【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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告白への流れ

公開日時: 2021年9月1日(水) 00:20
文字数:2,997

●前回のおさらい●

いつも通り、軽い言い合いをし、自転車を2人乗りをしながら登校する2人。


そして、その会話の途中で龍斗から『国民性豊かな美少女コンテストに出てみないか?』と、突然言われて動揺する歩美。


さてさて、そのコンテストに出場する理由とは……


「俺は、俺の力で『お前を芸能人にしてやる』って言ったやつだよ!!忘れんなよな、バカチン」


えっ?えっ?えっ?

えぇええぇぇ~~~!!……嘘?あんな小さい時の約束を、まだ覚えててくれたんだ。


余りの衝撃にビックリしちゃったよ。


でもね、龍斗。

私は、別に、本気で芸能人になりたいとか言ってた訳じゃないんだよ。


アナタがさぁ『俺、大きくなったら、とうちゃんみたいなスタイリストになる』なんて言うから、そんなアナタと一緒に居たくて、急遽思い付いただけの思い付きなんだよ。



「うそッ……龍斗、そんな昔の事も憶えててくれてたんだ」


でも、ほんと嬉しいな。


そんな小さな頃の小さな『約束』まで憶えててくれるなんて……



あれ、なんでだろ?

自然に涙が止まらないよぉ。



「あのなぁ、毎日顔つき合わせてんだから忘れる訳ないだろ。ってか、寧ろ、どうやったら忘れられるのか教えて欲しいもんだ。……っても、勘違いすんなよ。普通で考えたら、まぁ、お前が幾ら頑張った所で、精々『書類選考』をパスすりゃ良い処だろうけどな」

「豪い言われようね。でも……憶えてくれてただけでも嬉しかったよ」

「おいおい『嬉しかったよ』って、なんだよ?勝手に過去形にするには、まだ早いんじゃないか?」

「なんでよ?アンタが、今、そう言ったんじゃない」

「確かに、お前の実力じゃ『書類選考パス』が良い所だろう。が……お前は、完全に大事な事を忘れてる」

「なんか有ったっけ?」

「あのなぁ、オマエには、俺って言う、唯一無二の最高なスタイリストが付いてんだぜ。まぁ優勝は出来なくても、それだけで最終審査出場決定ってもんじゃないのか?」

「あっ、呆れた~。どこから、そんな自信が湧いて来るの?とんだ自信過剰ね」


ほんと凄いね、龍斗は……きっと本気で、私を芸能人にしてくれるつもりなんだろうな。


なんか、適当な嘘付いて、ごめんね。



「当たり前だろ。俺は、お前の事なら、どんな事だって解るぜ。………なんせ、幼馴染みなんだからな」

「……」


はぁ……でも、結局は、そこ止まりなんだよねぇ。


まぁ、これだけ私の事を想ってくれてるんだから。

それ以上を望むって言うのは『贅沢』なんだろうけどさぁ。


こうも毎回毎回『幼馴染』って言われるのもねぇ。



「ねぇ……本当に、それだけ……なの?」


もぅ良いや。


折角、今日は朝から気合も入れてきたんだし、龍斗の本音も聞きたい。

此処までして貰ったら、もぅ今後は、私自身も『幼馴染』じゃ、我慢出来無いだろうし……


私は、自分の少し釣り上がった嫌いな目で、龍斗の目を捉えた。



「それだけって、おまえ……」

「なんだ、やっぱり、それだけなんだ。……所詮、何所まで行っても、私を幼馴染みとしか見てないんだ」

「クッ!!オマエ、それ、解ってて言ってんだろ!!」

「じゃあ、言ってよ。ホントにそれだけなの?」

「あぁそうかよ。じゃあ、言ってやるよ…………言うぞ。本当に言うぞ。良いんだな」


えぇっと!!マジなの?



「言うぞ……ホントに良いんだな。言っちまうぞ」

「はいはい、私に、なにが言いたいのかな、龍斗くんは?」


いや……あの……その……

この場合、私ってば期待しちゃっても良いのかな?


そんでもって。

こういう雰囲気なだけに、耳元で優しく囁いてくれたりして……とか思っちゃって良いのかな?


これって、間違いなく、そんな雰囲気だよね。


そうだよね、そうだよね。



「おっ、俺……氷村龍斗は、井上歩美の事が、誰よりも好きだぁぁ~~~!!誰よりも愛してるぅぅ~~~!!付き合ってくれぇぇ~~~!!」


えっ?



えぇええぇぇぇえぇ~~~、嘘ッ!!


愛の囁きは……



ええぇぇぇぇぇぇ~~~~~!!


此処校門だよ!!

しかも、月曜日って全校集会日だよ!!

そんな大声出したら、みんなに聞かれちゃうよ!!


普通さぁ『お前が好きだ』とか、シンプルに言うもんじゃないの?



「えっ?……ちょ……龍斗……なんで大声なのよ」


脳味噌が加速的に混乱した。


そんな最中。

龍斗はポケットに手を入れて、少し悲しそうな顔をしている。


イヤ、あの、ちょっと待ってよ。

心の準備以前に、心の整理が出来て無いんだからさぁ。



「なぁ、歩美さぁ。その表情をするって事は、これだけ心を込めて告白してもダメなのか?実は、俺の事が嫌いとか……」

「えっ?わたっ、わたしは……」


イヤ、あの、だから、そうじゃなくてね。


てかてか、嫌いな訳ないじゃん。

って言うか、寧ろ『大好き』なんですけどぉ。



「あぁ、わかった。もう、それ以上は言わないでくれ。これ以上は、俺も、流石に立ち直れない…………明日からは、また元の幼馴染みに戻るから、今日だけは勘弁してくれ……あぁそれと、恥かかして悪かったな。ホントごめんな」

「ちょ、ちょっと、勝手に自己完結しないでよね。……私だって、龍斗の事……好きなんだから」


あのあのあのあのあのあのあの、自己完結しないでよ。


だからさぁ。

お願いだから、ちょ、ちょっと待ってよ。


私にだって、心の整理ってモノがあるんだから!!



「イイって、そんな風に気を使わなくても良いんだ、歩美。無理しないでくれ。そう言うのってフラレタ奴には、一番堪えるからさぁ……」

「いや、ちょ……って、もぅ、わからず屋なんだから…………」


だから『好き』!!

うぅん『大好き』なんだから!!


もぅ、このわからず屋ぁ~~~。


私は恥ずかしかったが、その場で龍斗の唇を奪った。


心臓が張り裂けそうだったけど。

この機会を逃したら、なんか『永遠』に、もうこんなチャンスは無い様な気がして、自分の精一杯の事をした。



「ファースト・キスなんだから、きっちり責任取ってよね……龍斗」


これが、今の自分には精一杯のセリフだった。


『大好き』な龍斗を、自分だけのモノにしたかったのかも知れない。


でもさぁ。

女の子の『ファースト・キッス』って、ある意味『呪縛』だよね。



「なっ……なぁなぁ、歩美!!此れって、OKって事かぁ~~~?」

「もぉ!!そんな事をイチイチ聞かないでよ!!そんな事は自分で考えなさいよ、ばか~~~!!」


やっ、やった!!


まさか、本当に龍斗から告白して貰えるなんて想いも寄らなかった。


私は幸せの絶頂の中、アイツとのキスの感触を再確認していた。



でもね。

この後、当然、先生には呼び出しを喰らって『大目玉』


そりゃあそうだよね。

全校集会中に『告白』付け加えて『キス』でしょ。

『中学生にあるまじき行為だ!!』って、散々怒られた挙句、反省文が10枚。


でも、幸せボケした私には、丁度良い『お灸』なのかも。



んで、まだ序が有る訳。


『登校時に告白してキスすれば、永遠に結ばれる』なんて、この学校の生ける伝説になってしまったのね。


…………でも、それってさぁ。

アイツと、私が主役な訳だから悪くないかも。


3月10日は私達のキス記念日!!


なんてね。



あれ?

そう言えば奈々の言ってた、近日中に龍斗と付き合うって言うのは、私の事だったのかな?


うん?あれ?


でもでも変だぞ?

あの時点で私は、龍斗に告白する気も全然無かったし。

多分、今日の行動を見た所でも、アイツも、そんな感じじゃなかったしなぁ?


あれ?あれ?じゃあ、なんかおかしいなぁ?


なんで奈々は、あんな事を言ったんだろ?


うん?


あれ?


これって、ひょっとして……


あぁあぁああぁぁああああぁぁぁ~~~!!

あの女ぁぁ~~~!!

私を変に意識させて、こうなる様に仕向けたなぁ!!


そう言う事かぁ!!



ちぇっ……なんか『お釈迦様の掌で喜んでる某猿』の気分だよ。

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