【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
殴り書き書店

苛めと言う不幸の分、返って来る幸福

公開日時: 2021年9月6日(月) 00:20
文字数:2,553

●前回のおさらい●

奈々の前では気丈に振舞っていたが、実際は、苛めが始まった事に少し凹み気味の歩美。


それを解消する為に、龍斗の家の前を通った瞬間。

不意にチャイムを鳴らしたら……出張に行った筈の龍斗が出て来て驚く。


しかも、その龍斗が戻ってきた理由は『歩美が虐められている事を心配』の事。


歩美は、そんな龍斗の行動に感動してキスをしよとするが……

「ダメだ、ダメだ、歩美……それは、今、ダメだ!!」


……のに、何故か龍斗は完全に拒否。


なんで?


お礼も有るんだけど。

本心は、私自身も凄くキスしたいのに……


ぶぅ~!!



「なんで?……嫌なの?」

「アホかアホか。嫌な訳が無いだろ!!」

「じゃあ、なんでダメなのよぉ?どうしてよ?」

「今、歩美にキスしたら……俺が、絶対仕事に行きたくなくなる。こう見えても意志が弱いんだぞ、俺は」

「ぷっ!!なにそれ?馬ぁ~鹿っ」

「んな事言ってもよぉ。お前のキスって、ず~っと俺の意識に残るんだぞ」

「なによ、それ?」

「お前の事ばっか考えて、仕事が手に付かないんだよ」


そうなの?


ごめん、それは知らなかった。


でも、本当にそこまで好きでいてくれたんだ。

もぅ、そんな事言われたらさぁ、余計に、今直ぐにでも『キス』したいよぉ~。


龍斗の意地悪!!



「じゃあ、シッカリ稼いで貰わないといけないから『おあずけ』」

「俺は犬か!!」

「違ったっけ?」

「がっ!!」


でもさぁ、前々から、ずっと疑問だったんだけど。

なんで龍斗は、私なんかが、そんなに良いんだろうね?


性格は素直じゃないし、勉強もそんなに出きる訳じゃない。

運動神経も飛び抜けて良い訳でも無いし……


それにさぁ。

顔にしても『意地悪な猫』みたいだしさぁ。


それに引き換え龍斗はさぁ。

誰にでも気が利くし、勉強も常にトップクラス。

運動神経も良ければ、女の子にもモテモテ。

その上、もう自分の将来まで考えて仕事までしてるんだよ。


まるで漫画の万能主人公みたいな人間なのに……ほんと、なんで私なんだろ?



「ねぇ、1つ聞いて良い?」

「ワンだよ?」

「それ……面白く無いから」

「……なっ、なんだよ?」

「ねぇ。ずっと気になってたんだけど、私なんかの何所が良いの?」

「何所って言われてもなぁ。難しいなぁ」


無いのかな?



「……無いの?」

「いいや。そうじゃなくってさぁ。昔から歩美の全部好きだからさぁ。何所って聞かれても困るんだよなぁ」

「なんか、それって、はぐらかされた気分だなぁ」

「いや、そう言われてもなぁ……なんだろ……やっぱ全部好きなんじゃないか?」

「疑問形で答えられても、困るんだけど……」

「ん~~~、まいったなぁ。そうだなぁ、敢えて一番に上げるなら……」

「……うん、なに」


私は、なにを期待してるんだろ?


