●前回のおさらい●
芸能人として多忙を極める歩美ちゃん。
なので休みを貰おうと、必死に成ってマネージャーの池田さんに頼み込むが……却下される(笑)
そして、本日最後に仕事に連れて行かれる。
結局、この日、AMJの収録が終わったのはAM00:15。
しかも、その間の時間の空きが出来ても、全てヨメウリTVで撮り。
なに、このハード・スケジュール?
休みが欲しい私に対して、わざとやってない?
本当は、中学生が労働しちゃいけない時間なのに『録画だからバレない』って理由で、こんな時間になってるんでしょ。
怖いよぉ、芸能界。
「はぁ~、やっと終わった」
「お疲れ様」
等と、芸能界の本当の怖さを身に沁みながら、局の外に出てタクシーを拾って貰う。
まだ、私は未成年だから、いつも池田さんがタクシーで、家の近くの大通りまで送ってくれる。
これはいつもの事。
家まで行けば良いんだけど、私は必ず大通りから歩く。
私には、ちょっとした日課みたいなものがあるからね。
等と、思っていたら、その時!!
神様の存在を示す出来事が、眼前で起こった。
タクシーに乗り込んで行き先を言って。
運転手さんが、レバーを入れて発車する直前、不意にコンコンっと、窓をノックする音が聞こえた。
『一瞬、ファンの方かな?』
とか思ったんだけど。
そこには、一番逢いたかった見覚えのある大好きな顔。
龍斗だ!!
「すんません。俺にAYUMIさんのサイン貰えますかぁ?俺、マジで超ファンなんッスよ」
「龍斗……なに言ってんのよ、バカッ!!」
「ごっ、ご無沙汰してます、氷村さん」
「池田さん、お疲れさまっス」
あれ?
池田さんの態度が、いつもにも増して丁寧だ。
けど池田さんって、確か25歳だよね。
なんで年下のコイツに……
まさか!!
なになに、龍斗って、なんかそんな権限を持ってるの?
「その節は有難うございました。お陰さまで……」
「あぁそう言うの無し無し。困った時は、お互い様ですよ」
「そうですね」
うん?
いや、ほんとになに?
2人の間には、一体なにがあったの?
私だけ知らないって……なんか取り残されてない?
「ところで、今帰りですか?」
「はい、そうですよ。少し時間がオーバーしちゃいました」
「いけないんだぁ。中学生を、こんな時間まで働かせて」
「氷村さん……あの~、言われてる意味が良く解らないんですが?差し支えなければ、お幾つか、年齢確認させて頂いても宜しいですか?」
「そうきますか」
「そういきますね」
「なるほど」
池田さんが、いつもの調子に戻った。
ほんと、この人、誰にでも強いよね。
「んじゃまぁ、年齢詐称がバレない内に、俺、チャリなんで、そろそろ行きますね」
「お疲れ様……っと良かったら、局に、自転車置いて、一緒にタクシーに乗っていきませんか?方向同じですよね」
「う~~ん、そうだなぁ」
一緒に帰りたい!!
絶対、一緒に帰りたい!!
池田さん(超邪魔者)が居るけど、そこは諦めるから一緒に帰ろ。
休みたいとか、もぅ言わないから。
そんな目で龍斗に必死で訴えた。
「やっぱ、明日もチャリを使うんで、遠慮します」
へっ?
けど、この馬鹿は。
私の方にニコッと一笑して、チャリに飛び乗った。
ええぇぇえぇぇ~~~~!!嘘でしょ~!!
まさか、この状況下で一緒に帰ってくれないの?
信じられない!!
全く逢えなかった彼女に、やっと、やっとの想いで逢えたんだよ。
2週間ぶりに巡り逢ったんだよ。
寂しくないの?
それともなに?
なにか企んでるの?
例えばさぁ、私を、此処から連れ出して逃げるとかさぁ。
『シャアァァァ~~~ッ』
自転車の回転する音が、私の耳に入ってきた。
私の期待は虚しく。
アイツったら、私に何も言わずに行っちゃっ……た。
あっ、あっ、有り得ない!!
しかも、ツール・ド・フランスかって言う程の勢いで、自転車が遥か彼方まで走って行っちゃったよ。
アイツ、ばっ、ばっ、馬鹿じゃないの!!
この後、当然、私のご機嫌は斜め。
池田さんとも、家の近くの大通りに着くまで、一切一言も喋らなかった。
アイツが悪いのだけなのに、池田さん八つ当たりしてゴメンね。
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