【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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崩壊していく幸せ(ネタとして(笑))

公開日時: 2021年9月28日(火) 00:20
更新日時: 2021年9月28日(火) 11:15
文字数:2,197

●前回のおさらい●


龍斗からのプレゼントで、2人で行く映画のチケットを貰った歩美ちゃん。


だけど、休みがない(笑)

 2004年06月15日 PM04:55 井上邸


 良かったら、何方か私を殺してくれませんか?


今なら、なんと、報酬は思いのままで結構です。


イヤ、寧ろ、多分、放って置いて頂いても、あと2~3日で私は死んじゃうと思いますけど……



うわ~~~ん!!


もぅイヤダァァァァァ~~~!!


もぅ無理ィィィィ~~~!!



休みですよ、休み!!

私は、ただ単に休みが欲しいだけなんですよ!!


たったそれだけの事なのに、それさえも許して貰えない。


お願いだから、どうにかして、お休み貰えませんか?

1日でも……いや、もぉ、ここは妥協して、半日でも構いませんから、どうか、どうか、こんな哀れな私に、お休みを下さい……


私には、まだ、遣り残した事が、たった1つだけ有るんです。


このまま死んだのでは、余りにも報われません。


早い話、一日ゆっくり休んで、龍斗と遊びたいんですよぉ~~。


逢いたいったら、逢いたい!!

うわ~~ん!!龍斗に逢いたいよぉ~~~。

あれ以来、一回も逢ってないんだよぉ~~~。

局ですら、バッティングもしないよぉ~~~。


うわ~~ん、うわ~~ん!!

約束してた、映画行きたいよぉ~~~。

2人で渋谷辺りを買い物しながらブラブラしたいよぉ~~~。


どうか私に、夢を下さい。


夢を与える仕事をしてる人間が、夢が無いって、おかしいでしょ。


だから私にも、ほんのささやかな夢を下さい。


贅沢言いませんから、1日だけでもお休み下さい。


お願いします。



……休暇が貰えず、弱ノイローゼ状態な私。


だって、おかしいんですよ!!


もぅ2週間も休む間も無く連続出勤。


これは明らかに、労働基準法違反だよ。

私は不法入国した外国人労働者じゃないって言うの!!


怒りに任せて、楽屋で1人苛立ちを隠せずに、さっきセットして貰ったばかりの頭を、グチャグチャにする。


でも、そんな事に何の意味もない。

ただ、スタイリストさんが来て、ササッと髪をセットされて終わり。


何の抵抗にもなりゃしない。



「ダメだぁ~~(;_;)こんなの中学生の持つストレスじゃないよ」


そんな折『コンコン』っと、ノックがする。


恐らく、今の私にとっては、招かざる客だ。



「どうぞぉ~」

「入りま~す」


入って来たのは池田さん。

私を担当してくれている、駆け出しの新人マネージャーさんだ。


とっても良くしてくれるんだけど。

いじめっ子気質なのか、私の仕事を、後先考えずにドンドン取って来て。

邪悪な笑顔を振り撒きながら、私と龍斗の仲を引き裂く悪魔の様な人です。



―――嘘です。


休みが無いのの腹いせに、意地悪な事を考えてました。


本当は凄く良い人です。


いつもニコニコしてて、仕事は丁寧。

それに、なんでも教えてくれる。



でも……最近は、この人嫌いだぁ!!



―――これ、ほんと。



「お疲れ様で~す」

「あっ、お疲れ様ぁ~。歩美ちゃん、今日も調子良いみたいだね。絶好調じゃないですか」

「ぶぅ~~」

「なに、なに?どうしたの?」

「最近休んだ記憶が無い……死んじゃう。休みたい」

「ハハッ、何言ってんですか。大丈夫、大丈夫、大丈夫ですよ。若いんだから、多少無茶しても、そう簡単に死にませんよ」


笑顔で、そう言う事を平気で言うんだよね、この人。


そりゃあまぁ、この程度の事で死なない事ぐらい解ってるんだけどさぁ……


人間休暇は必要。

休めば、精神的にもリフレッシュ出来るし、体を休める事は大事。


第一、誰だって休みたいよね、人間だもん。



それでも、休みをくれないから……拗ねてやる。



「ぶぅ~~」

「可愛い~~」


あぁ~~~ダメだ。


拗ねた所で効果なし。


なんの効果も期待出来無いよ、この人にわ。



そう言えば……全然関係ないんだけど、池田さんって、龍斗の推薦だった様な気が……



あんにゃろぉ~~!!


私に監視付けやがったなぁ~!!



「お願いが有ります、池田様」

「あぁ~~~、勿論良いですよぉ。休み以外なら何なりと」

「……休み……」

「……無理……」

「ぶぅ~~」

「可愛い~~」


やっぱりダメだぁ~~。


この人には適わないよ。


今日の所は、何をやっても無駄だし諦めよう。


それに池田さんだって。

私と、同じスケジュールで動いてるんだから、冷静に考えれば、池田さんも休んでないんだよね。



「さってと、この後のスケジュールなんだけど」

「ハイ。もぅ何なりと、おっしゃって下さい。私は、牛馬の様に働きます」

「さっすがぁ~、歩美ちゃん」

「いえっ、そんな事はございません。頑張らせて頂きます……ですから休……」


諦め切れていないな。


口癖の様に『休み』って言葉が出てくる。


どうせ聞いて無いんだろうけどね。



「えぇとねぇ。今から移動してヨメウリTVで『AMJ(オール・ミュージック・ジャパン)』の収録。今日は、これ、一件だけですね」


ほらね。


でも、良い事を聞いたよ。

これ一本で終わりだったら、意外と早く帰れるかも。


そうしたらさぁ……ねぇ。



「ほんとぉ~ですか!!」

「嘘」

「うわ~~~ん」


苛めっ子だぁ~。


本物の苛めっ子だぁ~!!


私自身、虐めには耐性があるんだけど、こんな善意のある虐めは初めてだよぉ。



良い池田さん?


虐めって言うのはね。

なんて言うのか、もっと、誰にも解らない様に陰湿にやるもんだよ。


しかも、これって、私の為に取って来てくれた仕事でしょ。



………………グスン(;_;)。


うわ~~ん!!善意に文句は言えないよぉ~。



こうやって、業界の恐ろしさを噛み締めながら、私と言うキャラが壊れて行く。



真面目キャラが売りなのにさぁ、本当に怖いよ、芸能界って……


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