●前回のおさらい●
週末、強制的に龍斗の仕事本場に連れて行かれた歩美。
そこで、佐伯庄司と言う老練なカメラマンと出会い。
歩美は『国民性豊かな美少女コンテストに準優勝したら、写真集を作って貰える』と言う約束をして貰う。
(↑龍斗が歩美を仕事の現場に連れて行った理由)
明けて月曜日。
疲れから、学校で呑気にうたた寝をしている歩美だが、例の苛めは継続中。
この日も、椅子に画鋲や、机に嫌がらせみたいな落書きをされていた。
だが、虐められ慣れている歩美は、これ等をさっさと処理し、再びうたた寝を開始する。
「おい、奈々。井上の奴、なんかぐっすり寝てるぞ。コイツ、ほんとに虐められてるのか?」
「うわっ……ほんとだ。どんな神経してるんだろ、この娘」
あれ、奈々だ。
それに影山も仲良く一緒みたいだ。
なんだろうな?
なんか用事かな?
「……ウトウトしてるけど寝てないよ」
取り敢えず、解り易く1人腕枕から視線だけをチラッと覗かせて、奈々を見る。
「なんだ、起きてたの?」
「まぁ~ねぇ~……んで、なんか用事?」
「一応、虐められてないか、心配だから、確認だけしに来たんだけど」
「うん、確認?あぁそれなら、朝から机にマジックで『ブス美別れろ』とか『ブス感染源』とか落書きされて、大忙しだったよぉ」
私は何も気にして無いので、呑気にそんな回答を返した。
「はぁ?んだよそれ?誰だよ、そんな馬鹿みたいな幼稚な事する奴は、このクラスの奴か?」
あれ?なんか影山が怒ってるよ。
やっぱ、熱いなぁ、影山は……馬鹿だけど。
「気にしない、気にしない。モテない奴がヒガンでやったんでしょ。どうせ、この程度の幼稚な事しか出来無いんだから、放っとけば良いの、放っとけば」
「んだよ、こんな事されて、井上は口惜しくねぇのかよ?」
「うん?全然口惜しくないよ。だってさぁ、こんなのバレでもしたら『停学』になるし、内申書に響いて高校受験厳しくなるんだよ。相当な馬鹿じゃない限り、その内、辞めるって。心配ない、心配ない」
「そっ、そうか。……ってか、さっきから気になってたんだけど、お前ってさぁ、そんなキャラだっけ?」
「そぉ~だよぉ~、知らなかった?」
「奈々……そうなのか?」
「本人が、そう言うんだから、多分、そうなんじゃない?知らないけど」
「そう……なんだ」
猫目だからって、見かけだけで、簡単に人を判断しちゃダメだよ、影山。
私は、あの馬鹿以外になら、基本『ちょっと意地悪な緩キャラ』なのさ。
アイツだけは、いっつも懲りもせずにイラナイ事バッカリするから、お仕置きにバシバシ叩くけどさ。
別に、私が怖いキャラな訳じゃないのさ。
「そ・れ・で、どうしたのよ?他には、何か用事はないの?今日は色々あって疲れてんだよね」
「そう!!それなんだけどさぁ。私も、影山も、退屈しのぎに犯人探しでもしようと思ってるんだけど……歩美はどぉ?」
「そう言うこった。奈々に頼まれたのも有るけどよぉ、俺が一肌脱いでやろうってんだ。なんか一方的に、こんな事する奴は許せねぇ。やり方がキタネェぜ」
あれあれ、思った以上に、影山も奈々も熱いんだねぇ。
まぁそりゃさ。
アンタ等の言う通り『虐め』は良くない。
これから毎日、落書き消す身にもなって欲しいって思ってるのは認めるけどさぁ。
別に、そんなに事を荒立てなくても良くない?
そんな事に時間を使うの勿体無いし、なにより面倒臭いよぉ。
それにね。
今の私は、さっきはナンダカンダ文句言ってたけど。
本心じゃあ、アイツと3日間一緒に過ごせて『幸せモード』の満開なのさ。
この程度じゃあ、ビクともしない訳なのさ。
「う~ん。探しても良いけど、どちらかと言うと、別によくない?」
「そうなのか?けどよぉ。相手に好き勝手やられっぱなしってのも癪に障るだろ。その辺は、どうなんだよ?」
「う~ん……別にかなぁ」
「アンタ、さっきから、何でそんな寛大なのよ?虐められてるって自覚有るの?」
「悪いけど、この程度じゃ、苛められてる自覚なんか、全然ないよ」
奈々は、明らかに大声で、それを言った。
ほんと熱いなぁ奈々は。
「……大体そんなさぁ、自分が上手くいかないからって、人を虐める様なツマンナイ奴等と、私は、ほんと関わりたくないんだよねぇ。人に『ブス』だのなんだの言う前に、お前の顔を鏡で見てみってぇの」
「うわぁ……」
「奈々……多分、そいつはさぁ。私なんかより、顔も、心も、醜いブスなんだろうね。……だから、そんなさぁ、心の薄汚い人間と、少しでも、私は関わりたくない訳さ」
クラスの全員に聞こえる様に言ってやった。
流石に、クラス全体が『ザワザワ』なんて音を立ててザワめいてる。
一瞬にして視線が集まったのが耐えられなかったのか、奈々は、やや動揺を隠せない。
「ちょ……歩美」
「なぁ~にぃ」
「何も、そんな大きな声で言わなくても」
「なんで?」
「そんなの敵ばっかり作っちゃうからに決まってるでしょ」
「良いよ。別に……そんなさぁ、隠れてコソコソしか出来無いヘナチョコとか、誰かが替わりにやってくれて、心の中でニヤニヤほくそ笑んでる卑怯者なんか、初めっから味方じゃないし……第一そんな奴なんて全然怖くもないも~ん。寧ろ、単なる馬鹿だよ馬鹿。相手にするだけ損する」
更に私は、声を高らめて言葉を吐く。
その言葉に反応して。
数人の女子が怖い顔して、こちらを睨んでる。
これで奈々と、影山以外、教室にいる人間が、ほぼ私の敵に成ったと考えて良い。
ほんと面白い反応。
みんな、これをやると、同じ反応するんだよね。
ん?何やってるかって?
ほら、さっき奈々と影山が『犯人捜そ』って言ったじゃん。
だ・か・ら、犯人を蜂の巣から蜂を出すみたいに、炙り出してるのさ。
「それとさぁ、もう1つ言いたい事が有るんだよね。……人が大人しくしてるからって、良い気になってると痛い目見るよ。ねぇ掛川さん。どう思う?」
さぁ、此処での主犯は貴方でしょ。
か・け・が・わ・さん。
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