『クライカコ・サイド歩美』
歩美ちゃん視点で、この悲劇は、どう見えていたのか?
……ドンッ!!
……ズキッ!!
突然……私の左胸に大きな衝撃と激痛が加えられた。
夢心地だった気分は一瞬にして消え去り。
耐え難い鈍痛だけが、絶えず胸の辺りから襲ってくる。
余りの痛みの大きさに、一瞬にして意識が遠のいて行くのが解る。
……なんだろうか、この痛みは?
急な出来事に私自身、私の身に何が起こったのかすら明白ではない。
でも、先程の衝撃からして、胸に何かが刺さっているのだけは解る。
……が、それ以外の現状把握が一切出来無い。
混濁する脳と、耐え難い激痛は、私の思考をドンドンと奪っていく。
……もぉよく解らない。
……もぅどうでも良いや。
そんな何かを諦めた様な私の意思とは別に。
何故か体だけは、他の誰かの意思によって機能させられている。
誰かが私の体を揺すっているのだろう。
―――でも一体、誰が?
「おい、歩美、歩美……」
必死に、切れそうな私を思考を揺さぶり起こそうとする意思は、どこかで聞き覚えのある声。
その声が、私の意識を呼び覚まし。
消えかけの蝋燭の様に、最後の命の灯火を揺らし始める。
こんなに私なんかの為に、必死になってくれるアナタは誰?
私は懸命に自分の意識を戻す為に、ゆっくりと重い瞼を明ける努力をしてみた。
まだ目が霞んで良く見えてはいないが。
体を揺すって必死成ってくれている彼は、恐らく、涙ぐんだままの必死な形相で、私の体を揺さぶっている。
―――誰?
何で私なんかの為に、そんな悲しい顔をしてるの?
未だに現状が理解出来無い私は、余力を絞って周りを見回してみようとしたが。
少しだけ意識がハッキリした分、胸の痛みは、今までの数倍以上の痛みとして襲ってくる。
だから自然に、自分の視線は、そこに行く。
『!!』
視線の先には思いも寄らない物が突き立っていた。
私の左胸には一本のナイフが突き刺さっており、そこから止めどなく血が噴出している。
―――あぁ、私、死んじゃうのかな?
なんでこんな事になってしまったのだろう?
私は何かを思い出す為に、意識をそちらに向け、過去に遡っていく
私の人生の最後の時間……脳裏に『走馬灯』が過ぎり、過去の映像が流れ始めた。
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