●前回のおさらい●
歩美の両親にも結婚を認められて、幸せの絶頂だった龍斗。
そこに繭からのおかしな電話が入り。
その電話を不審に思いながらも、繭の指定した場所へと向かう。
PM12:18 帝王ホテル
電話の後、急いでタクシーを拾い、ホテルに向かったのだが、昼間の渋滞に巻き込まれて、無駄な時間を喰ってしまった。
だから、一分一秒でも早くその場について、全て事柄を確認したかった俺は、お釣りも貰わずに、誕生日に歩美から貰った時計を見ながら、早足にホテル内へ向かって行き。
その足で、そのままにフロントに掛け合って703号室に至急連絡を繋いで貰う。
連絡を取って貰うと703号室の方に、直接行く様に案内された。
そして俺は、今、その703号室の前に立っている。
だが、此処で既におかしな事があった。
防音が良く効いている筈のホテルの壁なのに、妙な声が漏れてきている。
いや……正確には、隣の702号室から女の喘ぎ声らしきものが聞こえていた。
この声には、一瞬、自分との置かれている立場との違いに少しイラッとなったが。
ただ盛ってるだけの男女には、なんの罪が無い事に気付き、冷静さを取り戻して、スルーする事にした。
『コンコン!!』
「龍斗君?どうぞ~、鍵なら開いてるよぉ~」
相変わらず、少し抜けた声が聞こえた。
この声の主は、間違いなく、白石繭だ。
安心した訳ではないが。
どうやら、この様子だと、彼女が、俺に用事が有る事だけは間違いないらしい。
俺は不覚にも、安心し切ったまま扉を開いてしまい、中に入室して行く。
室内は、何故か明かりが一切付いておらず、真っ暗のままだ。
目が慣れない俺は、電気を探しながら声を掛けてみた。
「なんだ?繭ちゃん、なんで電気をつけてないんだ?……まぁいいや、んな事よりさぁ、繭ちゃん、歩美、知ら……」
『ゴスッ!!』
不意に強烈な痛みが、後頭部にのしかかって来た。
―――意味も何も解らないまま、この後、俺の意識は完全に無くなった。
***
……気がついた時には、俺は椅子にロープでグルグル巻きに縛られて、身動き1つ出来無い状況にあった。
必死に体を動かそうとするが、一切動かない。
これはどうやら、思った以上に強く縛られているらしい。
そんな風に体が動かせない分。
今度は頭を左右に揺すってみるが、こちらもイマイチすっきりとはしない。
そんな中、この状況を把握する為に、もう一度、今までの経緯を思い出してみる。
繭に電話をして……
帝王ホテルの703号室に呼び出されるがまま来て……
繭の間の抜けた声を聞いて、部屋に入った瞬間、後頭部を鈍器で殴られた。
―――経緯は理解出来るが、意味は全く解らない。
だが、ただ1つ確実ながあるとすれば、俺と歩美は、何かに巻き込まれた事だけは確かだった。
そして、その中心人物は『白石繭』である事は確かだ。
「オイ、コラァ!!……どういうつもりだ、これは……」
「あらぁ~~、もう起きたんだぁ~、龍斗君。すご~い、流石~♪」
繭は、こちらに気付いて、楽しそうに、ゆっくりと口を開いた。
姿こそ見えていないが。
そこには、何かイヤラシくも不快な感じがした。
「『流石~♪』じゃねぇ!!お前、どういうつもりかって、聞いてるンだろが!!ブッ殺すぞ!!」
「えぇ~~~、怖~い。繭は、どういうつもりもないわよぉ~~~。ただね……」
「『ただ』なんだ?今度ツマンネェ事を言ったら……マジで殺すぞ」
「怒らないでよぉ~。繭は~、龍斗君にぃ~~、歩美ちゃんの本当の姿を知って欲しいだけなんだからぁ~~~」
此処で漸く、イヤラシイ笑みを浮かべながら俺の方に寄ってくる。
目が尋常じゃ無くイッてる。
まるでシャブ中の覚醒剤常習者みたいな目だ。
それに髪を金髪に染め、顔にはキツイメイクを施している。
服装も、何処かのキャバクラのネェちゃんみたいな無駄に派手な格好だ。
―――繭の言葉も気になったが、俺は、一瞬このセンスの無い格好に驚かされた。
「あぁ?歩美の本当の姿だと?……そんなもんは、オマエに言われなくてもなぁ、俺が、一番よく知ってんだよ!!」
「本当に、そうなのかしら?……きっと、龍斗君の知らない事だって、一杯あるわよぉ~~~。だって彼女……女の子ですもん。自分の彼氏に言え無い事も、一杯有るんじゃないのかなぁ~~~」
「はぁ?なんだよ。どう言う意味だよ……」
「あっ、そうそう、良い事を教えてあげる。……この部屋ね。あるお偉いさんが、よく使うプライベート・ルームなんだって。それでね、色んな機能があるのよぉ~~~」
「オイ、一体、何を言ってんだオマエは?つぅか、んな事なんか、どうでも良いんだよ!!歩美は、何処にいるんだ!!さっさと出せ!!」
変な話をしてくる。
―――そして、それと共に妙な胸騒ぎがする。
「ふふっ、慌てないのぉ~~~。あぁ、そぉ~だぁ~~~!!特別、龍斗君にだけ、この部屋の機能を1つ見せてあげるね」
機嫌良さげに繭は、リモコンのひとつのボタンを押す。
同時に、部屋一杯に響き渡る大音量で、女性の喘ぎ声が聞こえ始めた。
―――この声、何処かで聞いた声だ。
「なっ、なんのつもりだ!!ふざけんな!!」
「ふ~ん。この声が誰だかわからないんだぁ~~~。じゃあ、これなら、どうかしら?これでなにか解るかなぁ~~、タ・ツ・ト・君」
そう言うと、また、リモコンのボタンを押した。
今度は1つの壁が競り上がって行く。
壁には、一面ガラスが張ってあり、隣の部屋が丸見えになる。
……そこには。
1人の目隠しをされた女の子が、3人の男に陵辱されている。
しかし、その女の子は、そんな状況にあっても嫌がる素振りも見せず、快楽を得るためだけに必死に成っていた。
その1人の女の子とは……『井上歩美』
―――間違いなく、俺の彼女だ。
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