【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
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私の誕生日なのに……なんで気を使わなきゃいけないの?

公開日時: 2021年9月21日(火) 00:20
文字数:2,911

●前回のおさらい●


歩美ちゃんの誕生日開始でございます(笑)

 2004年05月01日 PM07:12 井上邸



「うぅ~、なんなのよ、もぅ」


私の愚痴は絶え間なく、口から吐き出されていく。



かと言って、特別なにか嫌な事が有った訳ではないんだけど。



あの後、直ぐに、龍斗のお父さんと、佐伯さんと繭ちゃんが誕生日をお祝いしに来てくれたのは良いんだけど。



何故か、なんか納得いかない状況なのよ。



龍斗のお父さんと、佐伯さんたら。

私にプレゼントを持って来てくれたまでは、問題なかったんだけど、その後が最悪。


久しぶりにウチのお母さんを見るや否や、全てをそっちのけにして口説いてるのよ。

しかも、女性を口説くではなく『芸能人にならないか?』って方向の話で。


確かに、言うまでもなく、母は可愛いけど。

そこまでしなくても……って、ぐらい執拗に迫ってるのよ。


まぁ、その程度だったら良いんだけど。

更に、そこにお父さんが帰って来たから、最悪の上塗り。


以前に言った通りお父さんは、人一倍のヤキモチ焼き。

そんな状況が面白い筈もなく『ブスッ』っとした顔をして、早くも1人でビールを飲み始めてる。



―――お父さん自棄酒はダメだよ、あんまり強くないんだから……なんて言ったら、どっちが奥さんか解らないけど。

お父さんって、酔っ払うと、直ぐ本音を言い出すから、ちょっと空気的にもねぇ。


それで、その状況下に置いて、困ったちゃんがもう1人。


注目されるのが当たり前で、無視されるのが大嫌いな繭ちゃんは……言うまでもなく大不愉快。


不機嫌顔で可愛い顔が……



―――ってか、もぅ私にどうしろって言うのよ!!


最後の望みは、あの馬鹿が一分一秒でも早く来る事。

こんな悲惨な状態、アイツと2人でエスケープしてやるぅぅぅ~~~。


……なんて言って逃げたいんだけど、そうもいかない。


私の誕生日程度の事で、ワザワザ忙しい時間を空けて来て貰ってるのに放って置く訳にもいかず。

この状況下にあっても、何かしろの打開策を考えなければいけない。


なんで、自分の誕生日に、こんな事考えなきゃいけないのよ!!


