【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
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ビンタの痛みと、歩美の両親に誓える気持ち

公開日時: 2021年8月9日(月) 00:20
文字数:3,040

●前回までのおさらい●

浮気だと誤解された龍斗は、家を飛び出した歩美の後を追い。

龍斗の自宅の前で歩美に追い付くが、その時には、柄の悪いナンパ師や、ファンの取り囲まれていた。


ソレを、なんとか撃退した龍斗は、歩美を家に送ろうとするが……『ビンタ』が飛んで来た。

「最っ低ぇ~!!ホント触んないでよ。私は、あんたの毒牙になんか掛からないんだから!!この女誑し」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ、アユ……」


『バッシィ~ン!!』


言い訳も何も出来無いまま、速攻で2発目のビンタは発射された。


………いたい。


以前からそうだが、コイツのビンタは女子の威力では無い。

脳の芯からシェイクされて、目がチカチカして、頭もクラクラする。


―――しかも今は、完全にお怒りだ。

通常の倍近くの威力が有ると思われる。


これはまさに、歩美のおばちゃんに匹敵する威力だ。



「自分の彼女の家で、彼女の友達に手を出すなんて、どういう神経なのよ!!頭おかしいんじゃないの?この色情魔!!アンタなんか最低!!」

「いや、あの、だから、待てって、あれは……」


『バッシィ~ン!!』


矢張り、言い訳無用な様で。

怒ったや、恨みの篭った目で俺を睨みながら、彼女の手は、俺の顔を横切って行く。


………………。



「言い訳なんかするな!!私は、アンタなんか、ちっとも恐く無いんだからね。アンタなんか大嫌い!!」


『バシッ!!』


4発目が放たれたが、俺の頬を打つ事はなかった。

今度は、上手く歩美の手を取る事が出来たからだ。


流石に、こんな腰の入った平手を、何発も耐えれたものじゃない。


例え、俺に非が有ったとしても、これじゃあ身が持たない。


死んでしまう。



「離せ!!離せ!!離せ!!…………離せったら~~!!気安く触るなぁ~!!妊娠する!!」

「ごめん……俺、馬鹿だから、あんな事になっちゃったけど。……でも、信じてくれ。繭ちゃんとは、なにもない」

「嘘よ!!……もう私の事なんか、どうでも良くなったんでしょ!!別れたいんなら、別れてあげるから、触らないでよ。気持ち悪い」

「気持ち悪いのは認めるけど。あんま馬鹿な事だけは言ってくれるなよ。それに、何も無いって言ってるだろ。そんなに俺が信用出来ないのか?」

「じゃあ龍斗は、あの状況を、どう信じろってのよ!!アンタだったら、信じれるの?私があんな事してても、アンタは信じるって言うの?どうなのよ!!」

「俺は、絶対に、お前を信じるよ。絶対に疑わない。もし、お前がそうだと言うなら、嘘を付く筈が無い」


歩美は、俺に嘘を付かない。

照れて、自分の意に反する事を言う事はあっても、嘘だけはつかない。


俺は、そう信じてる。



「えっ!!……なに?アンタ、あの状況でも信じるって言うの?」

「ったりまえだろ。信じなくて、どうするんだよ。まぁ、お前以外なら信じないが、お前だったら信じるしかないだろ。自分が惚れてる女が言う事なんだからさ」


漸く、この俺の言葉を聞いて、少し落ち着いたようだ。

ジタバタと手を振り解こうとする仕種すら無くなった。


これで、やっと、ちゃんと話す機会が出来たみたいだ。


***


 暫くの沈黙の後。

不意に、嘘を付くのが嫌になった俺は、繭ちゃんとの出来事や経緯を、全て正直に話した。



「これが、さっきの真実だ。……俺は、お前の両親に誓って、嘘は付いてない」

「プッ……って、なによそれ?なんで誓う相手が、私の両親なのよ?」


まぁ、言われてみればそうだな。



「あぁ~まぁ、なんて言うのかなぁ。自分を信仰しない人には、一切利益を与えない、何を考えてるのか解らないケチな神様なんかより、お前が一番信頼してる人だと、そう思ったからだが」

