04月30日 AM7:35 歩美の部屋
うぅ、体が重い……意識はハッキリと覚めているにも関わらず、思った様に体が動いてくれない。
そんな風に私は、現在、ただ布団から起き上がると言うだけの事に『悪戦苦闘』している。
これだけを聞けば『いい若い者が何を言ってんだ?』とか、年配の方に言われそうだけど、体の疲れの蓄積には、老いも、若いも関係ない。
歳が幾つであろうと、疲れて動かない体は、何をどうやっても動かない。
それが人体の構造ってもんですよ。
それでも今日だけは、無理してでも動かさない訳には行かないのさ!!
理由は、簡単、久しぶりに朝から学校に行けるんだから、何としても行かなきゃ!!
疲れなんて言って、日和ってる場合じゃない!!
んっ?何をそんなに大袈裟に、たかが女子中学生が疲れてるのかって?
ほら、あれよ、あれ。
去年、龍斗に言われて、冷やかしで参加した『国民性豊かな美少女コンテスト』
アレのせいで、今、私は、自分自身でも想像もしなかった様な、とんでもない事に陥ってる。
龍斗の馬鹿が、あのコンテストで、何をやったのかは知らないけど。
初めっから『書類選考落ち』の予定でいた私が、どう言う訳か『準優勝』
んで、急遽芸能界デビュー決定したのよ。
そして、それが切欠になって、自分でも、何とも似合わないなって思う『アイドル』なんて仕事を、する羽目になった訳。
んで、どうせ、私なんかが芸能人をやっても。
直ぐに、鳴かず飛ばずで消えるだろうと思って、気楽な気持ちで、このアイドルと言う職業を引き受けたんだけど。
そこで、更に困った事が発生する。
何故か、直ぐに仕事入って来て、それ以降は異常なまでに忙しい毎日。
龍斗に嘘を言った罰なのかもしれないんだけど……私の本来の目的は、あ・く・ま・で、あの馬鹿と一緒に居る時間を増やす事が、当初の目的であって、決っして!!本気で『アイドル』を目指してた訳じゃないんだよね。
それをさっ。
アイツったら、私のそんな『ピュアな気持ち』も知らないで。
本気でアイドルが『私の夢』と思い込んだのか、そこから更に、なにやら良からぬ裏工作をしはじめた。
―――たしかにさぁ、この辺は、ほんと大事にされて嬉しいんだけどさぁ。
自分が嘘を付いて事が原因になって起こった現状なだけに、かなり複雑な心境な訳よ。
まぁそれがさっ。
何を間違ったのか、全て、その龍斗の計画が上手く行ってしまったもんだから。
これまた大変な事に、私は非情なスケジュールを事務所に作られ、仕事に追われる日々。
これが今、私が異常に疲れる元となった原因な訳さ。
でもね。
この話は、それだけの終わらず、そこからまだ続くのよ。
その私の他力本願な成功(龍斗のお陰)を、佐伯さんと、龍斗のお父さんが、面白がって各メディアに情報をリーク。
今では私だけじゃなく、龍斗の馬鹿も『暗躍する天才敏腕スタイリストは現役中学生』なんて、変なキャッチフレーズを付けられて。
それ以来、義務教育の中学生にも拘らず、私以上に、年がら年中、休む暇も無く働かされている始末。
んで、お互い時間が全然取れなくなって。
今では、仕事の現場で、ちょこっと顔を合わす程度。
殆ど逢えなくなってしまっっている状況。
折角、念願叶って龍斗と付き合ってるのに、この有様。
ストレス溜まるつぅ~の!!
あぁもぅ!!直ぐにでも龍斗に逢いたいよぉ~~~。
そんな訳で、体に引き続き、簡単に精神的にも病んでいく私。
そんなんだから、久しぶりの完全OFFのこの2日間の内。
明日は祝日だけど、今日だけは、せめて今日だけは、どんなに疲れて体が動かなくても、学校に行きたいのさ。
匍匐前進だろうが、這ってでもアイツの家まで行って。
アイツの自転車の後ろに乗って、ラブラブの2人で通学したいのさ。
……まぁ当然、最低条件として、アイツが仕事じゃなきゃ良いんだけどね。
はぁぁぁぁぁ~~~、アイツも忙しいもんなぁ。
はぁぁぁぁぁ~~~、もぉこんな生活辛いよぉ~~~。
そんな文句ばっかり言いながらも『執念』で、疲れ果てた重たい体をどうにかこうにか動かす。
―――ダルッ!!
はぁ~、もぅアイドルなんか、直ぐにでも辞めたいよぉ。
学校の陸上部の方が100倍ぐらい楽じゃん。
……等と、更なる文句を言いながら、ノタノタと着替えて登校する。
***
「いっ……行ってきま~す」
「はい、いってらっしゃい」
元気が全くない声を出しながら、ヘロヘロと玄関のドアを開けて出ていく。
多分、今の私の顔は、ファンの人が見たらドン引きする位、かなり酷い事になってるんだろうな……。
……でも、私は行くのさ!!
どうしても、アイツに言いたい事もあるし……
……絶対行く!!
それだけでも、最低限度伝えたいから……
……何が何でも行く!!
何をそこまで執念深く固執してるかって、言うと、さっきの話はさて置き、明日は、私のバースディなのさ。
だから、何としても誕生日会には、あの馬鹿にだけは来て欲しい訳さ。
多分アイツはイチイチそんな事を言わなくても、私の誕生日位は憶えてると思うんだけどね。
んでさぁ。
アイツったら、私の欲しい物をズバリ当てちゃったりするんだろうな。
……へへぇ~~~、幸せだよぉ。
っと、直ぐに自分勝手に良い方向に妄想して、外に出るにも拘らず意味も無くニヤける。
そんな時に……
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