【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
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繭の到着……今の歩美に出来る最後の戦いが始まる

公開日時: 2021年10月12日(火) 00:20
文字数:2,573

●前回のおさらい●


繭を家に読んで、話し合う決心をした2人。

その繭が来るまでの時間を、2人で、比較的落ち着いた雰囲気で過ごしていたが……


とうとう、その時間がやって来た。

 2004年08月19日 PM07:43 氷村邸


 『ピンポーン』


インターホンの音が響いた、時間からして来たのは、恐らく繭だろう。


漸く、ご到着のようだ。


そんな繭は、龍斗に連れられて部屋に入室してくる。


それと同時に龍斗は、少し離れた場所で待機。

これについては私の要望。

最初は、龍斗が口を挟まない事も付け加えている。


それを見た繭は、向こうであった昨日の『婚約話』は無いにせよ。

何か感ずいたのか、やや警戒している様子が見受けられる。


思った以上に、警戒心が強い。


多分、コッチの私だと、この状況の時点で打破出来無いだろう。


―――そう言う私は、さっき龍斗が言っていたBの方だ。

私は、なんとか、この時間まで、体の占有権をキープする事が出来た。


でもこれも、いつまで持つかは解らない。

『早めに片付けよう』と思って、繭に席に座る事を薦めた。


彼女も、それに呼応した様に、すぐさま席に着く。


そして、時間がない私は、直ぐに口火を切った。


相手に口火を切らせると、色々厄介だし。



イキナリ、キレて、ナイフでブスッはお断りだ。


この体は、私のものであって、私のものでは無いのだから……



「ねぇ、繭ちゃん」

「なに~ぃ?どうしたのぉ~あゆちゃん?」


耳障りの悪い口調だ。


私は、こんな女に殺されたの?


情けないなぁ。



「ハッキリ、教えて欲しいの?繭ちゃんって、私の事、嫌い?」

「そんな事無いよぉ~。あゆちゃん好きだよぉ~」

「そっかぁ~。じゃあ、なんで龍斗に手を出すのかな?」

「えっ?あっ、あの、なっ、なんの話?私、知らないよ」

「惚けないでよ。さっき龍斗を問いただして、その話は、もぉ知ってるの」

「ちがっ、違うの。あっ、あれは、龍斗さんが、やれって言ったの」

「それも知ってる。だから私は、今、2人ともブッ飛ばしたい心境だよ……殺意さえ覚えてる」


繭に対して『ブッ殺したい』って言うのは、ほんとなんだけど。


それは、別の繭の話。

今の所ではあるけど、コチラの繭には問題がないみたい。



「……」

「じゃあ、もぅ一回聞くね。それを踏まえた上で、繭ちゃんって、私の事、嫌い?」

「うん……そうだね。大ッ嫌い。この世で一番、大嫌い」


嫌われているのは、向こうの世界でも解ってた。

だけど、まさか、世の中で一番だとは思っていなかった。


だとすれば『殺したい』って意味も解らなくはない。


でも、そんな訳の解らない理由で殺される覚えもない。



「クスッ。だよね」

「知ってたんだ。意外と性格悪いんだね」

「うん。私、滅茶苦茶、性格悪いよ。でも、なんでそこまで嫌われなきゃいけないのかだけは、どうにも理由が解らないんだけど?なに?私、アナタに何かしたっけ?」


理由は逆恨み。


それも、ハッキリと解ってる。


でも、自分の口から言わさせないと、自覚しない。



「何言ってるのかなぁ~~~?そんなの一杯あるよぉ~~~。だって……アンタのせいで私には仕事が来ない。『準優勝』が、でしゃばんなって感じだし。アンタが芸能人や、スタッフにチヤホヤされてる姿も訳が解らない。『準優勝』の癖に生意気。『準優勝』『準優勝』『準優勝』の癖に、なんで優勝した私より、アンタが優遇されてんのよ?こんなの納得出来無い!!誰が、どう考えても、おかしいじゃない」


やっぱり、こんな些細な理由だ。


だから、さっき言った。

理由の『逆恨み』って線も、強ち間違っていない。


これだから、女って言うのは困る。

嫌う理由が『学校の虐めよりレベルが低い』って言うのにも関わらず『人を殺してしまおう』とするんだから。


本当に、嫌な感じだ。



「全然おかしくないよ。だって、私、運が良いもん。アナタは、それに勝る運を持ち合わせてなかった。ただ、それだけじゃないの」

「冗談でしょ!!納得いかない!!そんなんで、納得しろって言う方がどうかしてる!!」

「ねぇ……今まで、何を聞いてたの?龍斗も言ったでしょ。この業界では『優勝』なんて、ちっぽけな『箔』より、運の方がよっぽど大事だって。これについては、アンタも身に沁みてると思うんだけど」

「じゃあなによ?アンタの言う、その運って言うのは!!」

「氷村龍斗……って言う、運。生まれた時から、私にだけ与えられた最高の運。私に有って、アナタに無いものよ」

「そっ、そんなもんぐらい、なんだって言うのよ!!」

「馬鹿ねぇ。アンタだって、そのお陰で、今の立ち位置なんじゃないの?これについて、何か言い返せる?」

「あぁそうよ、確かに、彼の功績は大きいわ。でも、そんなの私有り気の話じゃない」

「アンタ、ほんとに馬鹿なのね。アンタなんかが、普通にやって売れる訳ないじゃん。我儘、自己中、お嬢様気質……オマケに、なんでも自分の思い通りにならなきゃ嫌な子供気質。そんな横暴で自分勝手な奴、誰も相手にしないのよ……でもね」


繭が怒り出しそうだったので、そろそろ落ち着かせないと……


彼女の限界が近い。



「でも?……でもなによ?まだ何か言い足りない事でも有るの!!」

「有るよ。……それでも、アンタが努力して変ったって、事実だけは賞賛に値する。私も、アンタの事が大嫌いだけど。そこだけは認めざるを得ない」


これだけは、確かに、認めざるを得ない所だ。


彼女は、自分の全てを曝け出してまで、家族の為に貢献した。


この辺に関しては、逆恨みだけで終わった、卑怯な向こうの繭とは大違いだ。


だから、きっと、コッチの繭ちゃんなら変われる筈。



気持ちの持ち方が……違うから。



「私が……変わった?なっ、何、言ってるの?アンタさぁ、頭おかしいんじゃないの?私は何も変わってない!!」

「変わったよ。自分の家の為だけに、自分を殺せた。これは、そんなの簡単に出来る事じゃないよ」

「うっ!!くっ!!龍斗さんを利用しただけ!!何も変わってない!!」

「じゃあ、なんで売れたのよ?アンタの持論じゃ、今、言ってる事おかしいよ」

「うるさい!!うるさい!!うるさい!!わかんない、私だって、わかんないよ!!なにがなんだか解んないよ。アンタは、私に何が言いたいのよ?」


私相手じゃ、認められない事が多いんだろうな。


でも、事実と向き合える様になって欲しい。


それさえ出来れば……『彼女は、多分もぅ大丈夫だ』


向こうの馬鹿な繭の様な凶行はしないだろう。



そして、私が今から放つ言葉が、彼女にとってのその楔の役目をはたしてくれる筈。


龍斗と話していた時に私が言っていた『最終手段』って奴だ。


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