛けてくる。
「お主も珍妙な事をしとるのう。必勝祈願の舞いか? それは……?」
少々小馬鹿にするような口調で"吸血姫"はそう言った。
「ダンスしてた訳じゃ――」
ミカはムッとしながら反論するために口を開こうとしたが途中であることに気が付いて言葉を止めた。
あれほど聞こえていた大歓声が聞こえない。
耳障りなほど煩かった状態から一転して怖いくらいにフィールド内は静まり返り、無音だった。
自分とチルチルだけを置いて世界が壊れてしまった。
そんな気さえしてくるほどの静けさ。
思わず息を呑み、仮想現実だというのに喉が渇くようなヒリつく緊張感が身体を襲う。
少し動揺するミカと対照的にチルチルは楽し気に右腕を上げて背筋を伸ばしていた。
まるでこの瞬間を待っていたかのように、目を瞑り上機嫌に鼻歌を鳴らす。
「ふんふ~ん♪ やっぱりこの瞬間はたまらんのう。喧騒が全て消え……闘争の場には我ら二人……。今からが我ら不死者の時間じゃ!」
ミカは改めてチルチルへ向き直ると身構える。
彼も腰に左手を置き、挑発的な視線を向けてきた。
『投票によりバトルフィールドが選出されました 【聳え立つ摩天楼たちの夜】 が マップ配置されます……』
見つめ合う二人を余所にアナウンスがフィールド内へ流れ周囲の光景が一変していく。
周囲が急に暗くなり、それまでの真昼のような明るさから一気に星が微かに見えるくらいの夜が広がっていった。
――ゴゴゴ……。
あっと言う間に様変わりしたフィールド。
オペレータールームのブルーも見たのか通信越しにダルそうな声を漏らす。
≪まためんどくせーマップが選出されちまったな。このマップ久しぶりに見たぞ≫
「これは……今までに無い感じの場所ですね」
ミカは身を乗り出すようにして恐る恐る"眼下"を覗き込んだ。
視界の先にビルとビルの間の真っ黒な闇が広がり、地面が見えないほどの高さを感じる。
先程まで平地だった筈のこの場所は幾つもの摩天楼が立ち並び、まるで大都市の一画のように様変わりしていた。
摩天楼たちはその窓一つ一つが煌々と輝き夜空を照らしている。
ミカはその内の一つ。一際大きい建物の屋上にいた。
下方からビル風が吹き寄せ、思わず軍帽を押さえる。少しばかり落下への恐怖を感じて身体を引っ込めて後ずさった。
≪落ちんなよ? 流石に落下で敗退とかオレでも泣くぞ≫
「……気を付けます」
ブルーからの注意に頷きつつ、ミカは改めて周囲を観察する。
現実のビル群と違ってこのフィールドの建物たちはかなり建物同士が近い。
バトルアバの運動能力なら問題無くビルとビルの間を飛び交う事が出来るようになっている。
つまり今回の地面はこのビルの屋上たちという事だ。
「これは粋な戦場じゃのう! まさに夜を歩く我にふさわしい……! やはり吸血鬼は夜が似合うのじゃ!」
チルチルの嬉しそうな声が少し遠くから聞こえてくる。
そちらを見ると彼の姿が向かい側のビルの屋上に見えた。
屋上の手すりに腰掛け足をプラプラとさせながらこちらに笑い掛けている。
彼はクルっと身を翻し、手すりから背後の屋上へと飛び降りた。
そして相変わらず芝居掛かった口調で喋り始める。
「さぁ! 子犬よ! これ以上皆の衆を持たせるのもつまらん……我らの闘争を始めようではないか!
我には時間が有り余っているが定命のお主には時間が無いじゃろうしな!」
【EXTEND READY?】
彼の言葉と同時にミカの眼前にエクステンドを促すウィンドウが現れる。
【OK】と書かれたボタンがチカチカと点灯していた。
ミカはそのボタンに手を置き、身構える。
あちらもこちらと同じようにウィンドウへその細い指をそっと置いた。
「――エクステンド!」「エクステンドじゃ!」
二人が同時に叫んだ。
【BATTLE ABA MIKA EXTEND】
【BATTLE ABA CHIL CHIL EXTEND】
『タクティカルグローブ、セット――タクティカルイヤー、セット――タクティカルシッポ、セット――』
ミカの全身が光に包まれ、その光が屋上全体を照らした。
灰色の犬耳が軍帽を勢い良く突き破り、ピンと空へ向かって立つ。
スカートからこれまた灰色の尻尾がポンと突き出し、左右にパタパタと揺れる。
自らの意思を誇示するかのように力強く握った両手には茶色のグローブを纏った。
「さぁさぁ我が眷属たちよ、集まるがよい! 血の饗宴の時間じゃぁ!」
チルチルの足元……その影から大量の蝙蝠が現れ彼の身体を包む。
「今宵の獲物は生きが良いのじゃ! 眷属たちにも馳走してやるぞ! ヴぁんぱいあー! めいくあぁぁっぷ!」
蝙蝠たちがパッと彼の身体から離れる。
桜色の髪から二つの黒い蝙蝠の羽が生えていた。
その羽は彼の感情に従うようにパタパタと世話しなく動く。
更にいつの間にか右手にルージュを持っており、それをサっと自らの唇と頬へ走らせる。
白い肌に桜色が描かれ薄い朱に染まった。
さりげないおしゃれのようにも見えるその動作。
しかしミカはその意味を知っており、戦慄していた。
(あ、あれは……! 死化粧……!? な、なんて人なんだ……! そこまで覚悟を決めているとは……)
戦場において死体となった時、土気色の顔を晒すという醜態を避けるために行う化粧。
それがチルチルの行った化粧の意味だった。
「こ、ここに来て戦化粧とは恐れ入りました……! 不死者の癖に死してなお桜色とは……やりますね、チルチルさん……!」
≪……たまにお前が何言ってるかマジで分かんねえ時あるわ≫
ワナワナと震えながらもチルチルを賞賛するミカ。
それと対照的にブルーは通信越しに呆れていた。
チルチルは口紅を屋上から放り捨てるとその細い指で唇を妖艶に撫でる。
艶やかな動きで見ているミカも心の奥がざわつくような感覚に襲われた。
二人のバトルアバがエクステンドを終え、全ての準備が完了する。
そして――バトル開始を告げるアナウンスが鳴り響いた。
『EXTEND OK BATTLE――START!』
アナウンスと同時にチルチルが自分のいるビルから飛び出し、ミカの方へと飛び掛かってくる。
「征くぞぉ! 子犬ぅ!」
右手を構えると彼は叫んだ。
「来るのじゃ! 我が魂! 【ヴァンパイア・ブレード】!」
右手に小さい蝙蝠たちが集まりそれが剣を形作る。
前にも彼が呼び出していた剣と同じデザインの細身のレイピア。
その針のような剣先をミカへと向け、突き立てようとしてくる。
「さぁ! 我の獲物でその細い肢体を貫いてやるのじゃ! 覚悟するが良い!」
近接特化タイプだけその動きは素早くこのままでは回避することも出来ずにその先端に貫かれるのは間違いなかった。
「申し訳ないですけど……! 串刺しはご遠慮願います! 武装召喚! 防御軍刀『無銘』!」
ミカも対抗して武器を呼び出す。右手に鞘へ納まったままの軍刀『無銘』を現れた。
抜刀する暇は無いと判断し、鞘でチルチルの刺突を受け止める。
――チィンッ!!
鞘の側面に剣先が触れ、レイピアが衝撃で大きくたわむ。
チルチルは直ぐに剣を引くと一歩下がり、自身の顔の前でレイピアを構え直した。
「初撃は良く受けたものじゃ! だがこの程度では終わらんぞ!」
素早くチルチルは二撃目を放ってくる。
今度はこちらの首元を狙って剣先が迫った。
「くっ……!」
頭を左に動かしてギリギリの所でその攻撃を回避する。
首に巻いたスカーフが切り裂かれ、赤い布切れが舞った。
――ヒュオッ。
何とか回避に成功したのも束の間、直ぐに次の刺突が飛んでくる。
ミカはそれを鞘で受け止めまたも凌ぐ。
ミカが必死の防御を続けているとチルチルが攻撃の手を止めずに話し掛けてきた。
「子犬よぉ! そう言えばお主、姉を探しているらしいな! 確かに我は知っておるぞ! "姫"の事をなぁ!」
「ね、姉さんを!?」
(わ、忘れてた……! でもなんでこんな時にそのことを……!?)
確かに写真撮影の時に彼は行方不明の姉の事を知っているような口ぶりをしていた。
あの時はごたごたしていてすっかり忘れていたが……この場面でそれを自分から切り出すチルチルにミカは困惑した。
「教えて欲しいかぁ! 自らの姉の事を! この世界で何をしていたのかを!!」
「知っているなら教えてください……! 姉は今、行方が分からないんです! 探しているんです!」
ミカがチルチルの剣を歯を食い縛りながら受け止めつつ、尋ねる。
彼は意地悪そうな笑みを浮かべ、剣を奮ってそれに答えた。
「クククッ……! 教えてやらなーい、のじゃ!」
「じゃあ――なんで……今話したんだよ! 思わせぶりな態度しやがって!!」
必死の攻防の中で揶揄われミカも語気が荒くなる。
その様子を見てチルチルは楽しそうに微笑んだ。
「我は餌を強請るだけの者に興味など無いからのう! 答えを知りたければ――」
チルチルが一際強く剣を奮う。ミカの頬を切っ先が通り過ぎていき、傷を付けた。
「我を打倒し! 無理矢理にでも押し倒して問うんじゃな!」
「この(ピー)蝙蝠ヤロー!! だったら今話す必要無いじゃないかこらー!!」
≪お前らバトル楽しんでんなー≫
ミカとチルチルの良く分からない舌戦にブルーが他人事のような感想を漏らした。
(畜生……! あんな無駄口を叩いている余裕があるのに……。こっちは刀を抜く隙が無いっ……!!)
細身のレイピア故の軽さで繰り出される連続攻撃。
こちらに武器を使わせる暇を与えず、攻め立ててくる。
彼とスパーリングした時と同じように時折混ぜられるフェイントのせいで攻撃のパターンを読むことさえ出来なかった。
必死にチルチルの剣撃を防ぐミカにブルーが通信で思い出したように話し掛けてくる。
≪――あっ。ミカ! アレだアレ! 刀を手で止めるヤツ! アレで蝙蝠野郎の動きを止めろ!≫
「――無茶苦茶言わないでください! レイピア相手に出来る訳ないじゃないですか!!」
ブルーが言っているのは真剣白刃取りの事だと分かったがあれは飽くまで上段から振り被る刀に対し行う防御術。
しかも幅広の日本刀だから掌で押さえられるのであって、細身の刺突剣相手にやってもそのまま突き通されるのがオチだ。
(そう言えば……昔、時代劇を配信で見てる時に……)
不意にミカの脳内にある日の記憶が思い起こされる。
――ねえさん~! しらはどり! しらはどりだよ! くぅ~カッコいい!!――
――ソウゴ、あれは紛い物だ。本来の柳生の技はもっと実戦的だぞ――
――へ? どんなの?――
――この木刀を持って軽く私に打ち込んでみろ――
――どこから出したのそれ……? まぁいいや……こう? うわっ!?――
――見たか? これが正しい柳生の技だ。元は柔術に流れが……――
まだ姉の寧々香と距離を置いていない頃。
姉弟で時代劇を見ていた時に姉から見せて貰ったあの技。
(――……そうだ……! 姉さんの言っていた白刃取りの本来の使い方なら何とかなるかも……!?)
だがそれをやるためには自ら死地へ踏み込む必要がある。
傷付くことを恐れていては自分の間合いへと相手を入れる事が出来ない。
(元々……無傷で勝てる相手じゃない……! やるしかない……! 俺に力を……! 柳生新陰流!)
「死中に――活を求めん!」
ミカは迫る剣先に対し、回避と防御を捨て敢えて左肩を差し出した。
「なぬっ!?」
流石のチルチルもその行動には驚いたのかレイピアを引こうとする。
しかし間に合わず剣先がミカの左肩を貫いた。
「ぐっ!」
衝撃が左肩に伝わり、視界にヘルスへのダメージが表示される。それでもミカは構わず前へと踏み出す。
(切らせて――取る!)
レイピアが深々と刺さった事でチルチルの素早い剣撃が否応なしに遅くなり、ミカが間合いを詰めるための隙が生まれた。
「そこだぁっ! 柳生新陰流! 無刀取りぃ!」
気合の声と共にミカは一気に左手をチルチルの手元へと伸ばす。
そのまま彼の右手をグローブで掴み、力強く握り込んだ。
「どりゃあああああ!!」
気合の雄たけびと共にその手を思いっ切り引っ張り自身の方へと引き寄せる。
そして――。
ミカは自分の頭を身体ごと一気に前へ出し、引き寄せたチルチルの頭へ衝突させた。
――ゴンッ!
「ぎゃいんっ!!」
「ぬぎゃっ!?」
頭部同士が激突した両者は衝撃で悲鳴を上げる。
あまりの衝撃に二人は弾かれたように屋上の床を転がった。
「わ、我の頭が割れるぅ!! 貴重な脳細胞が死ぬぅ!!」
流石のチルチルもレイピアを保持していられずに手放し、喚き散らしながら床で両足をバタつかせて転がっていた。
≪見事な頭突きだこと……――ミカ! とにかくチャンスだ! 今の内に距離を取れ!≫
「は……はい……」
ブルーの声に何とか応じて立ち上がったミカは直ぐに左手にある建物へ向かってジャンプした。
二メートルほどの距離だったが、バトルアバの運動能力のお陰で問題無く、ビルとビルの間を飛び越える。
しっかりとブーツを踏み締めて着地し、左手で身体を支えた。
≪言い出したオレが言うのも何だけどさ……白刃取りってそんな肉切骨断な技だったっけ……。
大体、何時からそんな珍妙な謎体術身に着けてたんだよ≫
左肩にレイピアの刺さった痛々しい状態のミカを見て、ブルーが通信でそう言ってくる。
「む、昔……姉さんに教えてもらいました……。ダメージは受けましたが、これで何とか一矢報いましたね……」
揺れる頭を押さえながらもミカは自身に刺さったレイピアを左肩から一気に引き抜く。それをビルの屋上から放り捨てた。
レイピアは落下しながらビルとビルの間の漆黒の闇に消えていく。
これで回収は"不可能"な筈だ。
≪ホント、お前ら蛮族姉弟だな……。しかしこれで距離は取れた。やっとこっちの土俵で戦える――召喚、行けるぜ≫
ミカの視界にパワーリソースの貯蓄を知らせる通知が現れる。
ブルーの言葉に応じ、ミカは右手を夜空へ向かって掲げた。
「パワーリソース投入! 召喚! 十九式蒸機軍用犬【浅間】!」
――オォォォォン……!!!!
夜空に遠吠えが響き渡り、ミカの背後から機械仕掛けの魔法陣が現れた。
そこから電流混じりの水蒸気が一気に噴き出し身体を包む。
水蒸気が晴れるのと同時に鋼鉄の機械軍犬『浅間』がその姿を現した。
薄暗い周囲をその橙色のカメラアイの発光が照らす。
「浅間! 行くぞ!」
『バゥッ!』
ミカは浅間の背中に飛び乗りながら声を掛ける。
浅間も一度短く吠えて応じた。
騎乗状態へと移行したミカは軍刀を腰のホルダーへ収める。
代わりに歩兵銃を呼び出した。
「――武装召喚! 【三式六号歩兵銃】!」
ミカの手に木製の長い銃が握り込まれる。
まだ完全にダメージが抜けていない左手を庇いつつ、右手で銃を構えた。
「チルチルさんは……いた!」
いつの間にか移動したらしく二つほど先のビルの屋上に彼は立っていた。
不敵な笑みを口元に浮かべ、腕を組ながらミカと浅間を見つめている。
「我の愛刀を無下にしおって……。その狙いは良しとしておくぞ! だぁが!
甘いのじゃ! 下僕たちよ! 我の手元に帰参せよ!」
チルチルが右手を前へと出す。
すると彼の背後で何匹もの蝙蝠たちが羽ばたき、彼の身体へ集り始める。
「――あっ! こ、蝙蝠が剣を!?」
良く見ると蝙蝠たちがミカが捨てた筈の剣を牙で噛んで持ち上げている。
恐らく落下した剣をここまで運んできたのだろう。
彼らは必死に羽を羽ばたかせ、主の前へと剣を運んでいた。
≪ちっ。あいつの武器はアレのみってだけあって、リカバリー策がありやがったか。
あのままロストしてくれりゃ楽だったのによぉ≫
通信越しにブルーの舌打ちが聞こえてくる。
「そんな簡単には行きませんよね……やっぱり」
事前の調査でチルチルの武器があのレイピアオンリーというのは二人で調べていた。
だからこそ無刀取りで奪い、破壊を狙ったのだったが……。
チルチルは蝙蝠たちの持ってきた剣を受け取り、下僕たちを労う様にその手で蝙蝠たちを軽く撫でる。
撫でられた蝙蝠たちは嬉しそうな顔をして再び闇へと戻っていった。
「愛い下僕たちじゃ……。さぁここからが本番じゃぞ! ぱわーりそーす投入! 【影月契約】!」
チルチルがレイピアの切っ先を天へと掲げる。
それと同時に軽い振動がフィールド全体を揺らし、ビル上にいるミカと浅間も揺らした。
――パキ……パキパキ……。
奇妙な音が頭上から聞こえてくる。ミカは浅間の背中に縋りつきながら顔を上げる。
「そ、空が割れたぁ!?」
今まで星くらいしか見えなかった黒い空に亀裂のようなモノが走っていた。
更にそこから弾き出されるように巨大な月が空間を崩壊させながらフィールドに現れる。
不気味なほどに輝く満月であり、煌々と月光を放ち、辺りを黄色く照らす。
「月は満ち、時は来たのじゃ! ここからは日陰に生きる者らしく、我も影となって生きようぞ!
ヴぁんぱいあー! うぇいくあっぷ!」
掛け声とチルチルは頭上の月へ向かって、跳躍する。
そのままクルっと一回転し満月をバックに逆さまの体勢となったまま、滞空し始めた。
チルチルの背から大量の蝙蝠が湧き出し、彼の周囲を漂う。
「ハハハッ! 演目はこれからじゃ! 子犬ぅ! 夜はまだ始まったばかりじゃからのう……!」
頭上から聞こえる吸血姫『チルチル・桜』の高笑いを聞いて、ミカは歩兵銃をしっかりと構える。
そして頭上の敵を穿つためにそのアイアンサイトを覗き込んだ……――。
【東京都 赤羽 デルフォニウム本社 社長室】
ミカとチルチルの戦いが佳境に入る少し前――。
壁際には社長用の木机と椅子が一つずつ。
部屋の中央には応接用のテーブルとソファーが一組。
とても大企業の社長室とは思えないほど簡素なその部屋。
そんな室内に人影が四つあった。
「まさか……本選出ちゃうとはねぇ」
椅子に腰かけながら賞賛するような声を漏らしたのは現デルフォニウム社長『向日田理人』だった。
中年に入りかけたくらいの男性である彼は椅子に背をゆっくりと持たれ、嘆息していた。
彼が見つめる先には壁へ掛けられた巨大モニターがある。
その画面には犬耳の生えた軍服少女と蝙蝠の羽が頭から生えた少女の姿が映っていた。
丁度、ミカがチルチルの剣を鞘で受け止めている場面であり、激しい金属音が鳴り響いている。
「凄いよねぇ。ホントにここまで勝ち上がっちゃうんだもん。血は争えないってヤツかな?」
「……正直、私も予想外でした」
応接用のソファーで長髪の女性社員が同意するように向日田の言葉に頷く。
