【完結】クライカコ(丁度、文庫本一冊位の文章量です♪)

お互いの意思が通じ合っていても、必ず上手く行くとは限らないのが【恋愛】
殴り書き書店
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プリティ・ウーマン

公開日時: 2021年9月23日(木) 00:20
文字数:3,370

●前回のおさらい●


歩美ちゃん、自分の母親について、なにやらおかしな事が気に成り始めたみたいですね(笑)

「お母さん」

「なに?」

「お母さんって、自分の年齢を言い当てられた事ある??」

「自分の年齢?どうかしらね?私の周りに、あんまり女性に年齢を聞く人なんて居なかったからね」

「そうなんだ。じゃあ1つ、お願いしても良い?」

「なに?良いわよ」

「私の夏の制服着て欲しいの」

「『!!』いっ、いやよ。絶対いやよ」


思っていた答えとは反して、ノリが良い筈のお母さんが異様に嫌がった。


なんでだろ?


絶対、似合うと思うんだけどなぁ。



「なんで?」

「なんでも、ヘッタクレもないわよ。アナタ、お母さんが幾つだと思ってるのよ」

「39歳」

「あのね、歩美……39歳のオバちゃんが、中学生の制服なんて着たら、只のおかしな人でしょ。だから、絶対にイヤよ!!」

「それは、普通のどこにでも居るおばちゃんの話でしょ」

「なに言ってるのよ。お母さんだって、普通のオバちゃんでしょ」


えぇっと……お母さんこそ、なに言ってるの?


家にある鏡を見た事ないの?


でもさ、こう反抗されると余計見たくなるんだよね。



「ねぇ~、お母さん、一回だけ。ねぇ~、お願いだってばぁ」

「だから、イヤだって」

「だからなんでよぉ?」

「恥ずかしいじゃない」

「じゃあ私にだけ……ねっ、ねっ、それなら良いでしょ」

「歩美にだけ……でも、イヤよ。って言うか、アンタ、なんでそんなにしてまで、そんなものが見たいのよ」


うん?

お母さん、ちょっとだけ譲歩する気になったのかな?


言葉の節々に、しても良いかなって言うのが感じられる。


なら、もぅ一押ししてみよ。



「だってぇ~」

「だって、なによ?」

「お母さんって、どう見たって十代に見えるんだもん。友達、みんなそう言ってるよ」

「私が十代に見える?……ふふっ、なに言ってるのよ、この子は。そんな訳無いでしょ。からかわないの」

「だ・か・ら・さっ、私が、それを確認してあげるって。確認だよ確認」

「うんもぅ、しょうがないわね。一回だけよ」

「お母さん大好き」


ヤッパリ最後は、お母さんに脈々と流れる関西人の血が騒いだみたい。


そんなノリの良いお母さんが、私は好きだ。


まぁ時と場合によるけどね。


っとまぁ、そんな訳で。

お母さんを連れて、私の部屋に行く事になったのね。


勿論、この時点で、一階に居る人達は無視。


私って、なんて快楽主義者なんだろ。


***


 ……辞めて置けば良かった。


真実から目を背け続ければ良かった。


でももぉ、私には、そこから目を背ける事なんか出来なかった。



―――お母さん、ヤバ過ぎ!!


似合うとか、似合わないなんてレベルの話じゃない。


これは既に反則の域だ。


普通、39歳のオバサンが、こんな物を着たら、どこかに違和感が生じる筈なんだけど。

そんなものは、何所をどう探しても見つからない。


大体、私は少しお母さんに意地悪をして、今度テレビ番組で使う制服を渡したんだよ。


それにも拘らず、これが又、完全にフィットしてやんの。


何所の世界に『ニーソックス』を違和感無しに履ける39歳がいるのよ。


どうやら母は、みんなが言う様に、歳を喰う機能が無いらしい。


お母さんは、エルフ族かって言うの!!



はぁ~、やっぱ辞めときゃ良かった。



「歩美……お母さん変?やっぱり変よね」

「全然」


私は、お地蔵さんみたいな白け切った顔で、そう答える。



「歩美、なんか冷たくない?アンタがやれって言ったんでしょ」

「そうだけどさぁ。まさか、そんなに似合うとは思ってなかったんだもん」

「そんなに似合ってる?……ふふっ、な訳無いでしょ。多分、それは、アンタの贔屓目よ贔屓目」


贔屓目?


