【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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こんなに私を想ってくれる人が居るなら、苛めなんて……

公開日時: 2021年9月5日(日) 00:20
文字数:3,326

●前回のおさらい●


歩美に対する苛めのメモが回ってきた当日から、早速、歩美の靴が標的に成り。

靴箱の中に『生ゴミがたっぷりと入れられていた』


そんな状況を一緒に居た奈々が見て、ドン引くが。

歩美は、どこ吹く風で、自分の鞄から予備の靴を出して、平然とそのまま立ち去ろうとする。


その行為を見た奈々は驚くが。

歩美は『苛めなんて相手にするからつけあがるだけ』と言い放ち、苛めに対するレクチャーまでする始末。


そして、その最後の締めとして、誰も居ない筈の階段の影の方に向かって声を掛けた。

「ねぇ、そこで隠れてる人。ずっと人の話を立ち聞きしてるなんて趣味悪いよ。いつまでもコソコソしてないで出て来たらどうなの?」

「なっ!!突然どうしたの?」


声に反応する事無く、その人物は出て来ない。


当然だけどね。



「うん?あぁ、大体こういう事をする奴ってさぁ。影に隠れて、虐めの結果を見てるものなのよ。これはね、体験論」

「これはまた、信憑性のある話だね」

「まぁ見ててよ。隠れてる奴の正体を教えてあげるからさぁ」

「また、なんとも探偵みたいな事を」

「これだったら、奈々の推理以上に当たるよ」


言葉通り、大体の見当は付いている。

恐らく条件から言って、この子達で間違ってはいない筈だ。


これも体験論だけどね。


条件1:あの馬鹿にフラレタ事のある女。

条件2:変にプライドの高い女。

条件3:自分がモテる事を自認してる女。

条件4:それらがツルんでる可能性が高い、交友関係のある女。


その条件を満たしてるのは……っと。



「C組の阪城ユキさん。E組の植田秋穂さん、F組の玖賀友里さんと橋田響子さんでしょ!!隠れてないで出て来なさいよ」

「「「!!」」」


まぁ当然、これを言ったからと言って、そんなもんワザワザ出て来る訳は無い。

自分が『犯人』ですって言う『苛めの犯人』なんて聞いた事も無いからね。


でも、今言った中に、誰か1人は居るのだけは確実。

さっきも言ったけど、こう言う『虐め』って、絶対、自分の目で『確認』したいものなのよ。


だから、腹が立つ相手の困った顔を見ないと気が済まないんだろうね。


それにもし、犯人の見当が違っていたとしても、そんなの大した問題じゃない。

虐めをしてる連中にしたら、自分が犯人になりたく無いもんだから、今度は、その人に罪を擦り付けたくなる訳よ。


んじゃあ、何をするかって事なんだけど。

多分、本人だろうと、違う人だろうと、絶対、私の『靴箱を綺麗』にする筈。


本人なら『ヤバイ』と思うし、違う人だったら『罪を擦り付けたい』一心で掃除する。


んで『虐め』が無くなったら、今、私が言った『本人』が犯人。

なくなる様子が無かったら『他人』って事になる訳。


それに私が、靴箱をそのままにして帰る訳だから、相当な馬鹿じゃない限り現状が『マズイ』事位は解るでしょうしね。


まぁそれでも、十中八九。

今、言った中に、1人は犯人が居ると思うんだけどね。


ほんとモテる女の子って、プライドが高くって面倒臭いよね。



「ふぅ~、まぁ出て来ないつもりなら、それはそれでも良いけどね」

「えっ?良いの?」

「良いよ。もう放っといて帰ろ。こんな事バレて内申書に響いて、困るのは、その子だもん」


私は、少し焦った奈々の手を引っ張って、その場をアッサリ後にする。


当然、彼女は、納得いかない顔をしながら付いて来る。



「ねぇ、本当に良いの?」

「良いの、良いの。こんな事で誰も傷つかないのが一番良いからね」

「自分を虐めた相手なのに?」

「だぁ~って、仕方ないじゃん。良くも、悪くも、相手の子も、あの馬鹿の事が好きだったんだからさぁ……そう言う気持ちも解らなくもない訳さ」

「なんともまぁ、お人よしだねぇ」

「慣れですよ慣れ」


あの馬鹿の彼女と言う余裕を見せながらも、内心はどうなる事やらっと言う不安。


取り敢えずは、来週の月曜日~火曜日辺りが肝になるんだるなぁ。


今日、金曜日だしね……。


***


 3月14日 PM6:24 氷村邸前


 『ピンポーン』


あの馬鹿の家の前を通った時、私は無駄にインターホンを鳴らしてみた。


アイツが居ない事位は重々承知している。

でも、今日から始まった『虐め』で、少し気が沈んでいたのも手伝って、試しに鳴らしてみた。


ただそれだけ。


奈々の前では気丈に振舞っては見たものの。

実際は、彼女に言った様な、そんな柔な話じゃない。


これからは、苛めが、もっと酷くなっていくだろう。


だから本当は、少し慰めて……うぅん、違う。

アイツの顔を見て、多分、安心したかっただけなんだろうな。


私は、アイツがいる事だけ確認出来れば、もぅ怖いものは無い。

どんな『虐め』だって、耐え抜いてみせる自信がある。


……でも、やっぱり、アイツはいなかった。


何でこんな時にいないかなぁ?

