●前回のおさらい●
龍斗が家の前まで迎えに来てくれたまでは良かったが。
その後、歩美ちゃんが忘れたお弁当を、お母さんが届けてくれた際。
龍斗の視線が、歩美のお母さんばかり見ていた事に不機嫌になる歩美ちゃん。
お年頃ですな(笑)
歩き始めて10分。
2人の状況は、決して好転する事は無く。
今の状況は、ただ並列して一緒に歩いてるだけ。
龍斗の頭の上には、未だに『?』マークが数個飛んだままで。
そんで、私の方はと言うと、大人気なくも、完全にソッポを向いて、アイツの方を見向きもしない。
「なぁ……お前がなに怒ってんのか知んねぇけど。取り敢えず、悪かったよ。ごめん」
沈黙に耐え切れないのか。
それとも気遣ってかは知らないけど、妥協した馬鹿エロが語り掛けてきた。
「知らない!!」
「だからさぁ、ちょっと待てって。お前さぁ、さっきから、なにに対して怒ってんだよ。全然意味解んねぇし、身に覚えも無いぞ」
「うるさいなぁ。話しかけないでくれない」
「だ~か~ら~。折角、久しぶりに、一緒に登校出来んのに、それじゃあ、ツマンナイだろ」
そのツマンナイにしたのは、誰よ?
アンタでしょ!!
馬鹿じゃないの?
「うるさいって言ってるでしょ。ってか、少しは黙ったら、どうなの?なんか喋らないと死ぬのアンタは?」
「あのなぁ、別に、そのデカイ弁当の事なんか、誰にも言わないって……気にすんなよ」
「アンタさぁ、さっき、なに聞いてたの?これ、お父さんのだって言ったでしょ」
「あっ、そうなのか?俺はテッキリおばさんが、お前に恥を欠かせない為に言ったんだと思ってた」
「馬ッ鹿ッじゃないの!!」
「じゃあよぉ、なんで怒ってんだよ?言わなきゃ解んないだろ」
言えますかっつぅ~の!!
何所の世界に、自分の母親に見蕩れたから、怒ってるなんて言う奴が居るのよ。
「自分で考えれば?アンタ、前に自分で『私の事なら何でも解る』って言ってたじゃん」
「あっ、うん、確かにそうは言ったけどよぉ……『!!』って、おいおい、まさかとは思うけど、さっきオバサン見てた事か?」
「!!」
え~~~、なんで解ったのよ?
私、なんにも言って無いよ。
「ははぁ~~~ん、なるほどな、そう言う事か。漸く解ったぞ」
「なっ、なっ、なに勝手に決め付けてるのよ」
「ごめん、ごめん、それは流石に気付かなかった。なんか嫌な思いさせたな」
「あっ……うん」
意味が解った上で、謝られたら仕方ないよね。
それに、この状態のままって言うのもなんだし、楽しく登校したいしね……
だからもぉ、ゆ~る~そっ。
「謝ったけど、ただ勘違いするなよ」
「何がよ?」
「俺は、別に、お前んトコのオバサンを、変な目で見てた訳じゃないんだぜ」
「じゃあ何よ?それ以外、何が有るって言うのよ」
「いやっ、実に、しょうもない話なんだけどな。オバサンって、幾つなのかなぁ~?って思ってただけ……幾ら見ても、オバサンの年齢が、全然解んなかったから、注意深くずっと見てたんだよ」
「お母さんの年齢?……えぇ~っと、確か、今年39歳だったと思うけど、変?」
「はぁぁあぁぁぁ~~ッ!!39だと!!」
ハハッ……だよね。
普通、お母さんの年齢聞いたら、そうなるよね。
娘の私から見ても、あの人の若さはオカシイもん。
ってか、大体アンタさぁ。
ウチにしょっちゅう遊びに来て、お母さんと何やらグチャグチャ喋ってる癖に、なんでそんな事も知らないのよ?
いつも、ヘラヘラなに話てんのよ?
それぐらい自分で聞け!!
「龍斗って、その手のプロの癖に解らなかったんだ?ププッ……ダサッ」
「解らん、解らん。あの若さはもぉ反則の域だぞ。多分、うちの親父が見ても、あの人の歳は解んねぇよ」
「そうかなぁ?」
なんて言ってるけど、私が一番謎に思ってるんだよね。
「……そりゃあさ、お前の歳を考えたら30歳越えてるの位は解ってたけど……しかし、まさか39とはな。流石にビックリした」
「でも、なんでまた、お母さんの歳なんか気になったのよ?」
「いやっ、前々から親子アイドルってのも面白いかなっとか、とか……思ってたんだよな」
「あぁ、それはダメ。絶対ダメ。お母さんは良いけど、お父さんが神経性胃炎で他界しちゃうからヤメテ」
そうなんだよね。
ウチのお父さんって。
普段、毅然とした態度でいるけど、実は、人一倍ヤキモチ焼きなのよ。
だから、アンタの言う、そんな事したら、多分、顔面蒼白になって死ぬ。
しかも、お母さんはお母さんで、関西人だから。
結構ノリノリで、変にそんな話したら、悪乗りして、平気でやっちゃうかも知れないのよ。
確実に、家庭崩壊するからヤメテ。
「そうなのか?でもよぉ、だとしたら、その割には親父さん、お前の事は、直ぐにOKし過ぎて無いか?」
「あの人は、基本、お母さん一途なのよ。それに昔から自分の娘を、矢鱈と人に見せたがる人だったから、簡単にOKしたんじゃない」
「あの毅然としたおじさんがねぇ。人は見掛けによらないもんだな」
「そうなのよ」
「にしてもよぉ。お前、おばさんの子供で、ほんと良かったな」
「んっ?また急に、なんでそんな事言うの?」
「だってよぉ。オバサンが39で、あんなに若いんだったら、お前もそうなるんじゃないかと思ってさぁ……なんか得した気分な訳」
「あぁそう言う事。まぁ可能性が無いとは言えないけど……なんでアンタが得するのよ?」
「アホか?自分の彼女が、いつまでも若かった嬉しいだろ」
「……なっ、何言ってんのよ!!」
いつの間にか、ウチのお父さんと、お母さんの話で盛り上がったのと。
龍斗が、ずうっと一緒に居てくれる様な事言ってくれたのが嬉しくて。
さっきまでの不機嫌さは、あっと言う間に、どこかに吹き飛んでしまった私。
根が単純と言うか、何と言うか。
でも、良いじゃん。
楽しく一緒に登校出来てるんだし……
なにより……ねぇ。
いやいや、私は言うまでも無く完璧に幸せ者ですよ。
***
そんな他愛も無い話をしながら、気分良く学校に到着。
クラスの違う龍斗とは、此処でしばしのお別れ。
名残惜しいよぉ~。
もっと一緒に居たいよぉ~
さみしぃよぉ~。
でも、その気持ちを、次の休み時間まで一杯に貯めて、次の休み時間になったら、速攻で遊びに行~こっ!!
逢えない時間が愛を育てるのさ!!
うんうん、ヤッパリ学生は、こうでなくちゃね。
『!!ってあれ?』
ひょっとして私、一番重要な事言い忘れてない?
明日の誕生日の話するの、スッカリ忘れてた!!
楽しさに任せて、当初の目的を忘れるなんて、なにやってんだろ。
よ~し、じゃあ、再度気合入れ直して、絶対次の休み時間こそは『私の誕生日』を龍斗に伝えに行くぞぉ~~~!!
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