●前回のおさらい●
歩美ちゃんの言葉を信じて、今日一緒に居る事を約束する龍斗。
そんな中、あり疑問を持っていた龍斗は口を開き始めた。
「ところで、こんな事を聞くのも悪いんだけど。その~……良かったらで、良いんだけど、お前が殺された経緯ってのを、教えてくれないか?又、コッチでも、そう言うのが起こらないとも限らないからな」
確かにそうだ。
幾ら、今日を過ごす事が出来ても、後々問題が有ったのでは意味がない。
「うん……そうだね。私達が悲しい思いをした分。せめてコッチの2人ぐらい幸せになって欲しいもんね」
「ありがとう、もぅ1人の歩美」
「こちらこそ、信じてくれて、ありがとう」
話の経緯は、まずコチラと向こうの差異から話した。
奈々・那美・影山と言う人物が、向こうでは存在しない……もしくは、出会っていない事。
龍斗のオジサン・佐伯さん両名が、性格的に違いが有る事。
私の父が嫉妬深くない事。
まず、この辺の簡単に話してみた。
「ふぅ~、なるほどなぁ。世界が違うと、そうも違うか」
「うん、そうだね。でも、龍斗だけは一緒だよ。何も変らない」
「そっか。向こうの俺も『歩美馬鹿』なんだな。笑えないな」
「うぅん。私だって同じ、コッチでも、アッチでも龍斗しか愛せない。『龍斗馬鹿』だよ」
「ほんとかよ。じゃあ、今の歩美も俺が好きって事か?」
「そうだけど……ちょっと違うかな」
「なんでだ?」
「うん?だって一番好きなのは向こうの龍斗。コッチの龍斗は2番目」
「なんだよ、それ。ヒデェなぁ」
「うん……まぁそんな事より話の続きをするね」
「あぁそうだな。変な所で話の腰を折って、すまんな」
「良いの、気にしないで。龍斗の為だもん」
少し閑話休題をして、話を和ませる。
理由は1つ。
これからの話は、聞くに堪えがたい話だからだ。
「んっ、じゃあ話すね」
「頼む」
「心して聞いてね。ちょっとキツイ話だから」
「あぁ、本当に悪いな」
「うん。大丈夫。……っで、実はね。昨日の時点で、向こうの私と、あなたは結婚する、って話になってるの」
「そっか。でも、又、急な話だな」
「うん……私のお腹に子供が出来ちゃったからね」
「俺の子……だよな」
「うん。間違いなく龍斗の子……でも」
本当は余り話す話じゃない。
心の呵責があって、つい言葉を噤んでしまう。
「でも?……違うって言うのか?」
「うぅん。そうじゃない……その子……生まれて来ないの」
「なっ、なんでだ?なんで生まれて来ないんだ?」
「私が、今日死んじゃうから……それに」
「それに?……それにどうしたんだよ。何か有ったのか?」
言うか、言わないか正直迷った。
実は、ホテルで多人数の男に犯された時、途中で半分位、私自身の意識が戻っていた。
でも、繭に『龍斗が見てる』とか言われて、あぁするしかなかった。
私の意志を、他の私の意志で潰すしか、あの時点での私の逃げ道は無かった。
勿論、あんな無茶苦茶にされたから、お腹の子供が死んだ事も解っていた。
でも、龍斗には、私が『おかしくなってしまった』と思われた方が、幾らかまっし。
その方が、自分自身も、龍斗も、諦めも付いた筈だから……。
でも、それは違った。
アイツは、そんな私に、まだ懲りずに『好き』だと思ってくれた。
だから、ナイフを突きつけられた、あの瞬間、正気に戻った様に見せた。
それが最後だと解ったから。
謝罪と、お別れぐらいは、ちゃんとしたかったからだ。
そんな話を、正直に話した。
「ごっ、ごめん」
「うぅん。これは仕方が無い事。今更どうにもならない……だからせめて、コッチの世界では、そう言う事が無い様にして欲しいの」
「あぁ、そうだな」
コッチの龍斗は、まるで自分の責任の様に思い詰めた顔をしている。
「気にしないで……仕方が無かったのよ」
「でも、なんか俺。こっちでもやってしまいそうだ。向こうの俺より、多く恨みを買ってるしな」
「そっか……でも、そう言う事が有るって事だけでも念頭に置いておけば。もっとあなたは成長出来る筈よ。そんな事も全部飲み込んでね」
「……歩美」
「情けない顔しないでよ。私の好きなアイツは、そんな顔、絶対しないよ。その内、私の事も乗り越えてくれる筈。じゃなきゃ、私も惚れない」
「ほんとに強いな、お前」
「うぅん。強いんじゃないよ。私は死んだから、そう言えるだけ……ほんとは未練タラタラだよ」
「そっか。……で、結局、お前を殺したのって、誰なんだ?流れから言って、犯させたのも、子供を殺したのも、ソイツの仕業って事だろ」
「あぁっ……うん」
最重要な話なんだけど。
これは、本当に言って良いのか、悪いのか解らない。
確かに、犯人は『白石繭』
コイツ以外の誰でもない。
でも、それは向こうの話であって、コチラの話ではない。
だから変に名前を言ってしまったら、例え、聖人君主だろうと、その人を疑ってしまう。
だとすれば、今の所、何も悪くない白石繭との仲がこじれ。
結果、同じ様な事になってしまう可能性が、此処で生じてしまう。
この話を綿密に伝える事は、それ程、危険性の高い話だ。
でも、そうは言っても、恐らくコチラの繭も、私、もしくは、龍斗を恨んでいる事は、ほぼ違いない。
それにコチラの龍斗は。
結果的には助けたにしても、明らかに向こうの龍斗より、繭に酷い仕打ちをしていると考えるのが順当だろう。
っとなれば、どこかしろのタイミングで、繭が復讐をして来ても、おかしくはない。
トータル的に考えても、悩みどころではある。
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