【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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起こり得ぬ奇跡

公開日時: 2021年10月5日(火) 00:20
文字数:1,011

●前回のおさらい●


多くの謎を持ったまま、とうとう『思い出の最終日』に到達してしまった歩美ちゃん。


だが、思念体のままでは、なにも出来ない事実に焦りが生じ始める。

「どうしたら良いんだろ?」


何か、少し暖かいものに包まれながら、そう呟いた。


それでもまだ諦めきれず、私は思案する事をやめない。


先程も言った様に、今は、兎に角、時間がない。


そんな中でも、唯一救いが有るとすれば。

昨晩もう1人の私が、繭の家に行かなかった事ぐらいだろう。


もし、アイツの家に行ってしまっていたら最後。

それだけで、もう取り返しがつかない事になり兼ねない。


だからっと言って、これだけじゃあ、安心も出来無い。


もし、運命なんて物が存在するなら、恐らくは、そんな些細な事では、なにも揺るがないだろうから。


どこかで、採算を合わせて来る筈だ。



だとすれば……どうすれば良い?


私の思考が思いつく事。

それは、今日1日、龍斗を誰にも逢わせない事位だ。


でも……それは不可能。


何故なら、私には、この世界に於ける体がない。


幾ら思考をして所で所詮は、何の意味も持たない。


口惜しいが、それが現状。


そんな風に私は、1人で気焦りから。

少し体が熱くなってきたのを感じ、その少し暖かな物を払いのけた。



―――払い除けた?


体を持たない意識体の私が、一体、何を払い除けたと言うの?


目を見開いて、周囲を見回した。



            2004年08月19日 AM06:50 井上邸


「なにこれ?……どう言う事?」


おかしな事に、それは見慣れた私の部屋。


今までの様なまどろんだ空間ではなく、ハッキリとした世界。

まるでその感覚は、1年と数ヶ月、全く感じられなかった自分の体が、そこに存在する様な感覚。



「……なんで?私が、私の体を奪ったとでも言うの?」


この辺は、良く解らない事では有るが。

恐らく思念体であった私が、意志の強さで、この世界の私を上回り、体を奪った。


そうとしか考えられない。


じゃあ、この体の本当の持ち主は、何所に行ってしまったの?


―――消えた?


―――私が、今まで居た場所に飛ばされた?


―――それとも、私が、その意思を飲み込んだ?


兎に角、解らない事ずくめだ。



かと言って、そこに集中ばかりもしていられない。

いつまでも悩んでいる暇なんか、何所にもない。

今は、私が知っている、過去の知識を使ってでも、何とかしなければいけない優先事項がある。


自分勝手な言い分かもしれないけど、今はソッチの方が優先すべき事だ。


きっと、もう1人の私も、それを望んでいる筈。


―――自分勝手な考えかも知れないが、今は、そう思い込むしかない。


覚悟を決めて行動する。


私には時間が無いので、着替えを早急に済ませ、下に降りていく。


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