【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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なにやってるんだろう私?

公開日時: 2021年8月25日(水) 00:20
文字数:2,229

●前回のおさらい●

那美の話に決着をつける為に、学校をサボって、龍斗が昔行き付けにしていた怪しい喫茶店にやって来た歩美。

だがそこでは、龍斗が荒れていた時代の連れに囲まれ。

龍斗は、その昔の仲間達と盛り上がってしまう。


それを見ていた歩美は空気を読んで、その場を見守るが、それと同時に那美のプレゼントの件も話せずにいた。


それを見かねたこの店の店主である、オカマのミノルママに声を掛けられる。

「歩美ちゃん。コッチに座って待ってたら?もうああなったら、少しの間、話が続くと想うし……あっ、そうだ。喉渇いてない?飲み物位なら、ママが奢ってあげるわよ」

「あっ、はい。ありがとうございます」


正直、かなり喉は渇いていた。

店内のタバコや、お酒の臭いがそうさせているのだろう。


私は、椅子にチョコンと座ると、ママは『オレンジジュース』を出してくれた。



「あっ、すみません。本当に有難うございます」

「ふふっ、ほんと可愛い子ねぇ」

「そっ、そんな事無いです」


ミノルママ、そんな私を見ながらクスクス笑っている。


何か、私、変な事したのかな?



「それで、歩美ちゃんはタッチャンの彼女なの?」

「ぷっ!!……違っ、違います」

「あれ?そうなの?ママは、てっきりそうなのかと思った」

「私なんか……相手にされてませんよ。龍斗は人が良いだけなので、こうやって私に付き合ってくれてるだけだろうし。それにアイツ、ワザワザ私なんかを選ばなくてもモテますしね。それこそ、選り取り見取りなんじゃないですか」

「そうねぇ。そう言われれば、昔からタッチャンの周りって、男女問わず人が集まるわね」

「でしょ。……だから私は、アイツの言った通り『幼馴染』で良いんです」

「まぁ、タッチャンは良い男だからねぇ。私だって、体が女なら抱かれたいと思うわぁ」


ミノルママは、何所をどう見ても男だけど、心は女なのかもしれないなぁ。


だってさ、龍斗を見る目が。

完全に、乙女モードに入った女の子みたいな目をしてるんだもん。



「……」


その後も続けて、ミノルママと話をしようと思ったんだけど。

私には、その会話の糸口が見つからず、ただ沈黙と退屈な時間を、龍斗を見ながら過ごしていた。


だって……私、まだ中学生だし、大人の人に、何を話したら良いかなんて解んないんだもん。



「ねぇ、歩美ちゃん。ひょっとして退屈してるんじゃない?」

「いえっ、そんな事は無いですよ」

「ふふっ、歩美ちゃんって隠し事出来無いって、人からよく言われない?」

「何で、そんな事が解るんですか?」

「そりゃあ、こんな商売してればね。……それに歩美ちゃんは、直ぐに顔に出るみたいだしね」

「……すみません。正直言って、少し退屈してます」

「ふふっ、ほんと素直で可愛い子ね。……じゃあママが、少し歩美ちゃんに自信を持たせてあげようかしら」

「自信……ですか?」


退屈をしていた私は。

後先考えず、言われるがまま、ミノルママに付いて奥の部屋に入った。



 3月7日 AM10:38 喫茶ミノルちゃん


「まいった、まいった。やぁ~~~っと開放されたよ」

「ふふっ、みんな、タッチャンの事が好きだからねぇ」

「はぁ……まぁ有り難い事なんだけどね。モノには限度ってもんがあるでしょうに」

「まぁまぁ、そう言わずにね。みんな、久しぶりに逢って懐かしかったんでしょうし」

「ハハッ……でも、流石にさぁ、疲れるよ」

「文句言わないの」

「そうだね」


そう言って龍斗は、私が飲んでいた『オレンジジュース』に口をつけて飲んだ。


ちょ……ちょっと、それって『間接キス』なんじゃないの?


私は恥ずかしくなって、自分の唇を意味も無く確認した。



「ところでさぁ。歩美は何所行ったの?……ひょっとして怒って帰った?」

「呆れるわね。なに言ってんのよ。ず~っと、タッチャンの隣に居るじゃない」

「へっ?」


龍斗の視線が、こちらに向く。


そして私の姿を見た龍斗は、何故かボケッとしているだけで、反応がイマイチ無い。


―――やっぱり、こんな真似は止めとけば良かったかな?


私は先程、暇を持て余したのを良い事に、ママにメイクをして貰っていた。

服も、それに合わせてドレスに着替えさせられた。

今の私は、胸元がガッツリ開いた、水商売のおネェさんが着ている様なドレスを着ている。


それなのにも拘らず、龍斗は無反応な訳でしょ。


やっぱり止めれば良かったかな?



「……歩美?」


私はコクッと頷くだけで、それ以上の反応は出来ない。


だってさ、私だって女の子な訳でしょ。

一度位、テレビで見た様な綺麗なドレスを着てみたいじゃない。



「……変かな?……やっぱ変だよね」

「……」

「……なっ、なんか言ってよ。ほら、『何やってんだオマエ?』とか『オマエ正気かよ?そんなの全然似合わネェよ』とかでもいいからさ」

「……いや、まぁそのさぁ、なんて言うのかさぁ……オマエ……」

「……なっ、なに?」


私は溜めを作る龍斗に、何か期待してるんだろうか?


イヤ、間違いなく期待してる。


万が一にも、褒めてくれるんじゃないかな……なんて秘かに思ってたりする。



「おっ、思ってた以上に……」

「思ってた以上に?」

「胸……でかいな」

「へっ?むっ、胸?……胸。ってか、オマエは一回死ネェ~~~!!」


『べコン!!』


「グハッ!!」


なにを神妙な顔をして懸命に見てるのかと思えば。

そんなところばっかり集中して見てたのか、このエロガキだけは!!


でも、まぁ別に嫌な訳じゃないんだよ。


龍斗が、私の胸が好きなのが解っただけでも。

今回、こんな格好をしただけの価値はあったんだろうしね。


でもさぁ。

もうちょっと位、違う部分も褒めてくれても良いのに、よりにもよって、胸だけとは……馬鹿じゃないの!!



「もぅ良いよ。それより、さっさと話、片付けさせてよ」

「今の話って、お前が勝手にしたんだろうが」

「うるさい!!」

「ヒュウ~ヒュウ~、タッチャン、ダセェ~」

「うるさいよ。大きなお世話だ」


ゼンちゃんと言われる人からの、からかいに対して反論する龍斗を、強引に奥のボックス席に連れて行く。


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