【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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和解はすれでも……他に問題は残る

公開日時: 2021年8月27日(金) 00:20
文字数:2,867

 3月7日 PM3:53 2-A教室


 6時限目の授業が終わって放課後になった。

先程の事もあって、授業には一切合切身が入らず、ただただ時間だけが無駄に過ぎていった感覚だ。


それを証拠に、授業内容が書かれたノートには。

自分で書いたにも拘らず、訳の解らない絵や、変な事ばかり書いている。


―――龍斗の奴、上手くやってくれたかな?


勿論、こうやって、那美の件が気になってるのもあるんだけど。

実際の私は、彼女の事より、昨日の奈々との喧嘩の事が気になって仕方が無かった。


別に、那美の件が気にならない訳じゃないけど。

あの件に関しては、龍斗に任せておけばある程度大丈夫だろうという保証がある。


アイツは、なんだかんだ言ってても、いつも上手く話を纏めてくれるから……


だから今は、那美の件より、奈々の件の方が私の脳は気になっているらしい。


それにしても、昨日の件……なんであの子には、こうなる事を予想出来たんだろうか?


―――その辺については、謝り序に聞いてみよ。


私は意を決して、奈々に謝りに行く事にした。



 3月7日 PM3:59 2-D教室


「あの、すみません。奈々居ますか?」


帰宅準備を終わらせて、家路に付こうとしている生徒を捕まえて聞いてみた。



「あ~、ちょっと待てよ。アイツなら、まだ居たと思うぞ……お~い、沢木、井上来てんぞぉ」

「あぁ、ちょっと待ってもらって」

「だそうだ」

「ありがと」


感謝の念を伝えると。

男子生徒は、何故か、顔を赤らめて足早に去って行く。


―――なんかあったのかな?


彼が去った後、2-Dの教室を覗き込んでみると。

奈々は、やけに、ゆったりとした動作で帰り支度をしていた。


あの様子じゃ……あんまり、私と話したくないんだろうな。


やっぱ、昨日の事、大分怒ってるんだろうな。


私は、教室内に入ろうかと思ったが。

足が上手く進んでくれなくって、結局、その場で奈々を待つ事にした。


『ガラッ』



「っで?何か用事?」


教室の扉に凭れていると、背後から奈々が声を掛けてきた。


しかも、かなり突き放した様な言い方だ。



「あっ、あの、きっ、昨日は、ごめん」

「それだけ?じゃあ、私行くね」


取り付く島も無い。


まるで私が、そこに居ないかの様に無視して何処かに行こうとする。


必死に、彼女の手は捕まえる。



「なに?」

「ごめん……本当に、ごめん」

「はぁ……もぅ、だから、あれ程『やめとけ』って言ったでしょ」

「ごめん」

「もう良いよ。怒ってない」


奈々は頭を掻きながら、少し微笑んでくれた。



「許してくれるの?」

「許すも何も、アンタも良かれと思ってやった事なんでしょ」

「そうだけどさぁ……結果、奈々の言う通りだった」

「だろうね。誰がどう見たって、氷村の奴は、那美には靡かない。……なんかさぁ、あんなに不器用な迄に一途な男ってカッコイイよね。ハハッ、何言ってんだろ。私も、やっぱ、まだ未練があるのかな」

「……奈々?」

「あぁ冗談。冗談」


奈々の顔は、一瞬、真剣だった様に思える。


けど、そんなにアイツって良い男かなぁ?


まぁ確かに、悪い男ではない事は、確かなんだけど……



『ガラッ!!』


そんな時に限って、必ずと言って良い程、アイツは空気を読まず現れる。

風船ガムを膨らましながら、2-Cから龍斗が現れた。


あれ?でも、龍斗ってB組じゃなかったっけ?



「よっ」


タイミングが最悪だったのか、奈々の顔が一気に紅潮していくのが解った。


それこそ夕焼けみたいだ。


さっき下手に、あんな事を言ってしまったから、気恥ずかしいのかな?



「氷村……」

「んっ?なにやってんだ?……あぁ、なるほどな。その構図からして、歩美が、沢木に怒られてんだな」

「ちがっ、違うってぇ~の」

「まぁさっ、歩美も悪気があってやったんじゃないんだから、勘弁してやってくれよ」


そう言って近づいて来て、奈々の頭を撫でる。


奈々は、何も言えず俯いているだけで、抵抗する気配は無い。


ほんと、この男だけは……


普通、この年代の女の子って、誰かに、こんな姿を見られたら恥ずかしいから、どんなに自分に美味しい状況であっても、即座に抵抗するもんなんだけど……


奈々の様子から見ても解るように。

この男だけは、それすらも許さない何かを持っているみたい。


嫌だ。


嫌だ。


確かに私も、龍斗に頭を撫でられたら、そう簡単には抵抗出来無いかも……



『ガラッ!!』



「おっ、おい、おい、氷村。オマエ、何やっちゃってくれてんの?」


満の悪い事に、今度は奈々の彼氏の影山が2-Cから出てきた。


……それにしても。

男共って、なんで、こんなに間が悪いかなぁ?



「んなもん決まってんだろ。オマエの彼女に、ちょっかい出してた」

「おいおいおい、オマエ、マジ勘弁しろよ」

「キヒヒッ、冗談だよ冗談」

「いや……オマエが言うと、全然冗談に聞こえネェよ」

「おいおい、こりゃまた、豪い言われ様だな」

「あんなぁ、氷村。オマエは、もうちょっとだけでも自粛しろ。大体、オマエは、ワザワザ人の彼女取らなくても、選り取り見取りじゃねぇか。この天然女誑しが」

「アホか。誰が天然女誑しだ!!それによぉ、大体にして、んなもん関係ないだろ。好きでも無い奴になにか言われても、なんも感じネェよ。俺は好きな奴以外からの好意には不感症なの……なっ、歩美」


えっ?えっ?

えぇ~~~!!なんで此処で、急に私に振るかなぁ。


答え、答え。


せめて、何か言わないと!!



「しっ、知らないわよ」

「ハハハ……龍斗沈没『女を振り続けた報いを受けるの巻』だな。無様龍斗」

「ちょ待て!!ふられたも、何も、なんでよりにもよって歩美なんだよ。……まぁせめて、今年卒業した松浪先輩なら納得も行くけどよぉ。歩美じゃあなぁ」


オマエ、後で校舎裏に来い。


ゆっくり話し合おうじゃないの。



「それ、オマエがフッてるじゃん」

「!!」

「余計な事を……」


ちょ、ちょっとマジなの?


松浪先輩もフッてたの、コイツ!!


信じられない。


何考えてんだろ?


松浪先輩と言えば。

今年、渋谷でスカウトされて、芸能界入りした先輩だよ。

すごい美少女だよ。


馬鹿じゃないのコイツ?



「それに、校内でもC組の阪城ユキだろ。E組の植田秋穂、F組の玖賀友里と橋田響子他数人。そう言やぁ~、オマエ、街の高校生のおネェ様方にも人気だったよな。まぁ、告白された数だったら、それこそ、天文学的数字だな」


はぁ?



「ちょオマっ!!だっ、黙れ、黙れ~。モテるのは俺様の運命だ」

「なにを今更焦ってんだよ。んなもん誰でも知ってるだろうに……人の彼女に手を出した罰だ」

「いや、ほんま、さ~せんした」


知らなかった……のは、ひょっとして私だけ?



「はぁ~、馬鹿共は放ッとこ、歩美」


呆れ果てたのか。

今まで黙っていた奈々が口を挟んだ。



「そうだね。女をフッた数を自慢するなんてサイテー。那美も、こんな奴と付き合わなくて正解だよ」

「ほんと、有り得ない位サイテー」

「嫌あぁね、不潔よ、龍斗君サイテー」

「お前も来んな!!」

「グハッ!!」


影山は、瞬時に、こっち側に寝返ろうとしたが、奈々の鉄拳制裁によりアッサリ撃退される。


私達は、そんな無様な男の骸を残して立ち去る事にした。



「「置いてかないでくれ~」」

「「馬ぁ~鹿~っ」」


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