【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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もしも私を信じて貰えるのならば……

公開日時: 2021年10月7日(木) 00:20
文字数:2,048

●前回のおさらい●


コチラの世界での体の主動権を得た歩美ちゃん。


その後、直ぐ様、龍斗の逢って、今日ある悲劇を語ろうとする。

「ちょ、ちょっと待て。殺される?殺されるって、どういう事だよ?悪いが、話が突然過ぎて、なにも見えてこないぞ」

「うん……」

「それに信じて貰えるとか、なんとか言ってたけど。それって、どういう意味なんだ?」

「うん。信じられないかも知れないけど、私、アナタの知ってる歩美じゃないの」

「はぁ?俺の知ってる歩美じゃないだって?お前……なに言ってんだ?」

「うん、だよね。そうなっちゃうよね。でも、お願い。私の頭が、おかしくなったと思ってくれても良いから、話だけでも聞いて」

「あぁ……うん」


こんな事を言っても信じて貰えないかも知れないけど、今はこうするしかない。


何故なら私は、もぉアナタの悲しい顔なんて2度と見たくないの。

例え、今日1日だけの付き合いであっても、この事態はなんとしても避けたい。


今日1日を越えれば、後は、この世界の私が何とかしてくれる。


そう願うしかない。



「おかしな事を言って、ごめんね。それでなん……」

「わっ、わりぃ。此処じゃあ、ちょっとなんだから、家に入んねぇか?」

「そうだね」


言われるがまま室内に入る。


相変わらず、家の中は、感心するぐらい整然としている。


私は、そのままリビングに通され、ソファーに腰を掛ける。

龍斗は、その間に、台所から飲み物を持って戻ってくる。



「取り敢えず、飲み物でも飲んで、落ち着いて話してくれ」

「ありがと……」


飲み物を一気に飲み干し、話す体勢を整える。



「それで……さっき『殺される』って言ってたけど、どう言う事なんだ?」

「うん。多分、信じないと思うけど……私は、この世界の人間じゃないのよ、違う次元に居た歩美なの」

「あぁ~っと……確認するが、それ、本気で言ってんだよな?」

「うん」

「う~ん、そっか。じゃあ、話を続けてくれ」

「信じてくれるの?」

「悪いが、まだ半信半疑だ。ただ言える事は、歩美は、そんな冗談を言って、俺を休ませる様な女じゃない」

「うん、ありがと」


龍斗は半信半疑と言ったけど、間違いなく信用してくれている。



「まぁそれで、そっちの歩美は……お前は、どうなったんだ?」

「今日、この日に殺された。……正確には、まだ死んでないんだけど。もぅ恐らく私は助からない」

「じゃあ、もぅ1つ質問。コッチの歩美は、今どうなってるんだ?」

「ごめん……解らないの」

「どう言う事だ?」

「うん……私は、アナタに告白して貰った日から、今まで、ずっと走馬灯の様に、思い出の中を彷徨っていたんだけど『今日と言う日が来て、何とかしなきゃ』って思ってたら。朝には、この体に居た。……信じられないよね。こんな話」

「信じるも、信じないもないだろ。現実そうなってんだろ」

「……うん」


彼の目には疑いはない。


そこまで信じて貰えるのは、コッチの世界でも、アッチの世界でも同じの様だ。


どっちの歩美も愛して貰っている。


向こうのアイツが言ってた『お前を信じる』って話は、嘘じゃないんだ。



「で?俺に、どうしろって言うんだ?」

「うん……出来れば、今日1日、何所にも行かないで欲しいの」

「そっか……もう一回確認するけど。それ、本気だよな」

「うん。本気」

「解った。なら、今日は1日、お前に付き合う。でも、嘘だったら承知しないぞ」

「うん。信じてくれて、ありがと……絶対、こんな事、信じて貰えないと思ってた」

「自分でもな。すげぇ馬鹿な話だとは思うんだけど……信じるよ。お前が、何所の歩美だろうと、歩美には違いないんだろ。なら、オマエの言葉を信じないで、どうするんだよ?」

「あっ、あっ、ありがとう、龍斗。何所の世界の龍斗も変わらないね……大好きだよ」

「うん。俺も、そんなお前が大好きだよ」


そう言って龍斗は、そっと抱きしめてくれた。


私は、あの空間の中で1年少しの間を過ごし。

本当は、少し、この世界の自分に嫉妬していた。


抱き合える体。

優しい言葉を掛けて貰える体。

いつも心配して貰える体。


本当に羨ましかった。


そんな中、今だけでも、自分の体を得てしまった。

だから、そんな感情が表面化して、龍斗の抱きしめた体に力を入れて泣いてしまった。



「もっ……もうね、逢えないと思ってた!!もぅね、抱きしめて貰えないと思ってた!!……ゴメン、ゴメンね。少しだけこうさせて」

「歩美……」


いけない。


いけないよ。


私が、歩美なのには違いないけど、私はコッチの世界の人間じゃない。


だから、これは、龍斗に浮気させてるのと同じだ。


体を借りてるのに、そんな事しちゃいけないよ。



「でもね……ごめん。この体は、こっちの歩美のものなんだよね。……だからゴメンね」


そう言って龍斗の体を押し放す。



「ふぅ~……少しぐらい甘えろよ。お前だって歩美なんだろ。お前が甘えるのは、いつもの事だろ」

「うん、そうだね、ありがと。でも、もぅ大丈夫だよ。それにコッチの歩美に悪いしね」

「そっか……」


納得してくれたのか、龍斗は、私の体には触れない。


本当は、もっと龍斗の体を感じてたいんだけど……それはダメ。


私は、そんな彼を見ながら、今日1日を、どう過ごすか考えていた。



そんな中、龍斗はある事を口にした。


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