胸元の社員証には『片瀬椿』と書かれている。
明らかに驚きを隠せないと言った様子でツバキは画面に映るミカの姿を見つめていた。
「流石、寧々香先輩の弟さんって事ですかねぇ~」
ツバキの前に座ったポニーテールの女性社員がテーブルの上のスナック菓子をつまみながら、妙に間延びした口調でそう言った。
胸元には『白沢柳』と書かれた社員証を付けている。
「でもここまでですかね~あの吸血鬼さん相手だとぉ~やっぱりキツイですよねぇ~実力的にぃ~
――イバラちゃんはどう思いますぅ~?」
ヤナギは隣に座る最後の一人……ウェーブヘアーの女性社員へ話し掛けた。
「……"ちゃん"付けは止めてください、柳先輩」
無愛想なしかめっ面で鋭い目つきをしたそのイバラちゃんと呼ばれた社員。
胸には『茨城茜』と書かれた社員証を付けている。
彼女は二人のバトルアバの戦いが行われているモニターをその眼力で睨め付けてから自らの分析を口に出した。
「バトルアバ『チルチル・桜』の圧勝でしょう。技術、経験、戦闘能力……
全てを加味したとしてもあのコネ犬の勝てる筋はありません」
自信満々にイバラはそう答える。
その表情には自分の考えに絶対の自信がある事が窺えた。
「え~? わかんないよぉ~? それこそ追い詰めたらアレ目覚めちゃうかもしれないし~」
ヤナギの目覚めるという言葉を聞いて室内の空気が張り詰めた。
それまでの和やかな雰囲気から一転して部屋の中に重苦しい空気が流れる。
お互いに目配せしあって気まずい空気が流れる。発言をしたヤナギもしまったという顔をしていた。
「……もしソウゴ様がこのタイミングで"変身"を行い……しかもご本人にも制御不可の場合は私たち
――【実働部隊】が止めるしか無いでしょう。そのために私たち【獣素子】搭載済みバトルアバが三人も控えているのですから」
重苦しい空気の中、ツバキが覚悟を決めたように目を閉じながら口を開いた。
「やっぱりそうなっちゃいますぅ~? い、生きて帰れますかね~あたしたち……ひぃん~」
涙目で狼狽えるヤナギ。イバラも大きな溜息を吐くと腕を組んで額に皺を寄せた。
「はぁ……板寺先輩も私たちに黙ってとんでもない"爆弾"を置いていきましたからね――向日田社長……」
「……何だい?」
「若しもの場合はメガロポリスサーバー破棄の可能性も考慮して……良いですよね?」
イバラの言葉を聞いて向日田は明らかに嫌そうな表情をする。
それにも構わず彼女は続けた。
「私たちも純正の"獣士"相手にはサーバーへの被害を抑えられる自信がありません。正直勝てるかどうか自体……怪しいですけど」
先程までの自信たっぷりの様子と違ってイバラも自信無さげな表情を浮かべている。
向日田はげんなりとしながら椅子に深く身体を沈み込ませた。
「二つ返事で許可出したくは無いけど――しょうがないだろうねぇ……」
向日田は自らの電子結晶を取り出し、自虐的な言葉を紡ぎながら操作し始める。
「あぁ~早く起きてくれないかなぁ、ウチの"眠り姫"くん。僕はボンボンの二代目だから責任あんまり負いたくないんだよ……」
電子結晶にはデルフォニウム社員たちの事などいざ知らずと言った様子で、
未だ回復ポッドの中でこんこんと眠り続ける板寺寧々香の姿が映っていた……――。
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