【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
殴り書き書店

1年後の2人

公開日時: 2021年8月4日(水) 00:20
文字数:2,731

●05月01日 PM6:05 龍斗の部屋●


 昨晩は、遅く迄仕事をしていたせいで、イマイチ眠気が醒めない。

今年のゴールデン・ウィークは、現在進行形で、今迄の人生の中で最高に忙しくハードな日々を送る事になった。


それもこれも、歩美が出場した『国民性豊かな美少女コンテスト』のせいだ。


確かに、親父の計画通りに従っていれば、こんな事にはならなかったのだろう。

……が、欲を掻いてしまった俺は、歩美の優勝を狙う為にある計画遂行してから、歩美をコンテストに出場させてしまった。


―――何をしたかって?


俺は、後先なんか一切考えずに、親父のコネクションをフルに使い、必要以上に『井上歩美』の売り込みを、業界人達にしてしまったのだ。

しかも、有り難い事に、話したこれらの人々は『氷村さん所の息子』って事だけで、最低限度ではあったが、色々話を聞いてくれた。


まさに親父恐るべし!!この事には、親父の偉大さを再確認した。


勿論、ただ歩美を売り込むだけでは優勝は覆らない。

此処では更なるイメージ戦略も必要だ。

なので、これには親父の知り合いで、昔から良く俺を可愛がってくれていた偏屈で有名なカメラマン『佐伯庄司』さんを利用する事にした。


佐伯の叔父さんに頼み込んで『井上歩美の写真集』の製作着手の契約をこぎ着ける。


それが、俺の第二の戦略だ。


ただ、佐伯の叔父さんには、実物が見ない事には、話にもならないと言われ。

歩美本人にも逢わせてみた所、写真集なんか滅多に作らない偏屈な佐伯のオッサンが、珍しくも歩美を甚く気に入り。

『おぉ、じゃあ、準優勝でも出来たら、写真集を作ってやってやらん事もないぞ』

などと『デキ・レ-ス』と知ったうえで、そんな話を出す始末。


そうなれば、俺のプランも最終段階。


此処からは、至って簡単な事だ。


この偏屈な佐伯のおっさんが、無名の女子中学生の『写真集』を作るなんて珍しい事があると言う情報を、業界中にリ-クするだけで効果は覿面に出る。

更に彼女は『所属事務所が決まってなくて困っている。このままじゃ出場すら危ぶまれている』などと、嘯いてみる事だけだった。


当然の事だが『デキ・レ-ス』を知っている業界人は『金の卵』である『井上歩美』に群がり。

その結果、歩美の家には、スカウトの山が押し寄せる事になった。


完璧な迄の計画に、俺自身自分の才能に驚いた(親父のコネフル活用!!)



まぁそのお陰で、一時は親父に『【国民性豊かな美少女コンテスト】優勝者が変わるかも知れないぞ!!】とも『タツ、おまえやるな~!!』とも言われた。


以上の結果。

俺が思ってた以上に、この計画は、業界を騒がす大袈裟な事になってしまっていた様だ。


となると、業界は業界で『歩美が何処に所属するのか?』って事が常時騒がれ続けた。


ここ迄来れば『優勝』の二文字が見えてはいたのだが……結果は、矢張り準優勝だった。

どうやら優勝が決定していた子が、絶対に『準優勝』なんかイヤだと、ゴネたらしい。


だが、敢えてハッキリ言うが……今年の優勝者は、俺から見ればイマイチパッとしない『華のない子』だった。


その為に、優勝してないにも拘らず、注目は上手く歩美に集中する事になる。

ここ迄の計画は、完璧な迄に遂行出来、上手く行っていた。


……の筈だった。


ただ、ここに最悪でイヤなサプライズが待ち構えていた。

業界を騒がせた張本人として、俺がイケニエにされたのだ。


アホ親父や、佐伯の糞ジジィが、各社・各メディアに『暗躍する敏腕中学生は天才スタイリスト』などと、面白半分に嘯いたのだが原因だ。

おかげで、こっちは手が付けられない位の大忙し。

昔から親父のおかげで業界に出入りはしていたが、こんな風に、急に注目されたら俺自身も訳がわからなくなる。


それでも業界では、そんな俺を許してはくれず。

大物俳優から、若手の芸人迄、幅広く依頼を受ける羽目になってしまう。


正に『身から出た錆び』『自業自得』だ。


かと言っても、親父に仕込まれた力は伊達じゃ無く、卒なく、それなり以上には仕事をこなして行く。

この辺は、偉大な親父に対する感謝の念が尽きない。


勿論の事だが、歩美も『AYUMI』等と言う、コジャレた芸名でデビュ-が即決定。


今では、レギュラ-3本、準レギュラ-8本の『大ブレイク中の中学生アイドル』になっている。


しかも、最近では、歌手活動を始めたらしく。

それも、なかなかの売り上げをあげているらしい。


―――そう言えばアイツ、そこそこ唄が上手かった様な気もする。


でも『ヲタ芸』なんかを目の前でされてキレたりしないのかな?

カメラ小僧に写真を取られて、本性を出していないか?


兎に角、アイツに対する不安は尽きない。


まぁそんなこんなで、お互い約1年間を目まぐるしく送った。


……お陰様で、お互いが忙し過ぎて、最近、全く逢えていない。


全く!!デ-トも出来ゃしない!!

等と、文句を言いながら、ふと、携帯電話を手にする。


イスをギシギシとさせながら、カチャカチャと携帯電話を弄りながら、明日の予定などに目を通してみる。


―――ハハッ、なんだこれ?現役中学生とは思えない程、仕事の予定で満載だ。

俺は、ジャニーズ所属のタレントじゃねぇってぇの!!


それに皆さん忘れてないか?

日本では、俺、まだ義務教育なんですけど……


……ったく、イヤになる。


見るのも嫌になった携帯を、ベットに投げて捨てて、現実逃避ON。



―――にしても疑問があった。


突然の、この休日の事だ。

親父はなんで、今日を俺のオフ日にしたんだろう?

この1年、幾ら休み申請をしても、全然休みをくれなかった癖に、今日に限っては、急に休みを言い渡すなんて、一体なんのつもりなんだろうか?


なにか深い理由でもあるのだろうか?……それとも、俺が忘れてるのか?


本当に何かあったっけ?


気になってベットに投げた携帯を再び拾い上げ、椅子を揺らし始める。


ギシギシ……


カチャカチャ……


ギシギシ……


カチャカチャ……


………………あぁ暇だ。


今迄の忙しさが、嘘の様だ。

しかも、急な休暇だったから、プライベートな予定なんかなんもねぇじゃんかよぉ。


ゆっくりと流れて行く時間は、永遠に終わらない。

……そんな気がする程、暇で仕方なかった。


そんなロクデモナイ時間を過ごしていると、天罰が下るもの。


不意に、家の電話が鳴り始めた。


『ポワワワワワ……ポワワワワワ……ポワワワワワ……』


『ゴロゴロゴロ……ゴンッ!!』


咄嗟の出来事に不意を突かれて、慌てて、電話に出ようとしたのが良くなかった。


思わずイスから転げ落ち。

しかも、漫画の様に後転した上、更に、漫画の様に壁に頭をぶつけてしまう。


1人ビックリビデオ大賞!!


だったら、せめて、誰かビデオぐらい廻しとけ!!


ってか、俺をこんな目に遭わせるような電話をして来る奴は誰だよ!!

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート