【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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見解の違い

公開日時: 2021年8月22日(日) 00:20
文字数:2,144

●前回のおさらい●

那美から、龍斗へのプレゼントを頼まれた歩美。


それに呆れた奈々に、歩美は『氷村が好きなのは歩美だ』と告げられ困惑する。

そしてその序に、昔、奈々が、龍斗を狙っていた事実も知る事に成る。

「へっ?……ないないないない。それだけは、絶対無いって。それに奈々がアイツの事好きなんて聞いた事も無いよ」

「ごっ、ごめん……昔アイツが好きで仕方なくって、抜け駆けした」


奈々が抜け駆けして、アイツにコクったなんて話、初めて聞いた。

みんな知らない内に、結構、動いてるんだなぁ。


怒りよりも先に、寧ろ、感心してしまった。



「そっ、そうなんだ」

「ほんとゴメン」


別に、私と、アイツと付き合ってる訳じゃないんだから、奈々が謝る必要は何所にも無い。


そりゃあね。

もし……もしもだよ。

私がアイツと付き合ってたら、奈々にも、龍斗にも『脳漿が飛び出す程のチョップ』を脳天に食らわすけどさぁ。


結局、私は、アイツと付き合って無い訳でしょ。


なら、恋愛は自由だと思うし。

声を出して、それを伝えれる奈々が、少し羨まくも思える。


結局、なにも出来無い私には、そんな事を言う資格すらない。



「別に奈々が謝る事じゃないと思うんだけど」

「うん。まぁそうなんだけどさぁ。後腐れがあるのも嫌だし。実際、上手く行って付き合ってたら、そんな事が言える心境じゃなかったと思うよ」

「まぁ、確かに、そう……かな」

「だからさぁ。抜け駆けした私が、こんな事を言うのも変だけどさぁ、歩美が、本気でアイツの事を好きなんだったら。那美の、それ、返した方が良いんじゃないかな?私の勘が正しかったら、那美100%傷つくだけだよ」

「でもでも、それって、奈々の思い過ごしかも知れないじゃん。……アイツ、私に、そんな素振り見せた事もないよ」

「そぉかなぁ?私が見てる範囲でも、結構あるんだけどなぁ。……まぁ歩美は、かなり鈍感な方だから仕方ないね」

「鈍感って言われても……ねぇ」


先刻言ったが、アイツは、そんな素振りを、一切、私に見せた事が無い。

寧ろ、私が嫌がる事を平気でする。


もし、それが奈々の言う『好きの証明』なんて言うのなら、アイツは、ただの小学生以下のガキ。

俗に言う、好きな子に、ちょっかいを出す、なんて言う奴。


人よりも大人びた態度を取るアイツが、そんな稚拙な事をするとはイマイチ思えない。



「よ~く考えてみなよ。身に憶えない?」

「なんかねぇ~。幾ら考えてもさぁ、思い出すって言えば『意地悪』なトコだけだよ」

「それよ、それ。それって、絶対、アンタにしかしないんじゃない?」

「まぁそうかもしれないけど。そんなのさぁ、ただ単に、からかい易いからなだけじゃないの?それにさぁ……小学生じゃあるまいし」

「そうかなぁ~。絶対、間違い無いと思うんだけどなぁ」

「ないない」


手を左右に振って、完全否定する。


言ってる自分が虚しくなってきた。



「まぁ良いけどさぁ。歩美さぁ、絶対、後悔するよ」

「あぁまぁねぇ~。そうなんだけどさぁ。今の関係崩すってのも……中々ねぇ」


愚痴愚痴、難癖つけて『コクる』と言う行為を、先延ばしにしようとしているのは、自分でも良く解っている。


でもさぁ、女の子なんだから、ヤッパリ相手から告白されたい。

……なんて、乙女脳が発動してしまう訳よ。


まぁ、なんにしても私は、ある意味『恋愛恐怖症』なのかもしれないな。

なんともズルイ女だよね。


―――けどその分、絶対アイツからコクられる事は無いと思うけど。



「はぁ~、まぁ良いや。それよりもさぁ、那美の件どうするつもりなの?」

「どうするもなにも……渡すつもりだけど」

「はぁ~、あんたの頭は、クラゲかなんかが入ってる訳?」

「ちょ……そんなもん入って無いわよ」

「誰も、そんな事マジに言ってないでしょうよ。馬鹿なのって聞いたの?」

「そりゃあさぁ、私は奈々みたいに賢くは無いけど……馬鹿って言われる程、成績は悪くないと思うけど」

「歩美……アンタ、一回死んだら?」

「ちょ、何でそこまで言われなきゃいけないのよ」

「話が噛み合ってないでしょ。那美の話をしてるのに、何でアンタの成績の話が出てくるのよ」

「あっ、そっか……ごっ、ごめん」


私は、どうやら思った以上に『天然』らしい。


奈々の話を、本格的に曲解していたみたいだ。



「ねぇ、歩美。話戻すけど。人が良いのも、結構だけどさぁ。傷付くのが解ってて、那美のプレゼント渡すのってさぁ。可哀想じゃない?」

「でも、それって、奈々の勝手な見解でしょ。上手く行くかも知れないでしょ」

「そんな事無いよ。私は100%ないと思うよ……だから断るんなら、今が最後なんじゃないかな。どうせなら、自分から渡させた方が、那美も後腐れがないんじゃない」

「あぁ、もぅウルサイなぁ!!私が良いって言ってんだから、ほっといてよ!!」

「なっ!!……あぁそう。歩美が、こんな『わからず屋』だとは思わなかった。勝手にすれば」

「言われなくても、勝手にするよ」

「もぉ絶交だ!!」

「こっちこそ絶交だ!!」


確証の無い事を、しつこく言って来る奈々に対して、怒りに任せて『絶交』を言い渡してしまった。


冷静になれば解る事なんだけど。

これは那美を思っての話であって、なにも私達が喧嘩をする理由なんて、何所にもなかった。


そんな風に馬鹿馬鹿しいと思いつつも、一度出した言葉は、今更引っ込めれない。


私は意地になって、アイツと、那美をつき合わせてやろうと考え始めていた。


そんな最中、奈々が最後の捨て台詞を吐きながらバスに乗った。



「ねぇ、歩美……私は、ちゃんと警告したよ」


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