コイツにとっての私の存在理由が、そこに凝縮されている様な気がする。



「歩美って、人間が好きなんだよな。なんて言うのかさぁ。お前、滅茶苦茶可愛いしさ」

「かわっ、可愛い?私が?」

「おぉ可愛いぞ。その猫みたいな目が、特に好きだな」

「この目が好きなの?」

「あぁ好きだよ。クリクリしてて可愛いじゃないか」


自分自身が一番『嫌いな目』ですら、龍斗は好きと言ってくれた。


それも、可愛いって言葉をつけて。



「んで、まぁこの辺は、俺自身も、どうかと思うんだけど、素直じゃないのも、なんか女の子っぽくて好きだな。これは、結構、俺の中でポイントが高い」

「えっ?あっ、あっ……」

「なんだろな。……お前って、あんま人前でベタベタしないだろ。それがなんか知らないけど、物凄く心地良いんだよな。俺、ベタベタする奴ダメなんだわ」

「……」


うぅ~~~~、うぅ~~~~!!それは、アンタの勘違いだよぉ~~~。


私だって本当は、恋人同士を満喫して、時には『人と目も憚らず』ベタベタしたいんだよぉ~。



「まぁ後、性格も良いし……何て言うか、結局はなんだかんだ言っても、一秒たりとも、お前と離れたくないんだな、きっと。お前とだったら、ずっと一緒に居たいって気になるんだよな」

「龍斗……アンタって……」

「うん。なんだよ?」

「本人を目の前にして、よくもまぁ、そんな事をイケシャアシャアと恥ずかしげも無く言えるわね」


照れた私は、結局、意地の悪い事を言ってしまう。


だってさぁ。

普通、こんな事、本人を前にして平然として言う?


普通は言わないし、中々言えたもんじゃ無い。


大体、この馬鹿が大人びた事ばっかり言ってるから忘れがちだけど、私達中学生だよ、中学生!!


それに、その一般的な中学生の私には。

突然そんな『プロポーズ』紛いの事を言われても、なんて言って良いのか解んないよ。


ほんと龍斗は難しい。



「はぁ?そりゃ言えるさ。告白して自分の彼女になったんだから『好き』が言えなくて、どうするよ」

「……またぁ~、そんな事を言ってさぁ。本当は、誰にでも言ってんじゃないのぉ」

「お前って、ほんと失礼だな。……じゃあ『歩美だけを愛してる』……なら、良いか?簡単に言える好きと違って、そうそう言うセリフじゃないだろ」

「言いそう」

「あぁ、そうかよ」


そう言って龍斗は、私の左手を掴んだ。



「ちょ……なに?」

「これなら信用するか?」


薬指に指輪が嵌められてる。


んで、龍斗の左薬指のも、同じ物が嵌ってる。


あの……これってさぁ。



「あっ、あの~」

「心配しなくても、俺は、お前以外、誰にも興味は無いよ。……でも、嫌なら、外しても良いぞ」

「……馬鹿ぁ~、嫌な訳ないじゃん」


うっ、嬉しいんだけどさぁ。

アンタ、中学生で『指輪』なんか、普通プレゼントする?


しかも、これって、良く知らないけど何処かの『ブランド』物じゃないの?


幾らしたのよ……ほんと。



「ははっ、気に入ったんなら良かった……俺の給料3か月分」

「給料3ヶ月分って……えぇえぇぇ~~~!!わたっ、わたっ、私、まだ、そんな事まで全然考えて無いよ」


ほんと、何考えてんだろ。


そりゃ嫌じゃないよ。

寧ろ、嬉しいよ。


でもさぁ、まだ付き合って、たったの4日だよ。


ちょっと、気が早すぎるんじゃない?



「アホか?流石に俺も、そこまでは、まだ考えてねぇつぅ~の」

「じゃ、じゃあ、なんで3か月分なのよ?」

「イヤ、たまたま、欲しかった指輪の値段が、俺の給料3か月分だっただけだけど……おかしいか?」

「そうなんだ。……でもさぁ、これ、幾らしたのよ?だいぶ高そうだけど」

「さぁな。憶えてない」


とぼけてる。

コイツは、絶対とぼけてる。


だって、さっき、明確に『3か月分』って言ったもん。


自分の給料を忘れる奴なんか、絶対いない。


まぁ、その辺は、私自身が働いた事が無いから良く解んないけどさぁ。


だって学生……しかも中学生だもん。


解る訳が無いよ。


―――でも、返そ。

幾ら付き合ってるからって、こんな高そうな物を、そう簡単には貰えないよ。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート