明日の日向を探す

グッドエンドかハッピーエンドか?
退会したユーザー ?
退会したユーザー

第3話 宿題

公開日時: 2022年10月19日(水) 21:40
文字数:632

 細いタイヤがぐるぐる回る。

 いくつもいくつも少女の遠くで回る。

 遅れて太いタイヤが激しい回転でやってきた。

 少女は感情を抑え込んだ……――。






「ひゅうちゃん!」


 突然の声に目を覚ました。

 瞼を開けると天井、ではなくニッコリと笑う少年の逆さになった顔が映る。

 刈り上げた短めの髪に少し垂れ目。


「あ……ハジメくん……え」

「おはよう! 宿題みんなでやるって約束しただろ。ぜーんぜん来ないから見に来た」

「おはよう……」

「早く着替えて来いよ、俺の家だからな」


 ハジメは部屋から出ていく。

 ゆっくり体を起こして、着替えを始めた。

 必要な宿題や筆記用具を鞄につめて部屋から出る。

 玄関には猫背気味の祖父が座っている。

 唇を噛んだあと、ひゅうちゃんは呼吸を整えて玄関へ。

 スニーカーにつま先を通し、かかと紐を指先で摘まんでしっかり履く。


「行ってきます……」

「おう、行ってらっしゃい」


 ニコニコと祖父は見送る。

 扉を閉める時、祖父の隣に目をやると、1泊用のリュックが置かれていなかった。



 隣の似たような家、田舎町の夏。

 畑と劣化が始まっている無音の道路と木と山ばかり。

 セミの鳴き声が良く通る。

 ハジメの家に入れば、既にかなたとハジメがリビングで宿題を広げている。


「よし、やるか。分からないところは俺が教えるからな、ひゅうちゃん、かなたちゃん」

「おはようひゅうちゃん、今日は寝坊しちゃったね」

「……うん、ちょっと、変な夢見てた」

「変な夢?」

「……もう覚えてない」


 ひゅうちゃんは、手首とギュッと握り締めて抑え込んだ……――。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート