●前回のおさらい●
龍斗からのプレゼントで、2人で行く映画のチケットを貰った歩美ちゃん。
だけど、休みがない(笑)
2004年06月15日 PM04:55 井上邸
良かったら、何方か私を殺してくれませんか?
今なら、なんと、報酬は思いのままで結構です。
イヤ、寧ろ、多分、放って置いて頂いても、あと2~3日で私は死んじゃうと思いますけど……
うわ~~~ん!!
もぅイヤダァァァァァ~~~!!
もぅ無理ィィィィ~~~!!
休みですよ、休み!!
私は、ただ単に休みが欲しいだけなんですよ!!
たったそれだけの事なのに、それさえも許して貰えない。
お願いだから、どうにかして、お休み貰えませんか?
1日でも……いや、もぉ、ここは妥協して、半日でも構いませんから、どうか、どうか、こんな哀れな私に、お休みを下さい……
私には、まだ、遣り残した事が、たった1つだけ有るんです。
このまま死んだのでは、余りにも報われません。
早い話、一日ゆっくり休んで、龍斗と遊びたいんですよぉ~~。
逢いたいったら、逢いたい!!
うわ~~ん!!龍斗に逢いたいよぉ~~~。
あれ以来、一回も逢ってないんだよぉ~~~。
局ですら、バッティングもしないよぉ~~~。
うわ~~ん、うわ~~ん!!
約束してた、映画行きたいよぉ~~~。
2人で渋谷辺りを買い物しながらブラブラしたいよぉ~~~。
どうか私に、夢を下さい。
夢を与える仕事をしてる人間が、夢が無いって、おかしいでしょ。
だから私にも、ほんのささやかな夢を下さい。
贅沢言いませんから、1日だけでもお休み下さい。
お願いします。
……休暇が貰えず、弱ノイローゼ状態な私。
だって、おかしいんですよ!!
もぅ2週間も休む間も無く連続出勤。
これは明らかに、労働基準法違反だよ。
私は不法入国した外国人労働者じゃないって言うの!!
怒りに任せて、楽屋で1人苛立ちを隠せずに、さっきセットして貰ったばかりの頭を、グチャグチャにする。
でも、そんな事に何の意味もない。
ただ、スタイリストさんが来て、ササッと髪をセットされて終わり。
何の抵抗にもなりゃしない。
「ダメだぁ~~(;_;)こんなの中学生の持つストレスじゃないよ」
そんな折『コンコン』っと、ノックがする。
恐らく、今の私にとっては、招かざる客だ。
「どうぞぉ~」
「入りま~す」
入って来たのは池田さん。
私を担当してくれている、駆け出しの新人マネージャーさんだ。
とっても良くしてくれるんだけど。
いじめっ子気質なのか、私の仕事を、後先考えずにドンドン取って来て。
邪悪な笑顔を振り撒きながら、私と龍斗の仲を引き裂く悪魔の様な人です。
―――嘘です。
休みが無いのの腹いせに、意地悪な事を考えてました。
本当は凄く良い人です。
いつもニコニコしてて、仕事は丁寧。
それに、なんでも教えてくれる。
でも……最近は、この人嫌いだぁ!!
―――これ、ほんと。
「お疲れ様で~す」
「あっ、お疲れ様ぁ~。歩美ちゃん、今日も調子良いみたいだね。絶好調じゃないですか」
「ぶぅ~~」
「なに、なに?どうしたの?」
「最近休んだ記憶が無い……死んじゃう。休みたい」
「ハハッ、何言ってんですか。大丈夫、大丈夫、大丈夫ですよ。若いんだから、多少無茶しても、そう簡単に死にませんよ」
笑顔で、そう言う事を平気で言うんだよね、この人。
そりゃあまぁ、この程度の事で死なない事ぐらい解ってるんだけどさぁ……
人間休暇は必要。
休めば、精神的にもリフレッシュ出来るし、体を休める事は大事。
第一、誰だって休みたいよね、人間だもん。
それでも、休みをくれないから……拗ねてやる。
「ぶぅ~~」
「可愛い~~」
あぁ~~~ダメだ。
拗ねた所で効果なし。
なんの効果も期待出来無いよ、この人にわ。
そう言えば……全然関係ないんだけど、池田さんって、龍斗の推薦だった様な気が……
あんにゃろぉ~~!!
私に監視付けやがったなぁ~!!
「お願いが有ります、池田様」
「あぁ~~~、勿論良いですよぉ。休み以外なら何なりと」
「……休み……」
「……無理……」
「ぶぅ~~」
「可愛い~~」
やっぱりダメだぁ~~。
この人には適わないよ。
今日の所は、何をやっても無駄だし諦めよう。
それに池田さんだって。
私と、同じスケジュールで動いてるんだから、冷静に考えれば、池田さんも休んでないんだよね。
「さってと、この後のスケジュールなんだけど」
「ハイ。もぅ何なりと、おっしゃって下さい。私は、牛馬の様に働きます」
「さっすがぁ~、歩美ちゃん」
「いえっ、そんな事はございません。頑張らせて頂きます……ですから休……」
諦め切れていないな。
口癖の様に『休み』って言葉が出てくる。
どうせ聞いて無いんだろうけどね。
「えぇとねぇ。今から移動してヨメウリTVで『AMJ(オール・ミュージック・ジャパン)』の収録。今日は、これ、一件だけですね」
ほらね。
でも、良い事を聞いたよ。
これ一本で終わりだったら、意外と早く帰れるかも。
そうしたらさぁ……ねぇ。
「ほんとぉ~ですか!!」
「嘘」
「うわ~~~ん」
苛めっ子だぁ~。
本物の苛めっ子だぁ~!!
私自身、虐めには耐性があるんだけど、こんな善意のある虐めは初めてだよぉ。
良い池田さん?
虐めって言うのはね。
なんて言うのか、もっと、誰にも解らない様に陰湿にやるもんだよ。
しかも、これって、私の為に取って来てくれた仕事でしょ。
………………グスン(;_;)。
うわ~~ん!!善意に文句は言えないよぉ~。
こうやって、業界の恐ろしさを噛み締めながら、私と言うキャラが壊れて行く。
真面目キャラが売りなのにさぁ、本当に怖いよ、芸能界って……
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