【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
殴り書き書店

流れ始める不穏な空気

公開日時: 2021年8月13日(金) 00:20
文字数:2,098

●前回のおさらい●

2人が結ばれた日から数か月。

突然、歩美からの呼び出しを受けて、深夜のファミレスへ。


そこで歩美の口から「赤ちゃんが出来た」と告げられ、驚く龍斗だったが。

龍斗は意を決して「産んで欲しい」と告げ、2人は幸せな日々を送る事に成る……筈だった。

 ……そんな昨晩の事を思い出しながら、有頂天のままニヤついてると、1通のメールを受信した。

何も考えず、浮かれた脳のまま携帯電話を開くと、そこには、繭ちゃんからのメ-ルが受信されていた。


『おいおい、早くも、昨日の話を聞きつけて、お祝メ-ルでもしてくれたのか?』

……などと、止む事の無い浮かれ頭は、物事を良い方にしか思考しないらしい。


そんな風に決め付けて携帯を開いてみると、思いも寄らない文面が書かれていた。


『今から、2人で逢えますか?    繭』


『??』


なんだか良く解らなかった。


確かに、5月の出来事以来、彼女との仕事上の付き合いは何度もある。

何人かの業界の偉いディレクターや、プロデューサーに、歩美の紹介がてら、彼女を売り込んだのも事実だ。


だからって訳じゃないだろうが。

此処最近では、歩美程と迄は言わないが、彼女も仕事が増えて忙しくなってる筈。

勿論、プライベ-トでも何度かは遊びにも行ったが、勿論、これは歩美を含む3人での事だ。


決して、2人で遊びに行った事など無い。

当然、そう言う肉体関係にもなる筈が無いし……勿論なるつもりも無い。


なのにも拘らず、この妙な文面。

兎に角、何かが引っ掛る。


どう考えてみても、この時期に、この文面はおかしいだろ。


まぁ思い過ごしなら良いんだが……


そんな風に不安になった俺は、繭ちゃんにメ-ルを返信する前に、歩美の携帯電話に掛けてはみたが。

これがまたおかしな事に、歩美が一向に電話に出る気配すらない。



「あれ?おかしいな。確かアイツ、今日はオフの筈なんだけどな。オフの日に、アイツが、俺からの電話に出ない筈ないんだけど……」


重なってくる不確定要素は、俺の神経を苛立たせていく。


とは言え。

別に繭ちゃんが俺に用事があるだけで、なんて事は無い筈なのに、今回だけは、やけに不安が過る。

このまま彼女に『何の用事か』を確認する為に電話をしようと思ったが、先に歩美の家に電話してみた。


―――どうも俺は、気になりだすと止まらないらしい。


プルルルルル……

プルルルルル……ガチャ!!



「はいはい。もしもし、井上ですけど~」


おばさんが思っていたよりも早く、たった2コールですぐに出てくれた。

この行為に、少しだけだが俺に安心感を齎してくれる。


これで誰も出なかったら、それこそ発狂ものだ。



「さっ、昨日は、どうも。龍斗ですけど……」


昨日の出来事が有るだけに、なんか気恥ずかしい。



「あぁ、龍斗君。昨日は、ありがとうね。これからも歩美の事しっかり、よろしくね。あの子、あれで居て、そそっかしいから……」

「ハハッ、大丈夫です。俺が、しっかり監視しておきますよ。それにおばちゃん、歩美の事は、勿論、大事にします」

「龍斗君も尻に敷かれ無い様にね」


―――笑えない。


もう既に敷かれてるんだから……



「ハハハ……(↓泣)ところで、今日、歩美、家に居ますか?」

「あっ、歩美?歩美なら、昨日、繭ちゃんから電話があって、嬉しそうに出掛けて行ったわよ」

「えっ?」


『!!』


……おかしい。

明らかに、これはおかしいぞ。

歩美が、繭ちゃんの所に行ってるなら、繭ちゃんからの、この『2人で逢おう』なんて文を打ってくるのは変だ。


どう考えてもおかしいし、そんな事有り得ないだろ。


第一、なんで歩美が居るのに2人なんだ?


つい、眉間に皺を寄せて考えてしまった。



「ちょっと龍斗君、どうしたの?どうかしたの?」

「あっ、すっ、すいません。なんでもないです。じゃあ、取り敢えず、繭ちゃんに電話してみます」

「そうね。多分、帰って来ないって事は、あの子の家に、まだお邪魔してると思うわよ」

「ほんとに、すいません。では改めて、今度は、父と寄せて頂きます」

「楽しみにしてるわね……フフッ、じゃあ」


そう言って、おばちゃんとの電話を切った。



―――しかしこれは、一体どう言う事だ?


さっぱり解らない。


2人が、俺を驚かせる為だけに、こんな手の込んだサプライズしているとも、イマイチ考えられない。


―――ナンダ?この言い様の無い気持ちの悪い違和感は?


考えてみても、一向に埒が開かないので。

取り敢えず、この話の中心人物になっている繭ちゃんに電話をしてみる。


トゥルルルル……

トゥルルルル……

トゥルルルル……

トゥルルルル……ガチャ!!



「もしもし、白石ですけど……龍斗君?」

「うん。俺だけど……繭ちゃん……」

「……帝王ホテル703号室で待ってるから来てね……絶対に来てね…………後悔しない為にも」

「へっ?はぁ?」


ガチャ!!


―――切られた。

一方的に話をするだけしたら、コッチの意向も聞かずに切りやがった。


なんだ?何が起きてるんだ一体?

全く解らない。


癇に障る彼女の態度を抑えて、もう1度電話を掛けてみるが、予想に反する事無く一切電話にはでない。

それどころか『お掛けになった電話番号は……』と言うアナウンスまで流れてくる始末。


着信拒否……意味が解らない。


こうなったら、兎に角、本人に逢って、確信を追求するしか無い様だ。


何かのイタズラなら良いんだが……何故だか、全然そんな気になれない。


これは、どうやら思考を巡らせている場合じゃないようだ。


―――これはもぉ、直接、繭ちゃんに逢って、問い質す必要が有りそうだ。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート