【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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奇妙な状況

公開日時: 2021年9月25日(土) 00:20
更新日時: 2021年9月25日(土) 15:45
文字数:2,003

●前回のおさらい●


いつもとは違う雰囲気で、龍斗が繭ちゃんの再生に協力すると言う約束を目にした歩美ちゃん。


その後……

 あれから1ヶ月。


繭ちゃんは、あの日を切欠に、突然、人気が出だした。

今ではレギュラー番組こそ、まだ少ないものの、テレビ出演は頻繁になっている。


それに変ったのは環境だけではない。


何と言っても彼女の劇的な変化は……色気だ。


今までの清純なイメージから、少し大人びた感じにしたのが功を奏したみたいで、それこそテレビで見ない日はない。


彼女は、それ程、忙しくなっている。


勿論、繭ちゃんの努力も有るんだろうけど、ただそれだけって言うのも変だ。

もし、そうであるならば、もっと早くから、芽が出ていてもおかしくない。


そうなると、私の目は、自然と龍斗に行ってしまう。


正直、繭ちゃんは可愛かったけど、私から見ても、ただ可愛いだけ。

自分自身の『売り』になる部分が少なく、今まで燻っていた。


それを、たった1ヶ月で変化を齎して、此処までの人気者になる。

これはどう考えても、努力だけで何とかなる話じゃない。


アイツは、一体なんなんだろうか?


恐らく、この業界に何らかの大きなコネを持っているのだけは違いないんだけど。


アイツは、その辺を一切教えてくれない。


だから私も、幼馴染としてのアイツの事は良く知っていても、業界内でのアイツの事は、殆どと言っていい程、なにも知らない。


兎に角、龍斗は謎が多い。


ただ解っている事が有るとすれば。

アイツは、私の為だったら、なんでもすると言う事だけだ。


以前、業界の大先輩アイドルに逢った時、向こうから声を掛けて頂いて、こんな話を聞いた事がある。


なんでも、昔から龍斗の事を知っていたらしいんだけど、深い付き合いは無かった。

その大先輩の元に、あの『国民性豊かな美少女コンテスト』の次の日、突然現れて……


『井上歩美を使って下さい』って、あの格好付けの龍斗が土下座までしたらしい。


勿論、日常的に、そんな事が有る、この業界で、そんな戯言が通じる筈も無かったんだけど……

此処で龍斗のお父さんと、佐伯さんが放った、例の情報リークが功を奏する事になる。


相手方は『これは美味しい』と思ったのか。

龍斗と『専属契約』を結ぶと言う条件の下、私の名前をPに口添えしてくれた。


これにより私はコンテスト準優勝にも拘らず、この事で一気に人気が出る事に成り、それ以降は、継続的な人気を各方面から頂いている。


結局、私にしても、繭ちゃんにしても、アイツが裏で何かをしているのは、確かなんだけど。

何をしているのかは、先程の話以外は、相変わらず解ず仕舞い。


まぁ、それにしても『ノムさん張りの再生工場』だよ、アイツは。



ただ……少し繭ちゃんと龍斗については、不安な事が無い訳でもない。


今、私は、とある局で、撮影待ちをしてるんだけど、偶々居合わせたのか繭ちゃんを発見。

声を掛けようとしたら、彼女は、おかしな事に『男子便所』に入って行った。


しかも、その後を追う様に、龍斗の奴も現れて、そのトイレに入って行った。


最初は、繭ちゃんが勘違いした物だと思ったんだけど、それ以降も、2人とも出てくる気配はなかった。


不信に思った私は、隣の『女子トイレ』に入って、コソコソと聞き耳を立てる事にした。


勿論、悪趣味な事だとは解ってるんだけど。

自分の彼氏と、友達の女の子が、男子トイレに入るなんて、どう考えてもおかしいでしょ。


以前言った通り、自分に自信のない私は、かなりの心配だ。


何が起こってるのか調べなければ、居ても立ってもいられない。


故に、こんな行動に出た。



そこで、聞こえてきたのは、龍斗と、繭ちゃんのこんな声だった。



「なぁ、こんな所で、そんな事して恥ずかしくないのかよぉ?」

「いやっ……言わないで」

「毎度毎度、よくも飽きずに、そんな事が出来るな」

「だって……龍斗さんがやれって言うから……」

「じゃあ何か?俺がやれって言ったら、本番中でも、そんな事するのか?」

「違う……無理、それだけは無理」

「ふ~ん。じゃあ、やんなくて良いや。俺は、別に構わないけどな」

「いやっ!!見捨てないで下さい」

「うるせぇなぁ。声が大きいつぅ~の。それに、手がお留守なんじゃねぇの?」

「ごめ、すみません」


明らかに繭ちゃんは、あの馬鹿に何かを強要されてる様子だ。


でも、唯一解ってる事は、龍斗は、そんな状況にあっても、繭ちゃんには手を出していない事だけは間違いない。


声がアレをやってる様子ではない。


こんな事がわかるのには、れっきとした理由がある。

実は、あの繭ちゃんが帰った日、私は、自室で龍斗と結ばれた。


あんな状態から『どうして?』って、思われるかも知れないけど。

私の部屋で話してる内に、そんな雰囲気になってしまったんだから仕方がない。


だから、そう言った、アイツの雰囲気を知ってる私は、アイツが、繭ちゃんとは、何もやっていないって確信にだけは至れる。


でも、何やってるんだろ?


一度、考えてしまったら、気になって仕方がない私は、先にトイレから出て、壁際で丸まって身を隠し。


龍斗が、トイレから出て来るのを待つ事にした。


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