●前回のおさらい●
龍斗と歩美の2人は、雨が降って来たので龍斗の自宅に入る事に成った。
そこで龍斗の部屋に上がり。
一番見付かって欲しくなかったアルバムを、歩美に発見される。
そのアルバムの内容とは……
実はそのアルバムの正体は、俺の自家製『井上歩美の写真集』なんだ。
故に、アイツと出逢った当時から、今現在までの中学生までの写真が網羅されている。
これを本人に見られるのは、やっぱり死ぬ程恥ずかしい。
その反応を見ようと顔を上げたら、そこには、予想に反する事なく歩美の冷やかな目があった。
「…………変態」
ギャボ~~~!!本日2回目の変態扱い。
言うとは思っていたけど、直接的に何度も言われると、流石に、これは、かなり傷付く。
「しょ、しょうがないだろ~。俺、小さい頃から、ず~と歩美の事が好きなんだから」
「…………」
沈黙されてる。
なんか言ってくれ。
ハハッ……このまま放置されたら、確実に、死んでしまうな俺。
「あぁ、そうですよ。どうせ俺はキモイですよ。お前に会った時から、ずぅ~と歩美のスト-カーですよ……だから見るなって言ったのによぉ~」
「うん。本当にキモイよ、龍斗。……でも、これって、全部自分で撮ったの?」
アッサリ肯定された上に、犯罪者でも見る様な目。
―――けどオマエなぁ、少しは否定しろよな。
大体にして忘れてないか?
そんなストーカー野郎が、お前の正式な彼氏なんだぞ。
オマエは、それでも良いのか?
「まっ、まぁ、大半はな。人から貰ったのも在るけど、貰い物は写りがあんまり良く無いし。元の被写体が悪いのか、表情もイマイチだから、せめてプロ並みの俺が、出来るだけ自分で撮ったな」
「って、誰が元が悪いのよ!!でもなんで、又そんなことしてたのよ?」
「ハァ~~~、ホントお前って、つくづく幸せもんだな」
「なんでそうなるのよ?」
「いや、もういい」
「なによ、ちゃんと言いなさいよ」
「ハァ~、いいか。これは、俺が厳選して、お前の良い表情が撮れた時だけの奴を残してあるアルバムなんだよ。……つまりはだ。芸能人にする為のスチ-ル撮影とでも思ってくれば良いよ」
余りに正直に言い過ぎた。
これじゃあ、恩着せがましいにも程がある。
しかも、こそこそと苦労していた事も、ばれてしまっている。
あんまり人に苦労してる所を見せたく無かったのに……まぁけど、そのお陰で、コイツの夢を叶えてやれたんだから、そこは良しとするか。
「ねぇ。それにしたら、制服とか、水着とか、体操着とか、露出多くない?」
写真を指差しながら、こちらを向いて指摘された。
コイツって、イチイチ鋭いな……
普通そこは、なにも考えずに、嬉しさの余り感動する所だろ。
あぁそうさ。
その通りさ。
オマエの言う通り、半分は俺の趣味さ!!
―――そして俺の心が、ガラガラと音を立てて壊れて行く。
「クッ……あぁそうさ、多いさ。悪かったな。俺だって、好きな女のチョイエロ写真が欲しいいんです……でも、下着とか、全裸の写真とかは無いんだから、別にいいだろ」
「そんなの見たいんだ?」
「見たいさ、あぁ見たいさ。歩美の下着も、裸も全部見たいさ!!」
―――もうやけくそだ。
どうせ、もう俺は、一生涯、コイツの尻に敷かれる事は決定事項さ。
だから、こうなったら1%の確率でも、それを見れる可能に賭けてやるのさ。
こんな事しても、所詮は1%なのに……
とんだアホアホ探検隊か、夢見がちなアホ童貞だな、こりゃあ。
クールなイメージの俺は、一体どこに行ってしまったのだろうか?
帰って来いよ~、クールな俺!!
「いいよ……見せてあげても」
赤くなった顔を下に向けながら、小さな声で彼女は言った。
「へっ?」
「だから、いいよって言ってんの……こんな事を女に何回も言わせるな!!」
何だか知らないが、怒られた。
「おっ、おい、それってマジで言ってんのか?」
「冗談で、こんな事が言える訳ないでしょ……ばかっ!!」
「えっ……えぇ~と……あの……じゃあ、お願いします」
間抜けな解答を、真顔で言ってしまう。
こんな事を言われた女の子って、どんな心境なんだろう?
所詮14年間チェリ-。
気の聞いたセリフも、雰囲気も作れはしない。
自分の不甲斐無さや経験値の低さに、情けなくなって頭を垂れる。
「ごっ、ごめんな……俺、気の利いた事が言えないみたいだな。呆れただろ」
「うぅん。別に、呆れてなんかいないよ。それに、そんなの最初から期待してない」
「……」
「龍斗は、龍斗で良いじゃない。馬鹿で、イジワルで、カッコつけで、喧嘩が強くて、優しくて、一番、私を好きでいてくれる。そんな龍斗が、私は大好きなんだから」
うなだれる俺を、何も言わずに彼女は背中から、抱き締めてくれた。
「歩美……」
「……大好きだよ、龍斗……」
彼女の両手に手を添えて、後ろ向きにそっとキスをした。
歩美の舌が、俺の口に侵入して来たので、振り向いて応える。
1分程のキスだったのだろうが、このまま時間が止まって欲しいぐらい狂おしくも、愛おしい時間だった。
俺は呼吸が続く限り、激しく歩美の唇を求めた。
***
この日、初めて歩美と結ばれた。
しかも、避妊もせずに、彼女の体内に射精してしまった。
勿論、俺は後悔なんかしていないし、そんな事を思う筈もない。
けど、それは、俺の単なるエゴ。
彼女の立場を考えたら、そんな事をすべきでは無かったのかも知れない。
でも、そうしたのには、訳が無い訳でもない。
どうやら彼女の方も、それを望んでいてくれた様だからだ。
その証拠に歩美は、俺が絶頂に達した時、両足を、俺の腰から離そうとはしなかった。
気になって、その辺の事情を歩美に聞いてみたが、彼女は微笑むだけで何も言わなかった。
だが、もし……もしもの話だが。
この行為のせいで、彼女の体に新しい生命が誕生してしまったら、歩美は一体どう思うんだろうか?
手放しで喜んでくれるのだろうか?
正直言って、わからない。
そう考えると。
矢張り俺は、無責任な事をしてしまったのかも知れない。
俺は、彼女の生活や、夢を奪ったのかも知れない。
そんな言葉が、頭をよぎるたびに恐ろしくて仕方ない。
―――俺は最低だ。
こんなものは、自分の良い様に解釈しているだけの馬鹿げた自己嫌悪だ。
そんな罪悪感に浸っていた俺を、歩美は背中から抱き寄せてくれて、小さくこう言ってくれた。
「私と、龍斗の子供……出来てると……良いね」
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