●前回のおさらい●
何故か最悪な状態に成ってしまった、歩美ちゃんの誕生日会。
その状況を、必死に成って打開しようとする歩美ちゃんに、玄関口でチャイムが鳴る音が……
慌てて、そちらに向かおうとするが。
歩美ちゃんよりも先に、困ったオジサン方にうんざりしていた歩美の母が動いてしまう。
なんて期待して玄関に行って見たら、来てたのは花屋さん。
なんだか凄く大きな花束を持って来てくれている。
しかも、その花束って言うのが、薔薇……なんてベタなものではなく、綺麗に、また可愛くコーディネートされた花束。
ラッピングしてる包装紙ですら拘りがあり、トータル的に上手くコーディネートされた見事な花束。
なんとも、アイツはセンスが良いなぁ。
薔薇一杯の花束なんて送ってきたら、ドン引きだったのに……
私の好みを、良く解ってらっしゃる。
早い話、嬉しい!!
お母さんも、それを見て妙に関心してるしね。
良いでしょ~、お母さん。
お父さんには、真似出来無いでしょ~。
なんて、お母さんに、妙なライバル心を剝き出しにする私。
「良かったわね、歩美」
そんな言葉を言ってるけど、お母さん目が笑ってない。
あっ、あれ?
そこは普通、娘の彼氏がセンス良いんだから喜ぶ所じゃないの?
「うっ、うん?……お母さん、どうかした?」
「ちょっとね。……花束を見て嫌な事を思い出したのよ」
「どっ、どうしたの?」
「お父さんたらね……」
あぁそう言う事かぁ。
お父さんって、そう言うセンスが、全くと言って良い程、無いもんね。
「初めてのデートの時、タキシードに『大きな薔薇の花束』持って来たのよ。……しかも、指定した待ち合わせ場所が『ハチ公前』よ。……信じられる?」
「うわっ!!自分の親ながら、信じられない!!」
「だから、こんな綺麗な花束贈ってくれる龍斗君って、ほんとセンスの良い子ね」
「良いでしょ~」
なんか、お母さんに初勝利な感じ!!
ヤッパリ、神様は公平だ!!
んっ?ちょっと待って……って事はなに?
私の考えからいけば、アイツにとって、私って、そう言う存在な訳だよね。
うぅ~!!なんか一気に悲しくなってきた。
しかも、私のそんな気持ちを追い討ちする様に、この後、意外な言葉が、母の口から齎された。
「お母さん、龍斗君貰ちゃおうかな」
「へっ?」
「だってお母さん。お父さん以外と付き合った事ないんだもん」
ジョ……ジョ……ジョ~ダンじゃない!!
あげない。
あげない。
絶対にあげない。
それに冗談でも、そう言う事を言わないでよ。
一瞬お母さんが、龍斗と付き合ってる所を想像しちゃったじゃない!!
それも、お似合いのパーフェクト・カップル。
冗談じゃないよ!!
龍斗は私の!!
でも、お母さんが、本気でそんな事を言ったら、アイツどうするんだろ?
私、簡単に捨てられるのかなぁ?
先程のお母さんへの初勝利の心境は消え、悲しくなってきた。
「お母さん……冗談でも、そんな事は言わないでよ。私から龍斗を盗らないで……お願いだから」
「えっ!!」
母にしたら、少し私をからかっただけのつもりなんだろうけど、私にとって、これだけは本当に死活問題。
なにがあっても、冗談ではすまない。
こう言う所が、まだまだ私は子供なんだろうな。
それでも言葉は切れる事無く、母に向かって投げかける。
「私には、龍斗しかいないから……あとの誰が、みんな、お母さんを好きになっても良いから」
「歩美……」
「だから、もぅ絶対そんな事だけは、冗談でも言わないで」
「ごめんね、歩美。……お母さん、少し悪ノリが過ぎたみたいね。でも、歩美は、本当に龍斗君が好きなのね」
「うん……大好き。お母さんは、お父さんの事が好き?」
「好きよ」
「でも、お母さんだったら、別にお父さんじゃなくても、選り取り見取りだったんじゃないの?」
「そうね」
そこの否定はしないんだ……
それにやっぱり、選り取り見取りだったんだね。
「でも、お母さんね。昔から、変に器用な人より、不器用で一途な人の方が好きだったのよ。だからこそ、お父さんの事が好きになったのかもね。……って、もぉこの子は、母親になに言わせるのよ、恥ずかしい」
人それぞれの好みかぁ……私には、まだ解らないや。
ヤッパリまだ、見た目とかで判断しちゃうもんな。
そう考えると、ほんと私は、まだまだ子供だなぁ。
「ところでお母さん。お母さんって、大学卒業1年で、お父さんと結婚したよね」
「したわよ」
「それって、早くない?」
「そぉ?でも、お母さん、お父さんにゾッコンだったもん」
「そうなんだ……でも、幾ら好きだからって、そんなに簡単に決めれるものなの?」
「決めれるわよ」
「なんで?」
「アナタが、お腹の中にいたからよ。それにお父さん、もうその時には、実家のパン屋さんを継いでたしね。経済力があって、好きな男性、最愛の娘がお腹に居る。結婚しない理由なんて、どこにもないでしょ」
あっ、そっかそっか!!
私、その時点で、もぅお母さんのお腹の中に居たんだ。
どうも、お母さんの見た目で年齢が狂ちゃうんだよね。
お母さん39,39。
んっ?
そう言えば、未だにお母さんの年齢を言い当てた人って居ないよね。
それに、あの馬鹿が言ってた『親父でも解らない』って本当かなぁ?
う~ん、なんか妙な事が気になってきたぞ。
なら此処は1つ、ノリの良いお母さんに頼んで、龍斗のオジサンを一回試してみよっと。
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