●前回のおさらい●
奈々の前では気丈に振舞っていたが、実際は、苛めが始まった事に少し凹み気味の歩美。
それを解消する為に、龍斗の家の前を通った瞬間。
不意にチャイムを鳴らしたら……出張に行った筈の龍斗が出て来て驚く。
しかも、その龍斗が戻ってきた理由は『歩美が虐められている事を心配』の事。
歩美は、そんな龍斗の行動に感動してキスをしよとするが……
「ダメだ、ダメだ、歩美……それは、今、ダメだ!!」
……のに、何故か龍斗は完全に拒否。
なんで?
お礼も有るんだけど。
本心は、私自身も凄くキスしたいのに……
ぶぅ~!!
「なんで?……嫌なの?」
「アホかアホか。嫌な訳が無いだろ!!」
「じゃあ、なんでダメなのよぉ?どうしてよ?」
「今、歩美にキスしたら……俺が、絶対仕事に行きたくなくなる。こう見えても意志が弱いんだぞ、俺は」
「ぷっ!!なにそれ?馬ぁ~鹿っ」
「んな事言ってもよぉ。お前のキスって、ず~っと俺の意識に残るんだぞ」
「なによ、それ?」
「お前の事ばっか考えて、仕事が手に付かないんだよ」
そうなの?
ごめん、それは知らなかった。
でも、本当にそこまで好きでいてくれたんだ。
もぅ、そんな事言われたらさぁ、余計に、今直ぐにでも『キス』したいよぉ~。
龍斗の意地悪!!
「じゃあ、シッカリ稼いで貰わないといけないから『おあずけ』」
「俺は犬か!!」
「違ったっけ?」
「がっ!!」
でもさぁ、前々から、ずっと疑問だったんだけど。
なんで龍斗は、私なんかが、そんなに良いんだろうね?
性格は素直じゃないし、勉強もそんなに出きる訳じゃない。
運動神経も飛び抜けて良い訳でも無いし……
それにさぁ。
顔にしても『意地悪な猫』みたいだしさぁ。
それに引き換え龍斗はさぁ。
誰にでも気が利くし、勉強も常にトップクラス。
運動神経も良ければ、女の子にもモテモテ。
その上、もう自分の将来まで考えて仕事までしてるんだよ。
まるで漫画の万能主人公みたいな人間なのに……ほんと、なんで私なんだろ?
「ねぇ、1つ聞いて良い?」
「ワンだよ?」
「それ……面白く無いから」
「……なっ、なんだよ?」
「ねぇ。ずっと気になってたんだけど、私なんかの何所が良いの?」
「何所って言われてもなぁ。難しいなぁ」
無いのかな?
「……無いの?」
「いいや。そうじゃなくってさぁ。昔から歩美の全部好きだからさぁ。何所って聞かれても困るんだよなぁ」
「なんか、それって、はぐらかされた気分だなぁ」
「いや、そう言われてもなぁ……なんだろ……やっぱ全部好きなんじゃないか?」
「疑問形で答えられても、困るんだけど……」
「ん~~~、まいったなぁ。そうだなぁ、敢えて一番に上げるなら……」
「……うん、なに」
私は、なにを期待してるんだろ?
コイツにとっての私の存在理由が、そこに凝縮されている様な気がする。
「歩美って、人間が好きなんだよな。なんて言うのかさぁ。お前、滅茶苦茶可愛いしさ」
「かわっ、可愛い?私が?」
「おぉ可愛いぞ。その猫みたいな目が、特に好きだな」
「この目が好きなの?」
「あぁ好きだよ。クリクリしてて可愛いじゃないか」
自分自身が一番『嫌いな目』ですら、龍斗は好きと言ってくれた。
それも、可愛いって言葉をつけて。
「んで、まぁこの辺は、俺自身も、どうかと思うんだけど、素直じゃないのも、なんか女の子っぽくて好きだな。これは、結構、俺の中でポイントが高い」
「えっ?あっ、あっ……」
「なんだろな。……お前って、あんま人前でベタベタしないだろ。それがなんか知らないけど、物凄く心地良いんだよな。俺、ベタベタする奴ダメなんだわ」
「……」
うぅ~~~~、うぅ~~~~!!それは、アンタの勘違いだよぉ~~~。
私だって本当は、恋人同士を満喫して、時には『人と目も憚らず』ベタベタしたいんだよぉ~。
「まぁ後、性格も良いし……何て言うか、結局はなんだかんだ言っても、一秒たりとも、お前と離れたくないんだな、きっと。お前とだったら、ずっと一緒に居たいって気になるんだよな」
「龍斗……アンタって……」
「うん。なんだよ?」
「本人を目の前にして、よくもまぁ、そんな事をイケシャアシャアと恥ずかしげも無く言えるわね」
照れた私は、結局、意地の悪い事を言ってしまう。
だってさぁ。
普通、こんな事、本人を前にして平然として言う?
普通は言わないし、中々言えたもんじゃ無い。
大体、この馬鹿が大人びた事ばっかり言ってるから忘れがちだけど、私達中学生だよ、中学生!!
それに、その一般的な中学生の私には。
突然そんな『プロポーズ』紛いの事を言われても、なんて言って良いのか解んないよ。
ほんと龍斗は難しい。
「はぁ?そりゃ言えるさ。告白して自分の彼女になったんだから『好き』が言えなくて、どうするよ」
「……またぁ~、そんな事を言ってさぁ。本当は、誰にでも言ってんじゃないのぉ」
「お前って、ほんと失礼だな。……じゃあ『歩美だけを愛してる』……なら、良いか?簡単に言える好きと違って、そうそう言うセリフじゃないだろ」
「言いそう」
「あぁ、そうかよ」
そう言って龍斗は、私の左手を掴んだ。
「ちょ……なに?」
「これなら信用するか?」
薬指に指輪が嵌められてる。
んで、龍斗の左薬指のも、同じ物が嵌ってる。
あの……これってさぁ。
「あっ、あの~」
「心配しなくても、俺は、お前以外、誰にも興味は無いよ。……でも、嫌なら、外しても良いぞ」
「……馬鹿ぁ~、嫌な訳ないじゃん」
うっ、嬉しいんだけどさぁ。
アンタ、中学生で『指輪』なんか、普通プレゼントする?
しかも、これって、良く知らないけど何処かの『ブランド』物じゃないの?
幾らしたのよ……ほんと。
「ははっ、気に入ったんなら良かった……俺の給料3か月分」
「給料3ヶ月分って……えぇえぇぇ~~~!!わたっ、わたっ、私、まだ、そんな事まで全然考えて無いよ」
ほんと、何考えてんだろ。
そりゃ嫌じゃないよ。
寧ろ、嬉しいよ。
でもさぁ、まだ付き合って、たったの4日だよ。
ちょっと、気が早すぎるんじゃない?
「アホか?流石に俺も、そこまでは、まだ考えてねぇつぅ~の」
「じゃ、じゃあ、なんで3か月分なのよ?」
「イヤ、たまたま、欲しかった指輪の値段が、俺の給料3か月分だっただけだけど……おかしいか?」
「そうなんだ。……でもさぁ、これ、幾らしたのよ?だいぶ高そうだけど」
「さぁな。憶えてない」
とぼけてる。
コイツは、絶対とぼけてる。
だって、さっき、明確に『3か月分』って言ったもん。
自分の給料を忘れる奴なんか、絶対いない。
まぁ、その辺は、私自身が働いた事が無いから良く解んないけどさぁ。
だって学生……しかも中学生だもん。
解る訳が無いよ。
―――でも、返そ。
幾ら付き合ってるからって、こんな高そうな物を、そう簡単には貰えないよ。
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