●前回のおさらい●
休みが無くてヘロヘロの歩美ちゃん。
その仕事の帰り、マネージャーの池田さんとタクシーに乗ろうとしたら……突然現れた龍斗。
当然、歩美ちゃんはテンション爆上がりで、一緒に帰れると思っていたら。
龍斗は、自分の自転車に乗って立ち去ってしまった(笑)
この後、当然、超不機嫌な歩美ちゃんだったが……
そんな風にして、家の近くの大通りに着くまで。
道が矢鱈、混雑してたのもあって、意外に時間が掛かった。
時間はAM01:40。
当然、中学生がウロウロする時間じゃない。
それに、この辺はベットタウンだから、夜は物音一つしない。
敢えて聞こえて来るのは、大通りを通る、深夜運行のトラックの音ぐらいのものだ。
だけど今は、それも殆どない。
そんな中、私は、いつの通り大通りでタクシーから降りて、家にトボトボと歩きだす。
でも、久しぶりに、こんな時間なったもんだから、夜道は少し心細い。
けど、そこは我慢してでもしなきゃいけない。
さっき言ってた、どうしておやって置きたい『毎日の日課』があるんだよね。
まぁ『日課』っと言っても。
別に特別な運動するとか、そう言った感じのものじゃない。
ただ、アイツの家の前を通って帰りたいだけの事。
なんて言うのか。
逢えない時間が多いから、電気の付いてるアイツの部屋を見て、ちょっと安心したいのが本音。
それを知ってるかのように。
私が帰る時間が、どんなに遅くても、アイツの部屋の電気が消えてた試しがない。
きっと帰ってからも、大量に仕事があるんだろうな。
―――良くやるよ。
そんなアイツの家の前を通って帰る時に、いつも一言だけ声を掛ける。
まぁ聞こえてないだろうけどね。
「頑張ってね、龍斗。おやすみ……大好きだよ」
これで私は満足。
少しストレスが解消される。
後は、余韻に浸って、家までゆっくり帰るだけ。
「歩美……お前って、意外と乙女チックな真似をするんだな」
「えっ?違っ……」
見ないで!!
うわ~~ん、なんで居るのよ。
私の密かな楽しみを見ないでよ。
「でも、ありがとな。……又、これで頑張れそうだ」
冷やかされると思ったけど、違った。
喜んでくれたみたい。
ははっ……これなら、毎日やってた甲斐が有った。
なんか私も、そう言って貰ったら嬉しいよ。
「龍斗こそ、こんな時間になにしてるの?それに帰るの早くない?」
「うん?あぁ、この時間帯は、あの辺の道は混むからな。タクシーで行くより、チャリの方が早いんだよ」
「そうなんだ……でもさ、さっきのは酷くない?一緒に帰りたかったんだけどなぁ」
「俺も一緒に帰りたかったよ。けどな、後で問題あると面倒臭いだろ」
そっか。
龍斗が乗車拒否した理由は、それだったんだ。
別に、私をからかったり。
もしくは、意地悪して乗らなかった訳じゃなかったんだ。
私って、ほんと浅墓だなぁ。
って言う事は。
あのスピードも、先に着いて待っててくれる為だけに……って事?
なんかさぁ、此処までいくと、もぅ嬉しいとか、そう言うんじゃないよね。
至れり尽くせりじゃん。
「そうだよね」
あぁ、そんな事が解ったら。
いつも以上に、もぅちょっと一緒に居たくなるよ。
ダメかなぁ?
早く帰らないと、お父さんとお母さん心配するかな?
「なんだったら、久しぶりに家まで送ってやろうか?」
「あっ、うん」
違うんだよね。
そう言うんじゃないんだよね。
出来ればさぁ。
その……『今日は、私を家まで送らなくって良い』んだよね。
「そっか、じゃあ乗れよ」
「ねぇ……『帰りたくない』って言ったら、どうする?」
「困るな」
「だよね」
「違う違う。自分で歯止めが利かなくなるから困る。そんなセリフ言われたら、自制する自信が無い」
「うん。多分、私もそう……ずっとね、繭ちゃんの話を聞いてから我慢出来無いんだ。龍斗が、繭ちゃんのオナニー見てると思うとね。どうにかなりそうなの」
正直な言葉がスラスラ出てくる。
どうも今日は、私自身、本当に家には帰りたく無いらしい。
「ごめんな、迷惑かけてたみたいだな。でも、ほんとは、それも知らなかった訳じゃないんだ」
「うん……知ってる」
「ごめん……俺、ほんと馬鹿だからさぁ。お前と、友達の繭ちゃんが、2人とも成功して欲しいなって思ってたんだけど……やっぱ、アレは違うよな。どう考えても間違ってた」
「うん、でも、そうじゃないと思うよ」
「そんな事はないだろ。アレは、自分の彼女に言う様な話じゃなかった。んな事を聞いて、気分が良い訳がないからなぁ……解ってた。解ってて、お前に甘えた。馬鹿だよな、1人で良い気になって」
「うぅん。良いんだよ。そんな事、どうでも。それに龍斗が馬鹿だろうとなんだろうと……問題じゃない。もっと私に甘えてくれて良いんだよ。だからね、私も、もぅツマラナイ嫉妬なんてヤメにする。龍斗の気持ちが、私だけを見ていてくれたのが解ったから」
「そっか……ありがとうな、歩美」
初めて龍斗が、私に甘えてくれた。
ただ本来の趣旨で考えるなら、これは決して、龍斗だけの責任な訳ではない。
これは繭ちゃんが起こした問題に、龍斗がお節介しただけの話。
ただ方向性が少しズレていて、お互いのやってる意味が解らなかった。
でも、理由はどうあれ。
いつも1人でなんでも決める龍斗が、私に甘えてくれた。
それだけで、この件に関わったメリットは有ったと思う。
多分こんな事が無かったら、コイツは一生、私に甘えるなんて事は無かっただろう。
私は嬉しいと言う感情から、この時点で、少し変なスイッチが入ってしまった。
「ねぇ、龍斗……これからどうしよっか?」
「どうするったって、もぅこんな時間だぞ。どこか行くにしても、この辺じゃあ、どこもないし。それにオジさんと、オバさん、大事な一人娘が帰って来なかったら、心配するだろ」
「解ってるよ……でもさっ、なんかねぇ。歩美はさぁ、今、すごく龍斗と離れたくないんだよね」
「歩美……どうしたんだよ?」
「ダァメ……かっなっ?私だってさっ、甘えたい時だって有るんだよっ」
私の体は、この言葉を発した途端、準備に入り始めた。
少しずつ体温も上がってきているのが、自分でもハッキリ解っている。
お腹の下ら辺がポカポカしてきた。
出来れば、直ぐにでも『チュー』して欲しいな。
多分、それだけで、腰が砕けて立てなくなるよ。
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