【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
殴り書き書店

自分の犯した罪の代償

公開日時: 2021年9月13日(月) 00:20
文字数:1,733

●前回のおさらい●

クラスでの苛めは、なんとか上手く解決した歩美。


だが、そんな程度で苛めが終わる程、女子の嫉妬心や、執念深さは甘くない。


クラブが終わり、帰宅しようと靴箱を開けたら……

そこには、ローファーの中に満タンに詰め込まれた、歩美の大嫌いな納豆が盛り付けられていた。

しかもオマケに『葱』『からし』「醤油」まで掛けられてる始末。


流石の歩美も怒って……

「誰よ!!」


っと、いきなりスイッチが入った私なんだけど。

今の自分の『誰よ!!』ってセリフで、凄く嫌な『犯人』の名前が脳裏に過ぎってしまった。


理由は、私が『納豆嫌い』なんて知ってるのは、極僅かな人間しかいないからだ。


だから犯人は、自ずと数人に絞られる。


●容疑者1人目は氷村龍斗●


幼馴染で、多分、私の事で知らない事は皆無だろう。


でも、龍斗は意地悪はするが、こう言った陰湿な事はしない。


まぁそれ以前に、彼女に、こんな事をする馬鹿はいないだろうしね。

故に、龍斗の線は完全に消える。


んで、大好き!!



●容疑者2人目は影山真一●


不覚にも、私の納豆嫌いは、コイツにも知られている。


奈々と、みんなで回転寿司に行った時。

悪戯をして、奈々が私のお皿に『納豆巻き』を入れたのが原因。


でも、だからって、影山が、私に嫌がらせをする理由が見つからない。

この線もアッサリ消去。


後2人か……

私は解っている答えを、遠回しに言って、そうで有って欲しくないと心で願っている。


彼女が、そんな事をするとは思いたくない。



●容疑者3人目は沢木奈々●


先刻通り、矢張り、彼女も私の『納豆嫌い』は良く知っている。

しかも、今日に限っては、部活をサボって帰っており、此処にはいない。


龍斗の事が未だに好きだと言う点を踏まえれば、私を苛める理由としてはPOINTは高い。


こう聞いたら、一番アリバイが無い様に見えるが。

奈々には、影山って彼氏がいる以上、実際は、そんな事に意味はない。


故に、無いと判断。


……だとすると。

やっぱり何度考えても、思考推理の結論は、あの子が犯人としか考えられなくなる。



●容疑者4人目・高井田那美●


私の小学校からの親友だ。


この4人の中で、唯一私を恨んでる人間で。

私が龍斗と付き合う事によって、一番腹に据えかねている人間。


でも、残念な事に、恐らく、この推理は間違っていない。



「那美……もぅ辞め様よ、こんな事。虚しいだけだよ」


私は、小さくそう呟いた。


勿論、反応するとは思ってはいない。

だから、独り言を言う様に言葉を紡いだに過ぎない。



「阪城さんに、靴箱にゴミを入れる様に煽ったのも……那美でしょ」

「なんだ……歩美ちゃん、全部知ってたんだ」


裏の靴箱から那美が現れてしまった。


出来れば、本当は、こうであって欲しくなかった。


けど、そんな事を思っった所で現実は、何も変り様がない。

那美は、自らの口で『それ』を言っているのだから。



「うぅん。さっき『納豆』で思い付いた。それに阪城さん、昔から私の事が嫌いだったもん。だから那美も煽り易かっただろうね……でもね、そうじゃないと思いたかったよ」

「歩美ちゃん、今、自分で言ってる意味が解ってるの?それって、自分勝手な言い分だよ」

「そぅ……だよね」


那美の怒りが表面化する事は無いけど。

私を視界に捉え、ずっと静かに怒っているのが手に取る様に解った。


彼女は、私を許す気はない様だ。



「私……絶対に歩美ちゃんの事を許さないよ。自分は、氷村君の事を全然興味ないみたいな事を言って置いて、龍斗君と付き合うなんて……そうやって、私を馬鹿にしてるんでしょ?……そう言うの楽しいでしょ。楽しいよね?」

「ちがっ、違うの、あの時は、本気で那美の……」

「聞きたくないよ……聞きたくない!!聞きたくない!!そんな言い訳なんか聞きたくない!!」


両手で耳を押さえて、あの大人しい那美が、大声で強烈な拒否反応を見せる。



「お願い。聞いてよ、那美」

「イヤッ!!……歩美ちゃんなんか大嫌いだ。裏切り者!!地獄に落ちろ!!」


那美は、それだけ言い残すと、その場を走り去って行ってしまった。


私は自責念から、何の反論も出来ず。

ただ、その場で、走り去る彼女の背中を目で追うだけだ。


そぉ……私は完全に見誤った。

ヤッパリあの時、奈々の言う通りにすれば良かったんだ。


キチンと自分の気持ちを那美にも伝えて、那美のプレゼントも、自分から渡して貰うべきだったんだ。


親切のつもりが、相手に嫌な思いをさせてしまう様な結果になってしまった。


―――なんで私は、いつもこうなのだろう?


『小さな親切・大きなお世話』


まるで私は、その代名詞だ。


―――腹水は盆に還らない。


そんな言葉が脳裏を過ぎる。


その言葉通り、何をどう反省しても、水はただ下に流れて行くのみだ。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート