●前回のおさらい●
繭ちゃんの仕事を手伝っていた理由や。
トイレで繭ちゃんにオナニーをさせてた理由を、歩美ちゃんにキッチリと順を追って説明していく龍斗。
龍とは、歩美ちゃんの了承を得れるのか?
「はぁ~、なんか納得した。でも『オナニー』は、やり過ぎ」
「荒治療だったんだよ」
「良いんじゃない。やり方は様々。良心の呵責の話は、本人次第だしね」
あぁ、あれ程、自分からは納得しないって思ってたのに……結局、納得しちゃったよ私。
女って、ほんと、そう言うのに弱いよね。
「まぁな、そう言ってくれるのは有り難いけどな。俺だって最低なやり方だとは思ってるよ」
「そぅ……なんだ?アンタでも反省するんだ」
ほんと!!
良かったぁ~。
以前から龍斗の仕事に対してのスタイルには、少し怖いものが有ったんだよね。
妥協しないと言うか、出来無いというか、傍から見たら、もう仕事の鬼なのよ。
でも、今回の件を見たら、反省はするみたい。
これをなんとも思ってなかったら、流石に、ちょっと幻滅したかも。
そっか、そっか。
仕事の鬼じゃないんだ……良かった。
「まぁ反省って言うのとは、ちょっと違うんだけどな……時間が無かったんだよ」
ブッ!!違うの!!
「時間?何の時間が無かったの?」
「あんま、他人の家庭の事情だからベラベラ言う話じゃないんだけどな。お前だから言うけど、繭ちゃんの実家が作った借金の返済期限があってな。それが今月なんだわ。……って言っても、これが、どの程度の役に立ったかは解んねぇけど。その借金の何%か位は貢献出来たと思うぞ」
あぁ、あの話か。
なるほど、そう言う事だったのね。
あの時の龍斗のきついセリフも、突き放した態度も、全て、この経緯に至る為の布石だったんだ。
ほんと凄い、コイツ。
この言葉しか出ないよ。
「ふ~ん、そうだったんだ。なんか、みんな色々大変だね」
「ほんと、大変だったよ。巻き込まれてから、先月、全然休み無かったし、俺も休みたいよ」
「勝手に自分が引き受けて、勝手に自分でやったんだから仕方ないでしょ」
「まぁ……な」
「……でもさぁ、龍斗」
「んっ?なんだよ」
「……頼りないかもしんないけどさぁ。少し位なら、私を頼ってくれても良いんだよ……なんてね。アンタだったら、私なんか居なくても1人で大丈夫か」
「あのなぁ。何言ってんだよ、お前は?俺が、こうやって頑張れるのは、全部お前のお陰だよ。好きな女の前では、どんなに疲れてても格好つけたいの……男って奴はな。馬鹿な話だろ」
「そうだね。ほんと馬鹿。無理しちゃってさ」
「ハハッ、だな」
いつもの屈託のない笑いをする。
男前とか、そんなチープな話じゃなくて、良い顔してるよね、龍斗って。
「さぁ~てと、話しもついた事だし。もう一頑張りすっかな!!」
もぅ行っちゃうの?
「ねぇ……もぅちょっとだけ、お願い、もうちょっとで良いから、一緒に居たいよ」
「ハァ~、ごめんな。俺も居たいと想ってるのは一緒なんけど。先方さんが待ってる。交渉に遅刻は厳禁だ」
「ごめん」
「謝んないでくれよ。余計に行き辛くなるだろ」
ごめんね。
私、我儘だから……
でも、確かにそうだよね。
仕事は仕事、プライベートとは分けないとね。
でも、このままバイバイってのも、あまりにも素っ気ないからさぁ。
せめて、これ位は良いよね……
私は、又、龍斗の唇を奪った。
「……いってらしゃい。頑張ってね」
「おっ、おう!!じゃあ、これは俺からのプレゼントだ。しっかり読んどけよ」
そう言って、一冊の本を私に渡して出て行った。
余韻に浸ってたんだけど、無意識に本がパサッっと落ちて、漸く我に返った。
それにアイツが渡して行った、この本って、なんなんだろう?
な~にかなぁ~?とか思って見てみると、来年1月からスタートするらしき大河ドラマの台本。
頭の中に『?』が沢山浮かんで意味が解らなかったので。
中を開いてみると、ヒロイン役のところに、私の名前が書き込まれていた。
えっ?どういう事?
まだ来年の大河ドラマって、何をするかも決まってないんじゃないの?
それに、例えそうだとしても、なんで私の名前が?
―――あぁそう言う事か!!
ほんとお節介。
そして業界恐るべし!!
意味を理解した私は、機嫌良く、台本をぺらぺら捲っていく。
と、あるページを開いた時にヒラヒラと何かが落ちた。
拾い上げてみると、ベタに映画のチケットが二枚。
それとメモに書かれた手紙。
読んで見ると……
『今度の休み映画に行こうぜ』だって……
プッ……アイツでも、こんな子供みたいな事するんだ。
でも、ほんと楽しみ!!
早く休みになんないかなぁ~。
……でも、喜んだのは此処まで。
……結局、世の中は、そんなに甘い物じゃない。
予定の書かれた手帳を見て、愕然と絶望する羽目になった。
今度の休みは……えっと。
ペラッ!!
いつかなぁ?
楽しみだなぁ♪
え~~っと。
す~っと、今週の予定を指でなぞってみた。
え~~~、今週は休み無しだよ。
残念だなぁ~。
でもしょうがない、しょうがない。
え~~~~っと。
また、す~っと、今度は、来週の予定を指でなぞってみた。
どこだろうなぁ~お休み♪。
あぁそっか、そっか。
来週も忙しいんだ。
ガンバろ!!
えぇ~~~~~~っと。
再び、す~っと、少し焦りながらも、再来週の予定を指でなぞってみた。
あれれ?
お休みが見つからないなぁ~。
うん、どこかに隠れてるのかなぁ?
もうそろそろ、お休みの予定が出て来ても良いのになぁ。
えぇ~~~~~~~~っと。
す~っと、もぉ殆ど涙目に成りながら、再々来週の予定を指でなぞってみた。
なんでかなぁ~?
黒いよぉ、黒いよぉ~。
えぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っと(怒りマーク)!!
ペラッ!!
なんで無いのかなぁ~!!
不思議だなぁ~!!
私、まだ、義務教育なんだけどなぁ~!!
なんで、こんなに手帳が真っ黒なのかなぁ~!!
うわ~~~ん!!
ペラッ!!
見つけたよ、見つけた!!
もう無いのかと思った。
有ったよ、有ったよぉ!!
―――何時かって?
もぉなにも聞かないで……
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