●前回のおさらい●
苛めと言う嫌な事があった分、返ってきた幸せは大きかった。
龍斗のお父さんと一緒に新潟に行った筈の龍斗が、歩美の前に現れて、歩美の気持ちをほぐしてくれた。
そして、その上。
給料3か月分の指輪迄プレゼントされるが……
その理由に、イマイチ納得出来ない歩美は、その指輪を……
「じゃあイラナイ……返す」
「ちょ……オマエ、それは無いだろ」
「だって、そんな高い物、意味も無く貰えないでしょ」
「じゃあよぉ。意味が有ったら、貰ってくれるのかよぉ?」
「意味?……意味ってなによ?」
とうとう、なんか意味の解らない事を言い出した。
って言うか、元々自分の彼女にプレゼントするのに、意味なんか有るの?
そりゃあ全然無くはないだろうけど、なんか深い意味が有るのかなぁ。
「まぁ大した事じゃないんだけどさぁ。ほら、お前ってモテるだろ」
「はい?」
「なんつぅ~かさぁ……俺、お前限定だけど、結構、嫉妬深いんだよな」
「はぁ?」
正に、予想もしなかった回答が返ってきた。
なにそれ?
大体、私がモテるってなによ?
そんな話、誰にも聞いた事も無いわよ。
「アンタ、なに言ってるの?私、モテた事なんか一度もないんだけど」
「あんなぁ、勘弁してくれよ歩美。……オマエは、なんも知んねぇかもしらねぇけどさぁ。オマエって、実は、男子の人気高いんだぜ」
「はぁ?だから、そんな話、誰からも聞いた事も無いけど」
「そりゃあ多分、声を掛け難いんじゃないか?オマエって、怖そうなイメージが付いてるからな」
「はぁ?なんで?なんで私に怖いイメージなんか?」
「多分な。……普段から、俺を、あんなバシバシ殴る女なんか、早々いないからな」
「だって、それは幼馴染だからさぁ……」
知らなかった。
私ってば、いつの間にか、そんな怖いイメージで見られてたんだ。
「まぁ、そんな話は、さて置き、兎に角、オマエはモテるんだよ。だからな、俺は気が気じゃない訳だ」
「まぁ、それが理由なのかも知れないけどさぁ。なんかしっくり来ない話ね」
「あぁそぅ。オマエって、そんな『天然』だっけか?」
「なんでそうなるのよ?」
うぅ~~~、昨日の奈々に引き続き、龍斗にまで、また『天然』って言われた。
なんで、みんなして、私の事を『天然』『天然』言うかなぁ。
私、全然、天然じゃないのにさぁ。
「俺はな、安心したいんだよ」
「はい?ゴメン。なんか良く解らないよ」
「……1つ聞くけど、それって『新手のボケ』か?」
「だ~か~ら~」
「わぁった、わぁった。ちゃんと説明するよ……ったく」
「……うん」
兎に角、意味が解らない以上、説明して貰う事は大事。
その話を、ちゃんと聞こうと思って2度ほど頷いて見せた。
なのに龍斗は、何故か神妙な顔をした上で、顔を赤らめてる。
なんで、そうなるんだろ?
よく解んないや。
「良いか、まず『モテる』って事を、前提に置くぞ」
「龍斗が?」
「オマエがだよ!!」
「あぁ……うん」
怒られた。
「んでだ。その上で、彼氏になったとは言え、俺は気が気じゃない訳だ」
「なんで?」
「オマエ、マジか?」
龍斗は1つ勘違いしてる。
まぁ仮にコイツが言う様に、私がモテたとしても、そんな事は大した問題じゃない。
だって私は、龍斗以外の男性には興味ないもん。
「……てかさぁ。例え、そうだとしても、私、他の男子なんかに全然興味ないし。だから、アンタがいれば、そんなの関係ないじゃん。……それともなに?それって、私が信用されて無いって事なの?」
「まぁ、そう言う訳じゃないんだけどよぉ。なんか自分の彼女がモテるって、結構、辛いんだわ」
アンタが、それを言うか!!
それこそ、私の方が気が気じゃないわ!!
でもさぁ、なんかコイツも、そんな餓鬼みたいな所が有ったんだ。
『独占欲』なんて、超可愛いじゃん。
「そ・れ・で?」
「いや、それでも、何も……」
此処に来て、私の意地悪モード発動。
もぅ私ってば。
此処は素直に嬉しいって言えれば良いのにさぁ……ほんとにねぇ。
それが言えないから私なんだけどね。
「じゃあ返す」
「だからよぉ。それじゃあ、話が最初に戻んだろうが」
「だって~、そんなツマラナイ理由じゃあ貰えないよぉ」
「ツマラナイって、オマエなぁ」
「ってか、アンタ、馬鹿じゃないの?心配しなくても、私は、龍斗以外の誰も好きにならないよ。……口だけじゃ信じられない?それともアンタが好きになった女は、そんな尻軽なの?」
「そっか……そうだよな。お前の言う通りだよな。なんか1人で盛り上がって女々しいな俺」
あぁ、なんか凹んじゃった。
喜ぶと思って買ってきたものを。
そんな言われ方で突き返されたら、そりゃそうなるだろうけどさぁ。
そんなに強烈に凹まなくても……
ど~うしよう?
こんな経験した事無いから、対応法なんか知らないよぉ。
え~~~い!!悩んでても仕方ない。
解らないけど、こんな感じでいいのかなぁ?
私が咄嗟に思いついた事、それは、実に子供っぽいものだった。
ほっぺに『チュッ』
うわあああぁぁぁ~~~!!やっては見たものの、死ぬほど恥ずかしいよぉ。
「歩美?……」
「なに凹んでるのよぉ。元気出して……ほぉらぁ~」
「別に凹んじゃいないけど……その指輪、どうしようかなっとか思ってさ」
「じゃあさぁ……その時まで、私が預かっててあげるよ」
満面の笑みで答えてみる。
きっとコイツとなら、そうなる筈だし……ふふふ。
イケナイ、イケナイ顔が微笑じゃなくて、ニヤけてきた。
「なんだよ、その時って?」
なのに、コイツは、こんな感じ。
意外に、空気読めないな。
アンタの方が天然なんじゃないの?
「この指輪、給料三か月分なんでしょ……もぉ!!何言わせるのよ。恥ずかしいなぁ」
あぁ~~~、何言ってんだ私!!
ついつい雰囲気に流されて、本音が出ちゃったよぉ。
「えぇっと、それって……」
「うっ、うるさ~~~~い!!兎に角、そう言う事は、そう言う事なの!!」
相変わらず、直ぐに表情に出る私は、あっと言う間に顔が真っ赤。
きっとこれは、夕焼けのせいだね。
うんうん、そうに違いない。
「いや、あの、まぁ、その時は、もっと良いのを買ってやるって」
「これで良いの……うぅん。これが良いの。だってさぁ、龍斗と付き合って、初めて貰ったプレゼントだもん」
「そっか」
いつの間にか私は、学校の『虐め』の話なんか、スッカリ忘れて完全に『幸せモード』
なんかもぅ、学校の苛めの事なんて、適当にしとけば、どうにかなるだろし、どうでも良いや。
でも、結局そうなったって事は、コイツに助けられたって事なんだろうな。
ほんと、お節介な奴。
でも、そこが好きなんだけどね。
ははっ、惚気惚気。
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