怒りは収まらないけど……まぁ仕方ないよね。


お母さんが可愛い過ぎるのが元の原因だし。



なにより自分の親だしね。



はぁ~~~、可愛い親を持つと、娘が苦労するよ。



っとまぁ考えも纏まった事だし、取り敢えず、繭ちゃんからなんとかしよ。




「ま~ゆちゃん、今日は有難う」


作り笑顔が、ド下手な私だけど。

精一杯の作り笑顔で、不機嫌な繭ちゃんに声を掛ける。



「あっ、うん」


反応はイマイチ。


そりゃそうだよね。


現役アイドルを放ったらかして。

困ったオジ様達は、まだお母さんを口説いてるんだから。



でも、救いが有るとすれば、彼女も作り笑顔とは言え、笑ってくれた事。


これが無かったら終わってるよ。



「それにしても、困ったもんだよね。おじさん達、ウチのお母さんが幾つだと思ってるんだろ?」


多分、繭ちゃんは、この話には興味が有る筈だ。


女の子だったら、ウチのお母さんの『若さの秘訣』なんて物を知りたい筈だからね。



とは言っても、ホントは何も無いんだけど……


あの人の若さは、天然だから。



「えっ?あゆちゃんのお母さんって幾つ?まだ若いよね」

「それがね。私も、いつもお母さんの体って、どうなってるの?って、不思議に思うんだけど……お母さん、あれでも39歳なのよ」

「39!!」


あぁ~、ヤッパリ、こういう反応だよね。


誰が、どう見て……あぁもぅ、これは言い飽きたから辞めよ。


自分が虚しくなる。



「見えないでしょ」

「うん。全然見えない」

「それでね。あの人、未だにスッピンで街に平気で行ったりするのよ。39なのにさ……有り得ないでしょ。娘としては、ちょっとは、自分の年齢考えろって思う訳よ」


私は、そんなお母さんが大好きなんだけど。

此処は、お母さんの悪口の1つも言わないと、彼女の面子が立たない場面。


特に繭ちゃんは、その辺に関しては、凄く面倒臭い子だから上手くフォローしとかなきゃね。



「自分のお母さんなのに、あゆちゃんてば酷ぉ~い」


語尾が延びた事に、ほんの少しだけ安心した。


この子は、普段こんな感じだからね。



「良いんだよ。少し自覚して貰わないとね」

「でも、あゆちゃん。おば様、なんであんなに若いんだろぉ~?」

「お父さんの愛を一身に浴びてるから?とか」


此処は、父に聞こえる様に言った。


誰が何と言っても『お母さんは、お父さんのものだよ』って解って欲しかったから。


それに、呑み過ぎるのは危険だしね。


そんな私の声が聞こえたのかして、父は呑んでいるビールグラスを、一旦、机に置いた。



そして私は安心した。


でもお父さんは、まだ『ブスッ』とはしてる。


困ったもんだ。



「なにそれぇ~」

「うん?だってさぁ、お父さん、ストーカーチックに、お母さんにゾッコンなんだよ」

「あゆちゃん酷ぉ~い。でも、解らなくないかもぉ~」

「なにが?」

「だって、オバ様ほど可愛かったら、心配で仕方ないものだよぉ~」

「多分、そうなんだろうね」


そうなんですよ、繭さん。

モテる相手を好きになったら最後、その苦労は一生付き纏う話なんですよ。


ほんと嫌になるよ。


いつなんどき、そんな出会いが有るか解らなくて束縛したくなるんですよ。


でも、そんな事したら嫌われるから、自分の中で悩むしか方法が無い。


あぁもぅ、ホント嫌になるよ~。


いつの間にか、話を自分に摩り替えて、心の中でアイツの対して文句言う私。


でも、そう考えたら、私って、お父さんに似てるんだろうな。


親子だし。


しかも、親子揃って『嫉妬深い』し。



「なんかあゆちゃん。自分の事言ってるみたいだよぉ~」

「そう聞こえる?」

「違うのぉ~?」

「それがね、繭ちゃん。どうもウチの家系って、親子揃って、不相応な恋愛をする傾向があるみたいなのよ」

「えっ?あゆちゃん。彼氏いるんだぁ~」

「繭ちゃん……それ、何気に酷くない?」


そりゃさ、私は、どこまで行っても『準優勝女』ですよ。

繭ちゃんみたいに『優勝』もしてなきゃ、女の子っぽくもないですよ。


でも、だからこそ、それを見兼ねた神様が、公平に私にだけの最高の彼氏をくれたのさ。


しかも、『幼馴染』なんてオプションまでつけて……


少女漫画や、ゲームでしか体験出来無いヒロイン気分を、味合わせてくれた上に、最終的にアイツと付き合えた。


自慢自慢!!



可愛いだけでは上手くいかないのさ。


世の中、公平に出来てる、出来てる。



「ごっ、ごめんなさぁ~い」

「良いの、良いの。アイツとは上手くいってるから」

「ねぇ~、あゆちゃんの彼氏って、どんな人なのぉ~?」

「うぅ~んとね。自慢じゃないけどカッコイイよ」

「そうなんだぁ~」


うん?


なに、その余裕を感じさせる『そうなんだ~』って。


どうせ大した事無いとか言う顔してるよ。



ホホホ……ウチの彼氏を見てビビッて頂戴な。

滅茶苦茶良い奴だし、カッコイイし、優しいんだぞい。


なんて言っても、まぁ実際は、あんまり繭ちゃんに逢わしたくないけどね。


所詮『準優勝』ですから、私わ。



『ピンポ~ン』


来た!!


噂をしたら、大体タイミング良く現れるアイツの事だから、来ると思ってた。



以心伝心ですよ。



って、勢い良く行こうとしたら、お母さんが素早くオジサン連中をいなして脱出。


私は母の後ろから行く事になった。



うわ~ん!!お母さん先に行かないでよぉ~~~。


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