【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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伝え始めた真実

公開日時: 2021年10月8日(金) 00:20
文字数:2,130

●前回のおさらい●


歩美ちゃんの言葉を信じて、今日一緒に居る事を約束する龍斗。


そんな中、あり疑問を持っていた龍斗は口を開き始めた。

「ところで、こんな事を聞くのも悪いんだけど。その~……良かったらで、良いんだけど、お前が殺された経緯ってのを、教えてくれないか?又、コッチでも、そう言うのが起こらないとも限らないからな」


確かにそうだ。

幾ら、今日を過ごす事が出来ても、後々問題が有ったのでは意味がない。



「うん……そうだね。私達が悲しい思いをした分。せめてコッチの2人ぐらい幸せになって欲しいもんね」

「ありがとう、もぅ1人の歩美」

「こちらこそ、信じてくれて、ありがとう」


話の経緯は、まずコチラと向こうの差異から話した。


奈々・那美・影山と言う人物が、向こうでは存在しない……もしくは、出会っていない事。

龍斗のオジサン・佐伯さん両名が、性格的に違いが有る事。

私の父が嫉妬深くない事。


まず、この辺の簡単に話してみた。



「ふぅ~、なるほどなぁ。世界が違うと、そうも違うか」

「うん、そうだね。でも、龍斗だけは一緒だよ。何も変らない」

「そっか。向こうの俺も『歩美馬鹿』なんだな。笑えないな」

「うぅん。私だって同じ、コッチでも、アッチでも龍斗しか愛せない。『龍斗馬鹿』だよ」

「ほんとかよ。じゃあ、今の歩美も俺が好きって事か?」

「そうだけど……ちょっと違うかな」

「なんでだ?」

「うん?だって一番好きなのは向こうの龍斗。コッチの龍斗は2番目」

「なんだよ、それ。ヒデェなぁ」

「うん……まぁそんな事より話の続きをするね」

「あぁそうだな。変な所で話の腰を折って、すまんな」

「良いの、気にしないで。龍斗の為だもん」


少し閑話休題をして、話を和ませる。


理由は1つ。


これからの話は、聞くに堪えがたい話だからだ。



「んっ、じゃあ話すね」

「頼む」

「心して聞いてね。ちょっとキツイ話だから」

「あぁ、本当に悪いな」

「うん。大丈夫。……っで、実はね。昨日の時点で、向こうの私と、あなたは結婚する、って話になってるの」

「そっか。でも、又、急な話だな」

「うん……私のお腹に子供が出来ちゃったからね」

「俺の子……だよな」

「うん。間違いなく龍斗の子……でも」


本当は余り話す話じゃない。


心の呵責があって、つい言葉を噤んでしまう。



「でも?……違うって言うのか?」

「うぅん。そうじゃない……その子……生まれて来ないの」

「なっ、なんでだ?なんで生まれて来ないんだ?」

「私が、今日死んじゃうから……それに」

「それに?……それにどうしたんだよ。何か有ったのか?」


言うか、言わないか正直迷った。

実は、ホテルで多人数の男に犯された時、途中で半分位、私自身の意識が戻っていた。

でも、繭に『龍斗が見てる』とか言われて、あぁするしかなかった。


私の意志を、他の私の意志で潰すしか、あの時点での私の逃げ道は無かった。


勿論、あんな無茶苦茶にされたから、お腹の子供が死んだ事も解っていた。


でも、龍斗には、私が『おかしくなってしまった』と思われた方が、幾らかまっし。


その方が、自分自身も、龍斗も、諦めも付いた筈だから……。



でも、それは違った。

アイツは、そんな私に、まだ懲りずに『好き』だと思ってくれた。


だから、ナイフを突きつけられた、あの瞬間、正気に戻った様に見せた。


それが最後だと解ったから。

謝罪と、お別れぐらいは、ちゃんとしたかったからだ。


そんな話を、正直に話した。



「ごっ、ごめん」

「うぅん。これは仕方が無い事。今更どうにもならない……だからせめて、コッチの世界では、そう言う事が無い様にして欲しいの」

「あぁ、そうだな」


コッチの龍斗は、まるで自分の責任の様に思い詰めた顔をしている。



「気にしないで……仕方が無かったのよ」

「でも、なんか俺。こっちでもやってしまいそうだ。向こうの俺より、多く恨みを買ってるしな」

「そっか……でも、そう言う事が有るって事だけでも念頭に置いておけば。もっとあなたは成長出来る筈よ。そんな事も全部飲み込んでね」

「……歩美」

「情けない顔しないでよ。私の好きなアイツは、そんな顔、絶対しないよ。その内、私の事も乗り越えてくれる筈。じゃなきゃ、私も惚れない」

「ほんとに強いな、お前」

「うぅん。強いんじゃないよ。私は死んだから、そう言えるだけ……ほんとは未練タラタラだよ」

「そっか。……で、結局、お前を殺したのって、誰なんだ?流れから言って、犯させたのも、子供を殺したのも、ソイツの仕業って事だろ」

「あぁっ……うん」


最重要な話なんだけど。

これは、本当に言って良いのか、悪いのか解らない。


確かに、犯人は『白石繭』


コイツ以外の誰でもない。


でも、それは向こうの話であって、コチラの話ではない。

だから変に名前を言ってしまったら、例え、聖人君主だろうと、その人を疑ってしまう。


だとすれば、今の所、何も悪くない白石繭との仲がこじれ。

結果、同じ様な事になってしまう可能性が、此処で生じてしまう。



この話を綿密に伝える事は、それ程、危険性の高い話だ。



でも、そうは言っても、恐らくコチラの繭も、私、もしくは、龍斗を恨んでいる事は、ほぼ違いない。

それにコチラの龍斗は。

結果的には助けたにしても、明らかに向こうの龍斗より、繭に酷い仕打ちをしていると考えるのが順当だろう。


っとなれば、どこかしろのタイミングで、繭が復讐をして来ても、おかしくはない。



トータル的に考えても、悩みどころではある。


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