じゃあ、そのまま下に降りれば。


自ずと答えは出ると思うよ。


オジ様方メロメロ。

繭ちゃん大不機嫌。

っと、母に意地悪な事を思う私。



「ハァ」

「なによ、その溜息。言っとくけど、お母さんだって恥ずかしいんだからね」


うん。


心配しなくても、誰も39歳のオバちゃんだなんて気付かないよ。


寧ろ、そのまま街に出たら、数十人にナンパされると思うよ。



「ハァ~~~」

「だから、なんで、さっきから溜息ばっかり付くのよ?お母さんだって、やりたくてやってる訳じゃないのよ。歩美が、どうしても一回やってって言うからやったのに……ほんとに恥ずかしいんだから」


まぁ、そうなんだけどさぁ。

私だって、無理にお母さんに、そんな格好をさせて悪いとは思ってるよ。


でも、お母さんについては、納得いかない事が多過ぎるんだよぉ。



「ハァ~、そんな格好させて、ごめんなさい」

「だから、なんで溜息なのよ?ほんとにもぅ」


仕草が可愛いなぁ、もぉ。


そう言った所を、全部遺伝で伝えて欲しかったよ。



『ピンポ~ン』

って、来客だ。


時間からして、今度こそ龍斗だろうな。


でも、多分、下にいる連中は、誰も出ないだろうな。


龍斗のおじさんと、佐伯さんは完全に酔ってるし。

ウチのお父さんは一滴でもお酒が入ったら動かない……いや、正確には動けない。


後、繭ちゃんがいるけど、他人の家の来客に出る様な子じゃないから、彼女も無理。


そんで、お母さんは、この状態だから無理……って、言うかヤメテ。


私はと言えば、お母さんに制服を着せるのに。

ついついエキサイトしちゃったもんだから、やや汗ばんでる。


そんな状態で、アイツに逢いたくない。


だってさぁ、汗臭いとか思われたら最悪じゃん。



って思ってたら、お母さんたら、何の躊躇も無しに、私の部屋にあるインターホンを取って会話を始める。



「は~い、どなた~?」

「御無沙汰してま~す、氷村です」


って、嘘!!


そんな恰好でどうするつもりよ、お母さん?



「あら、龍斗君、早かったわね。開いてるわよ。ど~ぞ」

「ちょ……お母さん!!」

「知らないわよ」


そう言ってお母さんは、部屋を出て階段を一気に下り始める。


まさか、その格好で出るつもり!!



冗談よね。


冗談だよね。



「えぇ~~~~!!お母さんってばゴメン、ごめんなさい!!」

「知らないわよ……きゃっ」

「お邪魔しま~す」


階段を下る途中で、躓いてお母さんは下に尻餅をついた。


っと同時に、龍斗の馬鹿が、玄関から入って来た。


うわ~~~っ、最悪。



「痛ッたぁ~。って、ご無沙汰ね、龍斗君。アンタ、また男前になったんじゃない?」


そんな母に気付かない龍斗は、頭の上で『?』マークが飛び交ってる。


そりゃ気付かないよね。



「えっ?えぇっと、どなたでしたっけ?歩美の親戚ッスか」

「なに言ってんのよ、龍斗君。オバちゃんよ、歩美のオバちゃん」

「はぁ?」


正に素っ頓狂な声を上げる。


って言うか。

それはさて置き。

お母さんってば、さっきの尻餅のままだから、下着丸見えじゃない!!


隠して、隠して!!



「お母さん、お母さん。下着見えてるって」

「うん?あらいやだ」


私が、その声を上げた瞬間に、龍斗の目は一瞬にしてお母さんの下着に目が行く。


信じられない!!

なんて高性能なエロ機能なの!!


でも、ホント信じられないのは、彼女のお母さんのパンツを嬉しそうに見る、アイツ。


人のお母さんのパンツなんか見るなっつぅ~の!!



「ゴメンね。お目を汚しで……」

「黒レース……人妻万歳……ぶしゅぅぅぅぅ~~~~」

「あら?」


鼻血を垂れ流しながら、龍斗は至福の顔をしたまま、その場に倒れこんだ。



「えっ?えっ?えぇぇえぇ~~~!!なになに?ちょ、ちょっと龍斗!!龍斗大丈夫?龍斗!!龍斗ってばぁ~!!」


揺すって見るが無反応。


白目を剥いて気絶してる。


人妻の下着は、中学生には、まだ刺激が強すぎたみたい。

雑誌とかじゃなく、生で見る機会なんか早々ないだろうしなぁ。


しかも、ウチのお母さんって言うのが最悪。

見た目があんなだし、それでいて年齢は39でしょ。


幾ら、龍斗が、普通の中学生じゃないとは言え、ギャップが有り過ぎて、頭が混乱するって。


でも、だからと言って納得いく程、私は大人じゃない。


……勿論、ムッとして顔面にチョップ。



「グパァ~!!」


―――もぅアンタは、何しに来たのよ!!


***


 ……あれ?


おかしい?


おかしいよ。


思い出が……思い出がなにか違う?


どうして?


私の思い出の中に、人前で龍斗が、こんな無様な姿を見せた記憶なんて無い。


これは一体、誰の記憶なの?


それに、少し前から気になってたんだけど……奈々って誰?那美って誰?


この2人は、どこの子?


私には、彼女達に逢った記憶なんて無い。

それに私は、陸上部に所属していた事など無い。


意識が混濁する中、何かの歯車が狂い始めた予感がした。



私と、もう1人の私の記憶が重なって行く。


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