【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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私を殺した真犯人

公開日時: 2021年10月9日(土) 00:20
文字数:2,015

●前回のおさらい●


事件の概要はある程度は語った。


だが真犯人だけは、まだ歩美ちゃんの口からは語られていない。

「それは一体、誰なんだ?」

「言えない」

「なんでだよ!!お前、ソイツに殺されたんだろ!!」

「……向こうではね。でも、この話を聞いてもまだ、自分に思い当たる節はない?」

「えっ?……まさか…白石……繭……か?」

「うん。そうだね。しかも向こうの龍斗は、アナタほど繭に恨みを買ってなかった……けど、結果は聞いての通り、無惨なもの。確率から言えば、十分アナタの方が危険な状態なのよ」

「じゃあ、なんで教えてくれなかったんだ?」

「勘違いしないでよ龍斗。私は、アナタ達を助けるつもりはあるけど。自分勝手な思い込みだけで妄想を言うつもりはないわ。これは、何処まで行っても向こうでの出来事なの。……それに、これだけは忠告して置いてあげる。私でも、あんな事させられたらアナタを殺すわ」

「お前が、俺を殺す?だと」

「うん。間違いなく殺すわ」


まだ理解出来無いようだ。


これは難しい話では有るんだけど。

此処をキッチリと理解して貰わないと、永遠に繭の恐怖が消える事はない。

自分が如何に彼女に酷い事をしたのかを、理解して貰わないと解決の糸口すら見えて来ない。


それに、あんな女の子の気持ちを考えない事を、繰り返す愚かさも知って欲しい。


じゃなければ、どうやってもフォローのしようもない。


兎に角、ただ助言したからって、単純にアッケラカンと助かって貰っては困る。

全てが繭の逆恨みだとしても、理解と対応策は必要だ。


そう思えた。



「なんで……なんでだよ?なんで俺が、アイツに恨みを持たれなきゃいけないんだよ?助けてやったのに」

「龍斗が助けたのは間違ってないよ……でも、恨みを持たれるのは当然だよ」

「おかしいだろ。助けてくれって言ったのは、そもそもアイツだぞ!!それになんでもする、って、納得したのもアイツじゃないか!!」

「珍しく観点がズレてるよ。そうじゃないでしょ」

「だとすると何か?男女の違いっとでも言うのか?」

「ほら、ヤッパリ解ってるじゃない。女って言うのはね。救けて貰っている時は、それなりに、なんでも納得は出来るけど。それ以降はダメ。自分が売れてしまったら、自分の過去を清算したがるものなのよ」

「だからって……」

「ほら、又、忘れてるよ」

「何がだよ?」


肝心な事を完全に忘れている。


一体、どうしちゃったのよ龍斗?

こんなややこしい話だけに、動揺する気持ちは解らなくもないけど、今のアンタは抜け過ぎてるよ。



「あの子の性格よ。人にして貰う事が当たり前。恥をかかされるのが嫌い。それに私達が上手くいくのも嫌。全てが気に入らないのよ」

「ちょっと待て。アイツの性格の事については解らなくもないが、なんで俺達の事まで干渉してくるんだよ」

「簡単な事じゃない。繭は、アナタが好きなのよ。自分が困っている時に、唯一助けてくれたのは、アナタだけだったもん」

「そんな自分勝手で迷惑な話有るかよ!!」

「残念だけど、それは有るのよ。その話だって、私の実体験が語ってるじゃない。だから、消えて欲しいのは、アナタじゃなくて私。それは、恐らく、この世界でも同じ。繭はアナタじゃなくて私を狙う」

「じゃあ、どうすれば良いんだよ?今更、過去なんて精算出来ないぞ」


なんでこっちの龍斗は、こんなにモノを考えないの?


もっと出来るでしょうに!!



「私だって、そんなの解らないわよ!!……第一それが解っていたら、そう易々と殺されたりはしないわよ」

「あぁ、確かに、そうだな。ごめん……すまない」

「そんな反省は良いから。早く、どうするか考えなくっちゃね……私には、もぅあんまり時間がないの」


……時間が無い。


これは嘘じゃない。

体の占有権の時間を、誰かが決めた訳じゃないけど、恐らく、こんな都合の良い時間は、長くて今日1日。

短かったら、それこそ、今すぐに終わってもおかしくない。


だから、この場での甘えは許されない。



「う~ん……くっそ~!!こんなもん、どうすりゃ良いんだよ!!なんも浮かばねぇよ」

「カリカリしないで、そんなの意味無いから」

「そりゃあ、お前は、別の世界の話だから良いけど。俺は、そうはいかないんだぞ!!」

「ごっ、ごめん……そうだよね」


確かに、これは私の認識不足だ。


私にとっては終わった話でも。

この龍斗には、これから一生付き纏うかも知れない話。


時間がどうこう言う前に、もう少し彼の心境を考えるべきだった。


何やってんだろ私……ほんとダメだな。



「あっ、ごっ、ごめん。なっ、なに言ってんだよ俺。辛いのは、お前の方だよな。それに心配して貰ってるのに……ごめん。お前が謝る事じゃないよな」

「うぅん。気にしなくて良いよ。私が勝手に焦ってたのも事実だし」

「ごめん」

「うん。大丈夫」


今一番必要な事は、繭の対策を考える事もそうなんだけど、まず何より冷静になる事だ。

そうしないと、生産性も、意味もない、ただの馬鹿アイデアしか浮かばない。


お互い、こんな心境で、良いアイデアが浮かぶはずがない。


兎に角、冷静にさせなきゃ。



その為にも、一端この話を切ろう。


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