セミが鳴る田舎町。
ガラクタ置き場の中をゆっくり歩き、家に帰る道を2人が歩く。
土で汚れた服と切れた唇、ひゅうちゃんは腫らした目を地面に向けた。
「ひゅうちゃん」
ハジメは優しく声をかける。
片手に500円玉がたくさん入ったポリエチレン袋を持っている。
「……怪我、平気?」
ひゅうちゃんは頷く。
「あの先輩、やたら絡んできて最悪だったな、でももうすぐ向こうが引っ越すから少しの辛抱だよ」
「……」
何も言わないひゅうちゃんに切り出す。
「平八さんが事故で亡くなってから、2人ともがらりと変わったね」
微かに遠く畑に水やりをしているポニーテールの少女かなたが見えた。
「かなたちゃんは無理して明るく振る舞ってるし、ひゅうちゃんはあの日から凄く大人しくなった。なんか、性格を交換したいみたい」
「…………っ」
「何か、あった?」
「わ、私……あの……」
汗が額から流れる。
喉を震わす。
「おーい、ひゅうちゃーん、ハジメくーん!」
水やり途中のかなたが大きく手を振っている。
「ごめん、言いたくないならいいよ。ただ、心配で……もし言えるようになったら教えて」
ハジメは先に駆け出していく。
ひゅうちゃんは立ち止まる。
指先で額に触れて横に拭う。
「ごめんね、ハジメ君……かなたちゃん…………平八さん、ごめんなさい」
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