「ひゅうちゃん!」
肩を揺らされたひゅうちゃんはようやく顔を上げた。
一瞬にしてセミの鳴き声や外の暑さが体中に降り注ぐ。
心配そうに見つめるポニーテールの少女かなたと、短髪に少し垂れ目の少年ハジメ。
「ずっと何も言わないからびっくりしちゃった。気分悪い?」
2人分のホッとした表情の微笑はどこか不安げ。
ひゅうちゃんは喉を震わせた。
返事もしないで走り出した。
「ひゅうちゃん?!」
「ひゅうちゃん!!」
2人の声を振り払うように走る。
田舎町から稲刈り前の田んぼが広がる道へ。
遠くに別の町があり、そこまで繋がっている軽自動車が対向できる程度の道路。
空に向かって伸びた入道雲、鮮明な輪郭が浮かぶ山々、道路に連なる電柱全てを無視してただ走る。
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