彼女が困っている時ぐらい、傍に居てくれても良いのに……


なんてね……


アイツに逢う事を諦めた私は、肩を落としてながら1人トボトボと家路につく事にした。



「何やってんだよ、歩美?ピンポンダッシュなんて、今時、小学生でもしねぇぞ」

「えっ?」

「『えっ?』じゃないだろ……どうしたんだ、なんか用事か?」

「べっ、別に」


相変わらず、素直にはなれない。

本来なら、今、完全に甘える所なのに、それすら出来無い有様。


なんでなんだろうな?


もぅ彼氏彼女の仲で、みんなにも付き合ってるって事が知れてるのにさぁ。


馬鹿みたい。



「はぁ~、そっか」


溜息をしながら、近づいてくる。


龍斗は、相変わらず、優しい。

私がツンケンした態度をしても、こうやって優しくしてくれる。


なのに、なんで私は、こんなにも素直に出来無いんだろう?


ほんの少しで良いから、素直になりたいよ。



「なによぉ」


でも、出て来るセリフは、こんなのバッカリでしょ。


もぉなんで……?



「別に……ただ、俺の大事な彼女は元気かな?って思ってさ」


ヤッパリ、コイツには隠し事をするのは、中々難易度が高い。


私の小さな感情の起伏にさえ、直ぐに気付く。



「元気も、何も、告白して、イキナリ放ったらかしにした奴のセリフじゃないと思うんけど」

「悪ぃ」

「別にぃ~、どうせ仕事が忙しいんでしょ」


文句を言いながら、龍斗の顔を見る。


この3日間、何があったか知らないけど。

目の下に隈を作って、少しどころか、かなりやつれている。


恐らく、凄いハードな仕事をしてたんだろうな。



「悪ぃ」

「別に良いわよ。……っで、何してるのよ?」

「いや、なんつ~かさぁ。ちょっと時間の空きが出来たもんだからさぁ。歩美に逢いに来ただけ」

「なっ!!馬鹿じゃないの?たったそれだけの為に、何時間も掛けて、ワザワザ新潟から戻って来たって言うの?」

「悪いかよ」


馬鹿だ。


龍斗は、本当に馬鹿だ。


そんなの悪い訳ないじゃん。

私だって、滅茶苦茶逢いたかったんだからさぁ……嬉しすぎて涙が出そうになってきた。


でもね、そんな無茶したら体壊しちゃうよ。

私は泣くのを我慢して、文句を言う事にした。



「悪いに決まってるでしょ!!そんな事する暇が有ったら、休憩すれば良いじゃない」

「まぁそうなんだけどさぁ……なんってぇ~か、逢いたかったんだから、しょうがないだろ」

「馬鹿ぁ~!!体壊したら、どうするのよ!!」


流石に、この言葉には我慢出来なくなった。

無理に抑え様としていた感情が一気に噴出して、涙が止めど無く出てきた。


だって、高々それだけの為に、こんな無茶をしてくれる奴なんて、絶対居ない。

それをコイツは平然とやってのける。

どれだけ私は、コイツに大事にされてるんだろう?


私は、力無く龍斗の体をポカポカ殴った。



「良いの、良いの」

「何が『良いの、良いの』よ。こんな事で、龍斗が倒れたら、どうするのよ」

「なんだよ?心配してくれてるのか?」

「当たり前じゃない!!心配してない訳がないでしょ……無茶ばっかりして」

「良いんだよ」

「良くない!!」

「良いんだ!!」


珍しく龍斗は、感情を表に出して怒鳴った。


私は、あまりの事に言葉が、少ししか出なかった。



「……何が良いのよ?」

「アホか?良いか歩美。俺の体は、昔からお前のものだ。だからな、お前が困ってるのに仕事なんかしてられるか、バカチン」

「龍斗……」


あぁやっぱり。

コイツは、私の現状を、多分、奈々か、影山辺りから聞いたのだろう。


それで慌てて新潟から帰ってきたんだ。



「それで大丈夫なのかよ?」

「……馬鹿ッ。そんなの心配いらないよ」

「本当に大丈夫か?」

「心配ないよ。私は、アンタのお陰で『虐め』には慣れてるから」

「そっか」


気丈に振舞うとか、そう言った馬鹿げた感情じゃない。


私は、自分の不甲斐無さに愕然としていただけの事。


高々『虐め』位で少し凹んだからって。

直ぐに龍斗に頼ろうとしていた、自分が情けなくて仕方が無かった。


でも、もう大丈夫だ。


私は、龍斗から元気を貰った。


それだけで十分だ。



不意に私は、この馬鹿にお礼がしたくて『キス』をしようとした。


けど……

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