●前回のおさらい●
奈々に、龍斗が誰かと付き合うという推理をされた歩美は、数日悩んだが。
金曜日に成って、悩んでても仕方がないと判断し、とうとう行動に出る……んだが、逆にそのテンションの高さが裏目に出て、いつも通りにしか出来ない。
此処でテンションダウンを喰らうが。
この時点で、学校の始まる時間まで、もぉあまり時間がなく遅刻しそうなので、此処は諦めて登校する事にする。
そしていつも通り、龍斗の自転車に乗せて貰うのを前提にして……
(此処の話は、龍斗編を歩美視点にしたものです)
「お急ぎだったら、俺の愛車に乗ってくか~?『アイドルよりも可愛い歩美さん』」
「うっさいわね!!まだバスに間に合うわよ」
バスに間に合わない事は、十分な程に解っているんだけどさぁ。
一応、必死になってる方が、自転車の後ろに乗せて貰うとき乗りやすいじゃん。
だから……ねっ。
「ふ~ん、間に合うねぇ……お前の間に合うってのは、出発したバスも込みなのか?」
「あぁ……もう、なんなのよぉ~~~」
「ついてなかったな。……じゃあな。俺は、まだ間に合う時間なんで、お先に学校へ……遅刻はいけないなぁ、歩美さん」
あれ?あれ?あれあれ?
なにこの予想外の展開?
今日は、自転車の後ろに乗せてくれない方向なの?
なんで、なんで?
「ちょ、ちょっと待ってよ、龍斗……」
「はい?なにか?ワタクシ急いでるんですが」
「チャリ……乗せて行ってよ」
あ~、こいつ、わざとやったなぁ。
最悪!!
ぷ~っと膨れてやる。
「へいへい、言うと思った。つぅか、早く乗れよ。マジで遅刻すんぞ。因に、後ろはステップしかないけど大丈夫か?」
「うん」
知ってるよ。
毎日乗せてもらってるもん。
でもさぁ、何でコイツって、こんなに私に優しいんだろ?
いつもこの状態になる事が解ってるんだから、1人分、多く乗せて走らなきゃいけないのにね。
「ごめんね。2人乗りになっちゃって……」
「なになに、いつもの事だし、気にしてないよ。……まぁ、お前が太ってなかったら間に合うしな」
えっ?嘘?
コイツが、そんな事を、直接私に言うって事は、私って太ったのかなぁ?
う~~~ん、昨日あんなに悩んだのに、太るなんて、私の体ってどうなってんのよ?
うっ、うっ、うるさ~い!!肥えてない!!
……でも、もし、本当にそうだったら嫌だから話題を変えよ。
「ねぇ、ねえってば、なに悦ってんのよ?早く行かないと、本当に遅刻するでしょ!!早く行きなさいよ!!」
「へいへい、了解了解っと……ご要望通り飛ばして行くぜ。落ちんなよ」
下り坂をぐんぐん加速して行く。
恐らく4~50キロのスピードが出てるんじゃないかな。
この時、私は、毎回の様に龍斗の首筋にガッチリと両腕でロックしている。
思い切り締っているのには、前にも言った通り胸を押し当てる為であって、決して怖い訳ではない。
どちらかと言えば私は『絶叫マシーン』が大好きだ。
だから実際は、ただ単に、龍斗に抱きつきたいだけなんだろうね。
はぁ~……なんだかんだ言っても、これって幸せなんだよねぇ~~~。
***
そうこうしている内に、短い幸せは終わり。
自転車は、大通りまで一気に駆け下りてしまう。
そこで、いつも通り、龍斗が私の腕にタップしてくる。
―――でも、こんな事をしてて、一体なんになるんだろ?
嬉しいと思う反面、なんか虚しいなぁ。
「なぁ、歩美……いっつも言ってるがな。お前……俺を殺す気か?」
「ごっ、ごめん。でっ、でもさぁ、そんなの、あんたの運転が危ないのが悪いんじゃない」
「おまえなぁ……まぁいいけどさぁ」
「なによぉ~。なんか言いたげね」
あれ?なんか言いたげだ。
なんだろ?
ひょっとして、毎日、首絞めてるの怒ってるのかな?
そんな風に考えていた私は、知らない内に、ややしかめっ面になっていた。
「あのよぉ~……怒んねぇか?」
「なにがよ。別に怒んないわよ」
怒る?怒るってなによ?
私が、アンタに、一体、何を怒るって言うのよ?
毎日送ってくれてる事に感謝する事はあっても、別に怒る事なんか無いと思うけど?
