3月14日 PM12:44 2-A教室
あの衝撃の告白から4日たった。
それでも校内では、あの『例の噂』は未だ健在で、友人達には冷やかされっぱなしだ。
そりゃあまぁ、校内の可愛い女の子を全てフッてきたアイツに告白させたんだから、当然そうなっても仕方ないんだけど。
実際は、何の行動もせずに、私は単なる受身姿勢を貫いただけ。
みんなの様に行動した訳でもなきゃ、特別何かアプローチした訳でもないだけに、どうにも申し訳が無い。
だから、冷やかされても嬉しくないんだよねぇ。
―――まぁそりゃあ『女子冥利』に尽きると言えば、そうなんだけどさぁ……
んで、その告白した張本人なんだけど、此処三日ほど、学校には姿を現していない。
建前上は『風邪』をひいたって事になってるけど。
実際は『おじさんの仕事の手伝い』が忙しいとかで、現在お休み中。
―――あぁ~~~、もぉなんか、アイツが居ないのって退屈。
学校来るのも1人だしさぁ。
チャリ乗せてくれる人も居ないしさぁ。
馬鹿話する相手もいない。
なんかさぁ、もうアイツって、多分、私の生活の1部なんだろうなぁ。
……なんて思いに耽りながら、学校の窓から晴れ渡った空を窓越しに見ていた。
「なになに?幸せ者が浮かない顔して、ボケ~ッと空なんか見上げてんの?」
昼休みだから、D組から奈々が遊びに来たみたいだ。
……にしても、奈々も暇だねぇ。
「別にぃ~」
机に体を預けて、猫みたいに伸びてみる。
私の目が釣り目なだけに、余計猫っぽく見えるかも。
「ふ~ん、どうせ氷村の事でも考えてたんでしょ」
「まぁ~ねぇ」
「あら?えらく素直になったもんだ」
「そりゃさぁ、毎日みんなに冷やかされてたら、慣れもするよぉ」
「ふ~ん、そんなもんかねぇ」
「そんなもんだよ」
奈々は、きっと、もっと驚くリアクションを期待していたのだろうけど。
さっきも言った様に『慣れ』って怖いもんで、毎休み時間、冷やかされ続けた私は、少々撃たれ強くなってるみたいだ。
……それにしても、今日は暖かいなぁ。
なんかポカポカしてる。
アイツ、今頃、何してんだろ?……とか想って意味も無くニヤける。
「んで?愛しのダーリンは?アイツ、此処最近、休んでるみたいだけど」
「多分、学校には風邪とか言ってるけど、仕事なんじゃない」
「あれ?アイツ、なんかバイトでもしてるの?」
「うぅん。バイトじゃなくて本業」
「本業って……アイツ、まだ私達と同じ中学生だよ。アイツってば何やってんの?」
「実は、此処だけの話なんだけど。アイツのお父さんって、かなり有名なスタイリストなんだよねぇ。んでアイツは、おじさんの後を継ぐ為に修行中」
「へぇ~~。けど、いやはや、付き合って3日で出張とは……先が思いやられるね」
「まぁ~ねぇ~。因みに、その出張に行ったのは、告白初日なんだけどね」
そうなんだよねぇ。
告白した初日から、アイツは仕事に行っていない。
ドキドキしてた私は、なんかとんだスカンを喰らった気分。
まぁ多分、あの出来事自体が、アイツにとってもイレギュラーだったんだろうなぁ。
「でもさぁ。普通、あんな日の後に仕事入れるかねぇ」
「良いの良いの。人間、仕事は大事だよぉ」
「あら?奥さんに方も悟られてるよ」
「まぁ~ねぇ~」
本当は、すっごく構って欲しいんだけどさ。
その反面、アイツの邪魔するのも悪いしさ。
私自身も、アイツに理解力のある所も見せて置きたい訳さ。
まぁ一番の理由は、そんな事ぐらいで、嫌われたくないのさ。
「まぁまぁ、それはそれは、お幸せな事で」
「そうでも無いけどね。……ところで奈々、昼休みにわざわざ来るなんて、なんか用事でも有ったんじゃないの?」
「あぁそうだ、そうだ。突然で悪いんだけど。アンタさぁ、最近、身の回りでなんか変な事とか起こってない?」
「う~~ん?これと言って思い当たる節は無いかな」
「あぁっそ。それなら良いんだけど」
「うん?又なんで、そんな事を聞くの?」
「うん……実はね」
奈々は小さな紙切れを、誰にもバレ無い様に机のしたから渡してきた。
なんかこの紙切れ……妙に嫌な予感がするなぁ。
「これなに?」
「う~ん。まぁ言い難いんだけどさぁ。さっきウチのクラスで回ってた伝言メモ」
嫌な予感は急加速。
女の子同士が回すこう言う物には、良い事が書いてあった試しが、産まれて、この方1度たりともない。
―――って言うか、多分、アレなんだろうなぁ。
本当は、見るのも嫌なんだけど。
奈々がワザワザ持ってきてくれたのに、これを見ない訳にもいかないよね。
もぉしょうがないなぁ。
意を決して、その嫌な予感だけが漂っているメモを開いてみてみる。
―――はぁ~~~、やっぱりなぁ。
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