●前回のおさらい●
一悶着あった後、仲直りしながら、なにやら少し龍斗から話があるみたいですね。
「いやな。お前のオバサンって歳取んねぇだろ」
「いや、歳取るから!!」
こらこら、人の親をなんだと思ってるんですか?
お母さんは化物じゃないんだからね。
ちょっと人より、年をとる機能が劣化してるだけなんだからね。
「あぁ悪い。年を取り難いだろ」
「うん。まぁそうだね」
「だったら、前に言ったけど、お前にも、その可能性が有る訳だよな」
「まぁそりゃあ、確率的には有るだろうけど……そんなの年取んなきゃ解んないよ」
解んないよ、そんな事。
それに、なにその化物的な扱い。
まぁ化物だけどね。
「そこでだな。お前に、少し確認したいんだけど」
「うん、なに?」
「例えばだな。お前の中の、その遺伝子が発動したとしよう」
「うん」
「それで俺達は同い年にも拘らず、お前は若いまま、んで、俺は糞ジジイになる訳だ」
「まぁそうかな」
「そこで、お前に質問」
「なっ、なに?」
「自分が若いままでも、ジジイ愛せるか?」
プッ!!
なにそれ?
馬鹿じゃないの?
「なにを心配してるのかと思えば」
「いや、流石に、寂しい老後はキツイ」
「そんなの離婚よ離婚。私の綺麗な若い体を、ジジイになったアンタになんか触らせないわよ」
うそ、うそ。
ジジイとか関係ないから。
今、こんなに愛して貰ってるのに、馬鹿な事を聞かないで。
私は、ズッと龍斗が好きだよ。
但し!!浮気したら、即、別れるけどね。
「そっか……だよな」
思いの他、凹んじゃった。
だから嘘だって……
「冗談に……」
「ジジイになって触らせて貰えないんだったら、今の内に触り倒したる!!」
「えっ?ちょ、うっ、嘘!!」
龍斗は言うや否や、本当に襲い掛かってきた。
しかも、手つきがエロイ事、エロイ事。
私の折角、乾いた下着も、あっと言う間にビチャビチャ。
「イヤだぁ~~~!!もぅ!!」
そして私達は、朝までお互いを求め続けた。
その間、龍斗の真剣な話を聞いた私は、強くコンドームをする事を拒否。
心配してくれて自ら着けようとしても、首を横に振って見せた。
私は、真剣に龍斗の子供が欲しくなっていた。
でも、本当に、それで良かったのだろうか?
好き同士だからOKなんて、そんな馬鹿の話じゃなくて、世間体の話。
仮にも2人は、多少なりとも世間には名前の売れている人間。
そんな2人が、もし……子供が出来てしまったら、世間はなんて思うんだろ。
だらしない。
淫ら。
不潔。
ミットモナイ。
私は、そんな誹謗中傷を受けた所で、なんとも思わない。
言いたい奴には、言わせて置けば良い。
が……龍斗や、両親は違う。
龍斗は、私なんかとは格の違う世界で生きてる人間だ。
そんな彼の経歴に、私なんかが簡単に傷をつけて良い筈がない。
それに両親。
2人が言われのない誹謗中傷を浴びるのは間違っている。
こんなに大事に育てて貰ったのに、恩を仇で返す結果になってしまう。
やっぱり、好きだけでは、こんな事をしてはいけなかったのかも知れない。
私は反省を、何度も、何度も繰り返すばかりだった。
でも……それは、所詮、終わってしまった事。
もぅ取り返しようもない。
実際、龍斗も私の中に何度も、射精してくれた。
言い訳じゃなく、この行為を、本気だと信用するしかない。
彼も同じ想いだったって事を……
私は、少し気になって、龍斗に、こんな事を聞いてみた。
「私と、龍斗の子供……出来てると良いね」
そう言った私を、驚く様子もなく。
彼は、そっと抱き寄せてこう言ってくれた。
「今更、何言ってんだよ。もぅ、とっくの昔に婚約指輪渡しただろ……忘れたのか?」
あの時の指輪の話を、彼は本気だったようだ。
これを聞いて安心したのか。
こみ上げてくる涙をポロポロ流しながら、私も言い返した。
「憶えてるよ。……だからね。嫌じゃなかったら私を貰って……私は、アナタと一生一緒に付いて行きたいの」
「何を今更、アホか。嫌な奴にイチイチ指輪なんか渡すかつぅ~の。それにな、お前を貰う事なんか、俺が、この世に生まれた時から決まってる事だろ。……俺は、お前を幸せにする為だけに、存在してんだよ」
「龍斗……ありがと。もぅ死んでも良いよ。大好き」
「バカチン。死なれちゃ困るだろ。俺が生きて行く意味がなくなっちまう」
「クスッ、ば~かっ」
まだ、この後ほんの少しだけ、私の幸せは続いた。
***
これは、本当に、私の思い出なの?
いや、それ以前に、これはなに?
全てが、不思議な感覚だった。
見ているもの全てが、まるで今体感した様な感覚で、私の体の中を随時通過する。
今の思い出にしてもそう。
龍斗とHした時は、思い出と同じ様に体が感じ。
感動に涙した時は、同じ様に泣いた。
それでも矢張り、この記憶も私には無い。
私が、龍斗とHをしたのは、後にも先にも、彼の家でした、あの一回きりだ。
だから、本来の私と言う存在は、此処には存在しない。
それにもし、これが走馬灯だと言うのなら、もっと切れ切れに、それでいて瞬間的にして思い出す筈だ。
1つの記憶が、事細かに長過ぎる。
なら、此処はなに?
考え方次第では、心臓にナイフが突き刺さった私にも、まだ生きるチャンスが有るって言うの?
そんな都合の良い話があるの?
―――こっちの私は、なにも解らない。
ただこの世界も、私の世界と同じ様な結末を迎えるならば、少しは抵抗出来るかも。
せめて、こちらの龍斗と、私には幸せになって欲しい。
今は、それだけは望んでいる。
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