●前回のおさらい●
過酷な芸能生活を送る羽目になった歩美は、心身ともにボロボロ。
そんな中、芸能活動がOFFの日に成り。
意地でも学校に向かおうとするのだが。
それには『自分の誕生日を龍斗に伝えたい』っと言う強い意志が込められていた。
そして家を出ると……
「よっ!!って……歩美、お前、なに朝っぱら家の前でニヤけてんだ?気持ち悪っ」
うわっ!!龍斗!!
なんでアンタが此処に居るのよ?
私、今、家から出たところだよ。
「あっ、あの……その……うるさい!!アンタこそ、なんで此処に居るのよ?」
「はぁ?いや、別に、大した意味なんか無ぇけど……今日OFFだし、いつもより早くセットが決まって暇だったから、お前を迎えに来ただけだけど。なんかオカシイか?」
ほんと嫌だな、コイツは……
タイミング良く、直ぐに、こんな事するでしょ。
もぅ……ねぇ。
「あっそ、じゃあ、サッサと行こっか」
「あれ?何だよ、珍しいな。今日は突っかかって来ないのか?な~んか拍子抜けな感じだな」
「なんかさ……こう言うのも新鮮で嬉しいじゃん」
「そっ……そうだな」
ホント珍しく、素直に相手にモノを伝えられた。
龍斗が迎えに来てくれた事が、私自身相当嬉しかったんだろうな。
その分、龍斗は、いつもにない反応に対応しきれずに困惑してるけど。
ちょっと良い雰囲気になった私は、そっと手を繋ごうとした。
でも、まだ気恥ずかしいのか、手が当たっては離れしている。
良いなぁ、こう言うの。
なんか自分が、現役中学生だって事を思い出させてくれる。
「歩美~~~、お弁当忘れてるわよ」
「!!」
突然、響いたお母さんの声に。
こんな所を見られるのが恥ずかしかった私は、即座に身を引く。
龍斗も同様だ。
しかも、龍斗らしくもなく、かなり焦ってる。
んで、結局、手は繋げず仕舞い。
しかも、そんなレアな状況を破壊した理由が忘れ物の弁当だよ。
折角の雰囲気が、超台無しじゃん!!
うわ~~~ん!!お母さんの馬鹿~~~!!
奇跡の時間を返せぇ~!!
「はい、歩美」
って、事態を知らない笑顔のお母さんからポンっと渡された弁当を、少し膨れながらも受け取る。
「ぶぅ~~~、ありがと……あれ?」
受け取った弁当って言うのが、何故か、これまた大きい。
やや小さい女の子用の弁当の大きさではない。
って言うか、これ、お父さんのじゃん!!
うわ~ん、これじゃあ大食い女みたいだよ。
お父さんも、お母さんも馬鹿~~~!!
また、お父さん、慌てて私の弁当と間違って持って行ったんだ。
っても、お父さんパン屋だから朝早いしなぁ。
また寝ぼけたのかな?
龍斗は、そんな私と、弁当箱をマジマジと物珍しそうに見ている。
「ゴメンね、歩美。お父さんたら……」
「解りました。いつもの間違いですね」
「そうなのよ。ホント、困った、お父さんね。クスッ」
それだけ言うと、お母さんはクスクス笑いながら戻っていく。
気恥ずかしいんだけど。
この弁当を、龍斗がどんな感じに思ってるか不安になった私は、彼の顔を見る。
意外にも彼の視線は、私が見た時には、既に大きな弁当から離れていた。
『良かった~』とか一瞬思ったんだけど、この馬鹿の視線は、意外なものを見ていた。
私のお母さんを見ている。
しかも、視線を追いかけてみると、なんと『お母さんのお尻』ばっかり見てる。
死ね!!このセクシャル・モンスター!!
はぁ~~~、でも、お母さんかぁ~~~。
以前言った様に、ウチのお母さんは凄く可愛いの。
もぅね、あの人は無条件で男性に愛されるのよ。
ほんと、あの人には勝てないなぁ。
龍斗の気持ちも解らなくも無いんだけどね。
「行くよ!!」
「痛た!!痛ったたたったた……なっ、なに?なっ、なにすんだよ歩美?痛ぇ、痛ぇつ~の」
「黙れ……」
気を悪くした私は、アイツの耳を千切れる位の勢いで、思いっきり引っ張ってやった。
納得していても、許せないのが彼女と言う立場。
自分の彼女を差し置いて、その彼女の母親に見蕩れるなんて、ヤッパリ死罪だよ死罪!!
しかもさぁ、エロい目で人のお母さんのお尻ばっかり見てるって、どうよ?
ほんと信じられない!!
んで、一瞬、納得した私は何所へやら、一気に不機嫌モードに突入。
意味が解らず。
耳を思いっきり引っ張られた加害者(被害者)も、当然不機嫌。
さっきまでの、凄く甘酸っぱく甘い雰囲気は消え去り、最悪で険悪な沈黙な時間が続く。
でも、絶~対、私、悪くないもん!!
どう考えても、悪いのは龍斗だもん!!
等と自分勝手な『被害者モード』
またの名を『乙女脳』炸裂で学校に向かって歩いて行く。
私は悪くない!!
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