「プッ!!なにそれ?馬鹿じゃないの?……でもまぁ、今回は、私の早とちりが招いた事だから、繭ちゃんとのキスの件も、大目に見てあげる」

「はいはい、そりゃあ、どうもありがとうございました」


俺は、子供が拗ねた様に口を尖らせて、感謝を伝える。


しかしまぁ、意外に、コイツが寛大で良かった。

さっき正直に話した(キスの件)時は、完全に殺されるもんだと思っていたからな。


言いながら俺は、ジィ~と歩美を見ていたらしい。



「なによ?何か私の顔に付いてるの?」


訝しげな顔で、俺の行為を不思議の思ったのか、有りふれた質問して来る。



「あぁついてるよ、俺の大好きな歩美の顔が」

「なっ!!……もぅなに言ってんのよ。……じゃ、じゃあさぁ、何処が一番好きなのよ?」


「……今は、唇かな」


自然に、お互いの顔が接近して行く。

歩美は目を瞑って、俺がキスをするのを待っている。


だから、俺も目を瞑ってキスをする。



少しの間、時間が止まってる様に感じた。





そんな中、不意に目を開けた俺に。

チャリの後部に括りつけられたままのプレゼントが目に入った。


今まで、完全に忘れられた存在だ。


2度目の歩美との貴重なキスを離すのが勿体無い気がしたが、俺の方から、ゆっくりと離す。



「…………アッ!!そうだ、そうだ。歩美、誕生日おめでとう。これやる」


俺は、その場を取り繕うように、チャリの後部に積んであったプレゼントを急ぎ渡した。



「えっ?なに?……えっ、えぇ~っと、あの~、あっ、ありがとう」


突然の事に焦った様に、手渡された包みを受け取る歩美。



「ねっ、ねぇ、これ、開けてもいいの?」

「バカチン。その為にプレゼントしたんだから、開けなくて、どうすんだよ。お好きにどうぞ……只、あんまり期待すんなよ。完全に先取り商品なんだから」

「先取り?……なんか、嫌な予感がするんだけど」

「まぁ、そう言わずに見てみ」


開ける事が不安になったのか、ゆっくりと、丁寧に包装紙を剥がして行く。


全てを剥がし終わり。

中身を見て、歩美は感嘆の声を上げる。



「なんで?なんで龍斗?これ、前から私が欲しがってやつでしょ。なんでアンタが知ってるのよ?」

「ほら、前にも言っただろ。俺はな、お前の事なら、何でも解るんだよ。だから、お前が欲しい物なんか、全てお見通しって訳だ」

「ホントに嬉しいよ………龍斗」


嬉しさが蔓延して来る程の喜びが伝わって来る。


それでこそ、プレゼントした甲斐があるってもんだ。


―――まぁ実際、俺は、彼女の誕生日を忘れる様な最低な奴なんだけどね。

今度は、こちらが申し訳なさが溢れて、彼女の笑顔が直視出来無い。


反省が絶えないな。



何だか、そんなやりとりをしている内に。

何時の間にか、空の方が、ややグズついた天気に成って来た様だ。


―――こりゃあ、ひと雨来そうだな。



「なぁ、歩美」

「なに?」

「ものは相談なんだが。ちょっと、俺ン家に寄っていかないか?なんか1雨来そうな感じだしさ」


そう言った瞬間。

タイミング良く、雨がポツポツと降り始めた。



「あっ、ほんとだ。なんかポツポツ来たみたいね。ん~~~そうだね~。でも、どうしようかなぁ?」

「うん?なんだ寄らないのか?」

「だってさぁ。一応、これでも女なんだし……ほら、おじさんも、ウチに行ったままでしょ。今、龍斗の家って、誰もいないんじゃないの?」


あっ……



「えっ!!いや、おい、勘違いすんな。俺は、別に、そう言う事を言ってるんじゃないんだ」

「ふ~~~ん、どうだか。じゃあ、全然興味ないんだ」

「いや、そこは、そうじゃないけどさぁ」

「ふふっ、ゴメン、ゴメン。じゃあ、少しだけお邪魔しようかな。龍斗ん家行くのも、久し振りだしね」


考えてもいなかった。


そう言えばクソ親父は、歩美の家で爆睡してるんだった。


―――アカン!!

このままやったら、思考がエロモードになりそうや。

等とエセ関西人になって、誤魔化そうとしたが、基本的にそんなのは無理。


1度考え出したら最後、余計な妄想は膨らむ一方。

そんな自分に危険を感じながらも、情け無い童貞野郎は、彼女を家に上げるのだった。


―――まぁ、なんだかんだ言っても、絶対、何もないだろうけどね。



歩美に関してだけは、凄くヘタレですから……俺。

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