「絶対だな?絶対怒んねぇな?」
あれ?やけに慎重だなぁ?
うん?なんだろ?
ふむ……なんも思い浮かばないや。
「もぅ怒んないって、何度も言ってるでしょ!!なんなのよ、気持ち悪いわね」
「そっか。じゃあ言うけど、おまえさぁ…………」
「なっ、なによ?」
「……乳でかくなったな。幾つになったんだ?」
えぇ~~~~!!またそこ~~~!!
ってかさぁ。
前回の喫茶店の時も注目されたのがそこだったし。
これじゃあまるで、なんか私『胸をわざとくっつけてる』のを言われてるみたいじゃん。
―――もぅ!!馬鹿ッ!!
『ガコッ!!』
私は自分の行為に、あまりに気恥ずかしくなって、照れ隠しの為に、後先考えず、龍斗の頭にチョップ!!
「なっ……なに考えてるのよ、あんたは!!馬鹿じゃないの!!毎日そんなことばっかり考えてたの!!」
「ッ痛~~~、死ぬかと思った。へいへい、どうせ俺はエロ馬鹿ですよ」
「もうッ!!本当にガキなんだから!!」
「そりゃあ、お前はガキじゃないですよ……そんなに立派なモノをお持ちになってるんですから」
そりゃあさぁ。
最近、成長期なのかして、確かにメッキリ大きくなってきたのは認めるけどさぁ。
私だって、女の子なんだからさぁ。
もうちょっと、デリカシーってもんが有っても良いんじゃない?
……という訳で、もう一発喰らえ!!
『ベコンッ!!』
今回のチョップは、少し手加減が無かったせいか、龍斗は地味な蛇行運転。
車に当りかけて、運転手には『バカヤロ~気をつけろ!!』なんて言われる始末。
―――ごっ、ごめんね。
「なぁ、さっきの話なんだけどな」
「まだ言うか!!」
もう何考えてんだか。
そんな何回も胸の話ばっかりされたら。、私の存在価値が胸しかないみたいじゃない。
腹が立つから、もう一発喰らわせてやる!!
「ちょ……だから、ちょっと待ってって!!お前のその凶悪なチョップは、こんな所でやったら危ないし。大体、怒んないって言ったのは、お前じゃん」
「でもさぁ、普通、そんな事を言うかなぁ……」
まぁね、確かにね。
怒らないとは言いましたけど、叩かないとは言ってませんよ。
だから、私は悪くない。
「悪かったよ。……でも、悪い話ばかりじゃないんだぜ」
「どう言う事よ?」
「あのさぁ、おまえ『国民性豊かな美少女コンテスト』に出てみねぇ?」
うん?突然、何の話してるの?
なにその『国民性豊かな美少女コンテスト』って?
「『??』ヘッ?アンタ、なに言っての?」
「おまえ、人の話聞いてんのか?」
いやいやいやいや、話は聞いてるけどさぁ。
そんなんに出たって、なんの意味もない所か、ただ単に恥をかくだけじゃん。
それに、私がそんな所に出る事自体が無理に決まってんじゃん。
なに考えてんのよ?
それに何の為に出るのよ?
意味解んないし。
「…………むっ、無理、無理!!そんなの絶対に無理!!無理に決まってるでしょ!!馬鹿じゃないの!!」
「なにがだよ?」
「だって『国民性豊かな美少女コンテスト』だよ。全国から可愛い娘ばっかり集まって来るんだよ。……そんなの絶対に無理に決まってんじゃん。恥かいて終わりじゃない」
等と必死に言ってみれば、この馬鹿も無理な事に気付くでしょ。
ホント、なにを考えて、こんな無謀な提案をしてんだか。
「ってか、お前さぁ……オマエこそ、何考えてるのか知んねぇけど。まさかとは思うが、オマエ、厚かましくも優勝でもする気なのか?俺は、ただ『出てみないか?』って聞いただけだぞ」
「いやっ……そんなあつかましい事は考えてないけど……」
「だろ。だから『出場した』って言うスティタスの為に出るんだよ」
「でも、何で、私が?」
はぁ……さっきも言ったけど、何の為に、そんな事する必要が有るのよ?
大体、何のスティタスよ?
「おまえなぁ、忘れてるだろ」
「なにをよ?」
「約束しただろ、俺と……」
「だから、なにをよ?」
突然、龍斗は、自転車の急ブレーキを掛け。
学校を目前にして、道路に自転車を停止させた。
何の事やらサッパリな私は、コイツが何を言い出すのか興味が有った。
にしても、なんか『約束』したっけ?
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