●前回のおさらい●
歩美の誤解が解け。
プレゼントも渡せた龍斗だったが、気付いた時には、天候が怪しくなってくる。
そこで自宅に来る事を勧める龍斗だが……実家には、龍斗と歩美以外には誰も居ない事に気付き、焦る。
俺が家の扉を開けると、歩美が横を通り過ぎて先に中に入った。
「おっじゃましま~す」
「はいはい、ど~ぞ。けど、男2人の家だから散らかってるだけだぞ」
因に、家の中は、全然散らかってはいないと思う。
何故なら、俺も、親父も、典型的なA型人間で、細かい所まで掃除をしないと気が済まないタイプ。
だから絶対に、掃除は行き届いてる筈だ。
これだけは、必要以上に自信は在る。
勝負!!
……と、ばかりに家中の電気をつけて、一気に部屋を明るくする。
「うぅ~わ~っ、凄く綺麗。龍斗ん家って、こんなに綺麗だったっけ?」
「綺麗ねぇ……これぐらい、別に、普通じゃないか。大体、普通は、これぐらいするだろ」
「はは~ん」
「なんだよ、その微妙な笑顔は?」
「でも、龍斗の部屋は汚いんじゃないの?」
意地悪そうな表情を浮かべて、下からの斜め目線で俺の方をジィ~~と見ている。
―――何を期待してんだか。
「まぁな。最近仕事にカマけて、殆ど、掃除なんかしてないからな。……汚いと言えば汚いかな」
「ねっ!!見せてよ……龍斗の部屋が見たい」
「はぁ?いいけど、俺の部屋なんか見ても、なんにも無いから、つまんねぇぞ」
「良いの、良いの、早く見たいな~~~龍斗の部屋♪」
「ふ~ん、そんなもんかねぇ。なにを期待してるのかは知らないけど……じゃあ、ちょっと、待っててくれ。お茶でも煎れて来るから」
「うん。待ってる」
歩美は、大人しくリビングの長イスに腰を下ろす。
俺はと言うと。
台所に行って、茶瓶に『お客様用の玉露』の茶っ葉を、丁寧に入れて、ポットから、ゆっくりとお湯を注ぐ。
後は急須を2個と、適当な茶菓子を用意して出来上がりっと……
鼻歌交じりに、直ぐにリビングに戻る。
「歩美。準備出来たから、俺の部屋行こうか?……あっ、因に部屋は2階だぞ」
「えっ、うん」
2階には、先に歩美を上がらせる。
なんせ俺は、お茶の用意で両手が塞がってるし、歩美に、もし、何かあった時に危ないからだ。
……なんて全くの嘘です。
こんなのは、自分を正当化する詭弁です。
実は、俺が、あいつの家に行った時から気にはなっていたんだが。
こいつの履いてるスカートの丈が異様に短いのが、ず~っと気になっていたんだよな。
多分、そこから推測するに、この状態で、階段を上れば自然と下着(パンツ)が見える様な気がしていたッて事だ。
実際、下から見ると、俺の期待を裏切る事無く、完璧なまでの推理に自分自身感心した。
ほんの少しではあるが……見えている。
ヒャッホ~!!チラリズム万歳!!
―――信仰していないが『ありがとう、神様!!』
「ねぇ龍斗……堪能した?」
喜んでいたのも束の間。
冷淡な声と、ゴミでも見る様な鋭い視線が俺の胸に突き刺さる。
「なっ、なにがだよ?」
必死に冷静を装ってみるが、心では嘘はつけない。
―――明らかにドモッてる。
此処でも経験値の浅さが露呈してしまう。
それにしても、まさか俺の完璧な計画がバレている訳じゃああるまいな。
―――いや、まさかアイツは、最初から気付いていたのか?
「…………変態」
「すいません」
この後は、重苦しい空気と沈黙のまま俺の部屋まで着いた。
***
「どっ、ど~ぞ、歩美さん。汚れてますが、中に入って下さい」
「お邪魔しますって、今日、何回も言ってるね」
「そうですね」
「その喋り方、気持ち悪いから止めてくれない。別に、自分の彼氏にパンツ見られたぐらい、どうとも思ってないからさぁ。でも、ホント、そう言うの好きよね、男子って」
「重ね重ね、すみません」
うながされるまま、歩美は部屋に入って行った。
どうやら、さっき程度の失態では、あまり怒られていない様だ。
―――よかった。
それにしても、コイツ、本当に寛大だよな。
俺も、少しは見習お。
因に俺の部屋は8畳程のフローリングで、仕事用の資料が整然と並べてある。
後、在るものと言えば、机とベット位のモノだ。
人が見たら、こんなにツマラナイ部屋は他にはないだろう。
「えっ?えぇ~~っと、なに、この綺麗な部屋?嘘でしょ」
「いや、そんな事ないだろ。つぅか、最近、殆ど家にいなかったから、埃とか溜ってたらゴメンな」
「龍斗って、ひょっとして几帳面?」
「いや、別に、そんな事はないけど……この部屋って、そんなに綺麗なのか?」
「そっ、そうだね」
なんか、歩美との距離を感じるのは、何故なんだろうか?
ひょっとして俺は、部屋を綺麗に掃除した事如きでドン引きされてるのか?
それにしても、綺麗にしてるだけでドン引きするって、どう言う事なんだよ?
それとも、それ以外で、なんかしたか俺?
……あぁそう言えば、さっきしたな。
あぁしたさ、覗き野郎さ!!
そんな俺を尻目に、歩美は部屋に入るなり、座りもせずに部屋の物色をしはじめる。
だが、歩美が思っている程、俺は、そんなに甘くはない。
見られて困るものなんか、箪笥の奥の方に仕舞い込んでいる。
この部屋の出ている物を物色した所で、恐らくは、彼女の期待している様な物は、何も見つからないだろう。
……多分。
「ねぇ。これって、なんのアルバム?」
アルバムねぇ。
まぁアルバム程度なら、何の問題も無いだろう。
……に、しても意外に目敏いなコイツ。
されど、たかがアルバム。
収録されている物なんか、幼馴染なんだから、お前も持ってる様な奴しかないぞ。
「あぁ、どれの事だ?」
「これ~~~」
『グハッ!!』
よりのもよって、それかよ!!
お前、本当に最悪だな。
世の中で一番見つかって欲しく無いもんを、何故か一発で見付けやがった。
超能力者かお前は!!
俺の心拍数は、ドキドキという鼓動が聞こえて来るほど、かなり上昇中している。
ある意味、歩美とキスしている時よりも緊張する。
頼むから……勝手に見るなよ。
それは、俺の所有物なんだからな。
今から俺が、何とか誤魔化して、見ない方向に持って行ってやるからな。
ちょっと待ってろ。
「いやぁ~、なんだったかな、それ?多分、歩美は見ない方が良かった様な気がするなぁ……僕的には」
「なによそれ?なんでなのよ~」
「ベっ、別に、他意は無いんだけどさぁ……出来れば、元の場所に戻して置いて欲しいなぁ……なんて」
「ふ~ん。どうせ、Hな写真でも入ってるんでしょ」
ある意味、まだその方がマッシだ。
「いや、そうじゃないんだけど……あっ、そうそう思い出した。それは確か、仕事のファ……」
「煮え切らないわねぇ。見ちゃお」
本当は、別に見られて困る訳じゃあないんだが、余りにも格好悪いと言えば、格好悪い品物だ。
実は、そのアルバムは……
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